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"狼"の質疑応答

不幸ヤンキー、”狼”を間違える。【4】

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文化祭も迫ってくるさなか、料理班である幸とフライも料理を作っていた。
「…うまいな。このサンドイッチ。…これは採用!」
「シフォンケーキも美味しい~!彼岸花君も久遠君も料理上手ね~!」
サンドイッチは幸が。シフォンケーキはフライが試作品として作ったのだがなかなか好評である。注目をされるようで案外日陰者となっている2人ではあるがフライはちゃんと礼をいうことが出来た。しかし幸は恥ずかしかったようで終始無言を貫こうとしたのでフライは現在、理由を付けて幸と一緒に出て”クラスのみんなと仲良し大作戦!”という名の作戦会議を行っている。
「ダメだよさっちゃん!!!これを機にクラスメートと仲良くなってハッピーな学園生活を送りたいでしょ?」
「まぁ…それはそうだけどさ…。」
口ごもってしまう幸にフライは熱く語る。
「ジュジュちゃんは可愛すぎたからハードル高かったかもしれないけどさ!もしかしたらクラスの中にさっちゃんの運命の相手が」
「…お前は本当に哉太さんが嫌いなんだな。」
溜息を吐いてコーヒー牛乳のパックを飲む幸にフライは自信ありげに言い放った。
「当たり前じゃん?…僕はさっちゃんの幸せを願ってるからね。仮にあいつに凄く似ていて性格が違うなら考えるけど?…でもやっぱり嫌だな~。やっぱりさっちゃんの彼女だったら…」
廊下側の踊り場でフライが熱弁をしていれば、幸は目立つ2人が職員室から出てきたのを見かける。1人は大柄で黒髪のそばかすの男性。もう1人はスーツを着て眼鏡を掛けた男性。2人とも心当たりがあったので声を掛けようとするが幸はどこか違和感を感じた。しかし声を掛けてみることにしたのだ。
「あの!…撫子さんに、哉太?さん…?」
男性2人が振り返れば幸を目にした撫子はにっこりと笑って大げさに背中を叩く。勢いのある叩き方に幸が軽く悲鳴を上げていた。
「おお!!彼岸花じゃねぇか!!やっぱ哉太がここにさせた理由が分かって良かったよ!…なぁ?」
「そうですね~!良かったです。」
にっこりと朗らかに微笑む哉太に幸は違和感を感じる。そんなことを思っていれば哉太は幸に近寄って微笑んだ。
「…撫子さんから聞いてるよ。ありがとね。皐月…いや、哉太の相手してくれて。お世話になってます。」
不思議な言葉を言う哉太に幸は首を傾げて見せる。その仕草に哉太は微笑んでいたのでさらに幸は首を傾げた。
「???あんたが哉太さんじゃ?」
「ふふっ。気付いてると思ったから言ったんだけど?…バイバイ。彼岸花君。」
哉太が笑って優雅に手を振り撫子と共に去ってしまった。そういえば左目に泣きぼくろがあったような気もしたし瞳が鮮やかな橙色…オレンジのような艶やかな瞳だったような気がした。いつもの赤く濡れた瞳では無かったのだ。
(じゃあ…あの哉太さんは、何者?)
考えるようにコーヒー牛乳をの飲もうとすれば誰かに取られてしまう。誰だと思って後ろを振り返れば黒のカーディガンにレザーパンツに腹出しトップスを着こなし、さらにはサングラスを掛けた男…哉太が幸のコーヒー牛乳を飲んでいた。驚いている幸に構わず哉太はジュースを飲んでから一言。
「うまいね~。幸との間接チューしたジュースは。」
すると幸は蔑むような目をした。
「あんた、それはキモイ。」
「僕も思う。それはキモイ。」
いつの間にか居たフライと一緒に言ってみせれば哉太は驚いた顔をする。
「えっ!?なんで?すっごい良くない?可愛くない?」
「どこがだよ。つーか、さっちゃんと離れろ。この変態狼男。」
「…お前こそ花ちゃんの近くにくんな。白髪もやしチビ。」
2人が以外あえば幸が止めようとした時に救世主が現れたのである。
「あれ?幸君にフライ君と…お客様?どうかしたの?」
「…ジュジュちゃん!」
全体の指揮を執っているジュジュが2人に声を掛けてくれたのだ。心底助かったので幸がジュジュの名前を口に出せばフライといがみ合っている哉太が彼女をじっと見つめる。見つめられているジュジュは首を傾げてはいるものの、お客様かもしれない哉太を案内しようとすれば彼はとある言葉を彼女へ向けて問い掛ける。
「君がジュジュちゃんだね。花ちゃん…いや、幸から聞いてるよ。…今、思ったんだけどさ~。ジュジュちゃんのスカートの丈長いよね~?脚とか見せたくないの?」
「おい!あんた何言って?」
幸が止めようとするがジュジュは構わずにこのように答える。
「そうですね。あんまり見せたくはないので基本はスカートを長めにして、タイツを履くか長い靴下…ニーハイくらいの奴を履いてます。私、自分の脚を極力見せたくないので。」
微笑んで言い放つジュジュに哉太は驚いた顔を見せれば今度はとんでもない発言をするのだ。
「それは興味深いな~。……じゃあさ。脚見せてくれない?」
「…はい?」
「だから~。ジュジュちゃんの綺麗な脚を見せて?」
悪気のないにっこりと笑って言い放つ哉太に幸は哉太の股間を強打させ痛みで崩れる哉太の頭をフライが殴りつけてボコボコにする。冷や汗を垂らしているジュジュの前で2人は哉太をコテンパンにする。
「セクハラ発言すんな!このバカ狼!!!」
「さっちゃんの言う通りだ!ジュジュさんに何させようとしてんだ変態筋肉野郎!!!」
ジュジュを守る為ではあるがさすがに過激になってきたのでジュジュが止めようとすればケラケラと笑う声が聞こえてきた。皆が振り向けばそこにはスーツ姿に眼鏡を掛けた男…哉太のような人物が笑いながら近づき、ボコボコにされている哉太に向けて手を差し出したのだ。
「前よりもにぎやかになって良かったね?…哉太。」
男が哉太でないことが分かった瞬間であった。
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