追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

文字の大きさ
62 / 1,156

ラナキア洞窟-SECRET BOSS-4

しおりを挟む
「アレクシアさん、ジョゼフさん、一旦引いてください!」

 これ以上攻め続けても埒が明かないと判断し、ルカは指示を飛ばす。攻撃を中断し、下がるアレクシアとジョゼフ。

「お、お、おやおや…」

 ゲルトアルヴスは笑う。

「ま、ま、また引き下がるのですか…」

 ルカはゲルトアルヴスの言葉を無視し、アレクシアに視線を向けた。女剣士はその視線で、ルカが何を問おうとしているのかすぐに理解する。彼は、ゲルトアルヴスに攻撃を加えた感触を問いたかったのだ。

「…ゲルト殿の体は、私の攻撃で傷つくたびに強くなっている。おそらく、修伝剣技レベルの技はもう通用しないだろう」

「やっぱり…そうですか」

 傷つけば傷つく程強化される防御力。はっきり言って、手の付けようがなかった。

 ――撤退。

 その二文字がルカの脳裏を過る。絶対に勝てない相手ならば、引くよりほかはない。

 だが同時に、今ここで撤退しゲルトアルヴスを放置してしまえば取り返しのつかない事になるのではないかという思いもあった。

 圧倒的な再生能力と防御力を持ち、まるで楽しむかのように他者へと殺意を向ける人外。そんな彼を野放しにしてしまえばどうなる?

(下手をすると、町のひとつやふたつは壊滅しかねない…)

 それだけはなんとしても防がなけらばならなかった。

(考えろ。対処法を考えるんだ…。僕、アレクシアさん、ジョゼフさんの三人で攻撃を合わせて一度に大ダメージを与える?それとも、倒すのは諦めてなんとか拘束する方法を考えるべきか…考えろ、考えろ…)

 ルカは思考を巡らせる。そんな中、ふと

「■■■■――」

 と、ゲルトアルヴスが何事かを呟いた。何か意味のある言葉なのだろうが、ルカたちの使用しているものとは系統の異なっている言語のため内容は全く理解できない。

「なんだ…?」

 ジョゼフが訝し気な表情を浮かべる。対して、ルカはすぐにその言葉の意味する所に気がついた。

「これは…詠唱!気を付けてください!魔術が来ます!」

 ゲルトアルヴスが呟いたのは呪文の詠唱だ。おそらく、現代では途絶えてしまった古代魔術の詠唱。アレクシアとジョゼフが、詠唱を中断させようと一歩踏み出しかける。しかし、その時にはすでにゲルトアルヴスの詠唱は完了していた。

付与エンチャント黒炎ダークフレイム

 呟くようにそう言うと、次の瞬間…ゲルトアルヴスがその手に持つ剣が赤黒く燃え上がった。

「付与魔術…それも、幻想属性!?」

 ルカの顔が戦慄に染まる。おそらく、現代の魔術師で扱える者は数人しかいないであろう、幻想属性の付与魔術。

 ゲルトアルヴスの顔が黒炎に照らされる。その顔には、禍々しい笑顔が浮かんでいる。そして剣を振り上げ…、

「逃げてください!」

 ルカが叫ぶ。ゲルトアルヴスの剣がジョゼフに向かって振り下ろされた。だが、その時にはすでにジョゼフは数歩後ろへと退いている。しかし――ゲルトアルヴスの振り下ろした剣の炎が地に触れると、そこから炎の柱がそそり立ちジョゼフ目掛けて走っていった。

「ちいっ…!」

 逃げられない。そう悟ったジョゼフは槍を構えた。

「おるあああ!」

 一瞬のための後、渾身の力を込めて槍を振るう。修伝槍技、『旋風』。

 練気プネウマを込めた薙ぎ払いで、物理攻撃であろうと魔術であろうとかき消してしまう防御技だ。修伝以下の攻撃であれば、この技でほぼ防ぎきる事ができる。

 ジョゼフの扱える中で最大の防御技なだけあり、ゲルトアルヴスの黒炎もかき消す事ができた。

「よし…」

 ひとまずは窮地を脱し、安堵のため息を漏らしたジョゼフ。しかし、突如腕に刺すような痛みが走る。

…」

 そしてその痛みが走るのとほぼ同時に、ジョゼフの手に持つ槍の柄がボロボロと崩れ始めた。

「はあ…!?…なっ……ぐっ……うっ…ぐうううっ!」

 腕に走った鋭い痛みが、骨を焼き焦がすような苦痛に変化した。

「痛てえ!ぐあっ…ああ!なん…で…!」

 腕を抑えながら身悶えするジョゼフを見て、ゲルトアルヴスは顔を歪めて笑った。

「ふ、はは…さ、さすが幻想属性…」

 幻想属性。現実には存在しない、人の想像の中にのみ存在する架空の属性。それには、現実の物理法則を無視した『概念』が宿る。

 黒炎ダークフレイムの概念は『延焼』。例え炎を防ごうとも、一瞬でも触れたならばその対象を内側からじわじわと焼き、肉を焦がす。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...