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”狼”の存在意義
【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”に呪い返す。
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-『早急に来て欲しい。』-
今日は非番でゆっくりとコーヒーを嗜んでいた最中に来たメールに麗永は宛先に溜息を吐く。そんな兄の様子にこれからバイトへ行こうとしている妹…うららが首を傾げた。
「??お兄ちゃん、どうしたの?溜息なんか吐いて。…今日は休みもらえたから溜まった小説でも読もうって張り切っていたのに?」
朝食のサラダを食べながら妹に心配された兄は今度は深い溜息を吐いてしまう。
「…あの人に休みのことを言わなければ良かったですね…。」
「…はい?」
不思議がるうららに麗永は残りのコーヒーを一気に飲んでから立ち上がり疲れた顔をしてうららに向けて言った。
「うららさん。今は周囲の人たちに助けられて送っている日々だと思いますが…なにがあっても、人を簡単に利用する人間とは付き合ってはいけませんよ。」
「…?えっと…。どうしていきなりそんなこと…を?」
再び不思議そうな表情を見せるうららに彼は頭を抱える。
「まったく…。うららさんは天然すぎます。…あなたの雇い主にでも聞いてみて下さい。彼なら状況でも説明しておけば…柊君に聞いてもらえば答えは分かると思いますから。」
「えっと…。はい…?つばめ君に聞いてみるよ?」
サラダを食べ終えてトーストを口にするうららに麗永は着替えるために妹と離れてから彼女に課題を出した。
「それでは私はこれから用事を済ませるので、うららさんは夏休みの宿題とともに期末テストでの反省点をまとめたレポートを進めるように。」
「え~!!!期末終わったのに~???なんで」
「あと3日後に出来なかったら小遣いは30%カットです。」
「やります。やらせてください。」
妹の反応に満足をした鬼…いや兄の麗永はにっこりと微笑んだ。
無駄に広いエントランスを通り抜けて指紋と認証キーをしてから廊下へと向かいエレベーターを押してとある一室へと麗永は向かう。一応のインターホンを鳴らせば出てきたのはがっしりとした体格でなおかつ身長も190cmはあるそばかすの男に迎えられた。
「おお~!やっと来てくれたか~!ま~た、休みなのに小説やらドラマやら見てたんだろ~?…よかったな!無駄な時間にならなくて!」
「…僕にとっては無駄ではありませんし、あと普段から体力を使う仕事なので息抜きするのによろしいかと?」
「まあまあ!先輩の頼みを聞いてくれよ~!いいじゃねぇか!…お前の親友が今、大変なんだぞ?」
男が麗永を中へと連れ出せばヤニ臭さと異様な匂いが充満していたので麗永は急いで窓を開けようとして…なにかを踏んだ。
…それは吐瀉物に塗れたカップ麺であった。さすがの麗永も軽い悲鳴を上げのんきに口笛を吹いている男に文句を言い放った。
「!!!なんですか?この酷い有り様は!!??煙草臭いし嘔吐をしている形跡もありますし!…この歳になって酒の飲み方も分からないんですか!?…撫子さん!」
さすがにゲロを踏んで怒りだす麗永に撫子と呼ばれた男は軽快に笑っていた。
「まあまあ!たまには良いじゃんかよ~?…そんなことより!あいつが今、大変なことになってっから!っさ!ほらほら、来いよ~!」
踏み場の無い道をなんとか通ってカーテンと窓を開けて麗永は部屋の換気をすれば、窓から差し込む日の光を浴びて見えるのはごみ溜めの中でソファにうずくまっている哉太であった。なにがあったのかは分からないが哉太は相当落ち込んでいるようだ。そんな彼に撫子は今のこの荒れ果てた状況を説明する。
「いつもだったらハウスキーパーのおばちゃんが来るから綺麗なんだけどよ~?…こいつあんま人間好きじゃねぇじゃん?だから断って開かずの間にさせたんだよ~!まっ!俺は無理やり入って酒とかつまみ買ってドンちゃん騒ぎしたら…こうなった!」
悪気さえもない清々しい撫子に嫌な視線を送りつつ麗永は靴下を脱いでその辺に落ちているビニール袋に靴下を入れてから溜息を吐く。そんな彼に撫子は追い打ちをかける。
「あと小説の出来も悪くてなぁ~!好きな人を殺して犯して食って…みたいな?暗すぎたから説教してやったよ~!いや~…。ハッピーエンドがバットエンドになるとはなぁ~?それもそれで面白れぇかなとか思ったりしたけど!」
嬉々として話し出す哉太の編集者かつ学部は違えど2人の大学の先輩かつOBに麗永は怒りを覚えるが…その前にやりたいことは1つ。
「…その前に、このバカ狼の部屋の掃除をしてから説教といきましょうか。…場磁石君。覚悟は良いですね?」
「……コトバガ、ワカリマセン。」
「ふざける余裕があるのならしても良いですね。さっ。早くこの汚部屋を綺麗にしてさっさと帰りましょう。…撫子さん?こういう時だけ抜け駆けしないで下さいね?…手伝って頂きますので。」
そそくさと帰ろうとする撫子の背中に拳を入れて動けなくさせてから2人はうずくまっている哉太を置いて掃除を始めるのであった。
朝から連絡を受けて今はもう夕方過ぎになった。なんとかゴミ屋敷を掃除にして綺麗にさせた麗永はすぐさまコンビニへ向かって靴下と遅めの昼食を買いに行って哉太の家へと帰還する。…しかしドアを開けてみれば換気扇の前で煙草を吸っている撫子と同じく吸っているがどことなくしょげている哉太が居座っていた。再び際立つ煙草臭さに麗永は買い物ついでに買った消臭スプレーを2人に向ける。
「こっちに来ないで下さいよ。ヤニ臭さが移るのは嫌なので。…で?なんで場磁石君がしょげていて撫子さんは笑ってるんです?場磁石君が事情聴取で容疑者だった雷 萌果に接触はしていたのは分かっています。ですが逆に彼女から恨みを買われていた…という風に聞いていますが。でもあなたがそんな小さなことでしょげるとは思いませんがね?」
「いやwww。それがなぁ~?あるんだよなぁ~?…男としてのことでな~?尊厳がなぁ~?」
「…男として?」
麗永が疑問を抱けば今度は哉太が泣きそうな顔をして言い放った。
「…タタナクなった。」
「…はい?たたない?なにが?」
すると哉太は叫んだのである。
「俺の大事な!!!大事な息子が!!!ち○こが勃たなくなったの!!!エロいの見ても勃起しないの!!!なんで?どうして???」
「…は?」
泣き出しそうな表情を見せる哉太に訳が分からないと言った様子の麗永を交互に見て撫子は腹を抱えて笑っていた。
そんな撫子のことなど気にせずに哉太は語りだす。
「あの女とセ○クスしようという流れになってね?んで決戦になってもさ!俺の息子が…!ち○こが勃たなかったんだよ?全然こーふんしないんだよ!!?…挙句の果てには『私のことどうでも良くなったの?…サイテー。』って侮辱されてしまいには殺されかけたんだよ?もう…本当になんなの?マジで。」
「は…はあ?」
麗永にとっては心底どうでもいい情報に彼はこのまま帰ってしまいたいという衝動に駆られるのだが哉太がとんでもないことを言い放った。
「もう!それもこれも花ちゃんのせいだよ~!普段はあ~んなエロくないのにセ○クスの時はエッチだけどやっぱり純粋無垢なところとかさ!!!そこが天然というか?もうギャップ萌えっていうか?イカつい顔してヤンキーみたいでさ?…綺麗な赤髪で色黒で…いかにもヤンキーって子がさ~?もう可愛いっていうか?なんていうか」
「ちょっと待ってください。その花ちゃんって子は赤髪で色黒で…ヤンキーみたいに人相が悪い…?」
「うん?そうだよ?だって麗永も会って……あっ。」
ことは既に遅し。”不幸の花人”から”花ちゃん”と伏せていた名前ではあったが特徴を言ってしまったおかげで刑事である麗永にバレてしまったらしい。明らかに青ざめて冷や汗を垂らしている哉太と冷酷かつ蔑むような視線を送る麗永の明らかな様子に撫子は不覚にも笑わずにはいられない。…そう、彼は人の不幸が一番の好物なのだから。
そんな彼など気にもせず麗永は消臭スプレーを換気扇へと振り撒きながらニヤついている撫子を退けて冷たく笑うのだ。
「…まずは身を清めるために氷入りの冷水にでも浴びましょうか?それから誠意を見せるために彼岸花君にこれから近づかないように…いや近づいても大丈夫なようにあなたの大事な局部を切り落として」
「それだけはやめて!!!!いや!俺が悪かったから!!反省してるけど…でも…その。」
「何が言いたいんです?一回りも歳が違っているなんて犯罪ですよ?…しかも彼は高校生。あなたは彼の純粋な青春を奪った責任はあるんです?…なにか文句でも?」
氷点下0度の視線を向ける麗永に何も言えない哉太ではあるが遂に笑いが堪えきれなくなった愚か者…もとい、撫子が2人の仲裁に入る。
「まあまあ!麗永もそんな怒んなって!さすがにち○こ切るのはやめようぜ?…それだったら溜まっている原稿を片してもらって死ぬほど働いて違約金として払えばいいんじゃね?あっ!被害者金か~?」
「それも良いですね…。局部を切られるよりは負担はとてつもなく軽いですしね。…じゃあその方向性でいきましょうか。お恥ずかしいですが僕の給料が上がってくれることを願いますよ。」
一見、にこやかに笑っている麗永と撫子のSコンビが勝手に話を進める中で哉太は泣き寝入りをして叫ぶのだ。
「なんだよ~?結局カネじゃんか?…だから本当の職業が言いたくなかったの!あの女のことも言いたくなかったの!!!…そういう目当てで付き合うのが嫌だったから…。もういい!!!2人なんかどっか行けよ!このドSバカコンビ!!!」
「「そういう目当て???」」
2人が言葉を重ねてみれば哉太は言葉を詰まらせるが吐き出すことにした。
「…そりゃあ出会いは本当にアクシデントだったし手も引こうとしたよ?でも、花ちゃんは、俺という…田中 皐月ではなくて”場磁石 哉太”として見てくれた…気がしたんだよ。花ちゃんがおバカなところがあるからっていうのも要因の1つだけど…。…嬉しかったんだ。外見とか地位とかではなくて俺っていう、”場磁石 哉太”として見てくれで判断せずに付き合ってくれたことが…さ。…でも、俺も意地になって結局、花ちゃんには嫌われちゃったけどね?…あはは。」
悲しげに笑う哉太に刑事から彼の親友へと変化させた麗永はどことなく悲しさを感じてしまう。すると撫子は少し笑ってからとある言葉を呟いたのだ。
「…呪いだな。それ。」
「のろ…い?呪いって?なんで?」
すると撫子は再び口元に弧を描いて言葉を添える。
「その花ちゃんって子がお前に呪いをかけたのかもな~?宙ぶらりんなお前が一生お前を、”場磁石 哉太”を忘れさせないようにっていう。…どんな奴かは知らねぇけど面白い奴だな~。…その花ちゃんって子は。」
撫子の言葉に哉太は幸を思い返す。
「…面白いし可愛いよ。…告白まがいのこともしたけど、それでも…好きなのかは分からない。」
すると撫子に便乗して麗永も溜息を吐いてから言葉に出した。
「愛情と憎悪は紙一重って言いますし。…”人を呪わば穴二つ”とも言うじゃありませんか。あの彼が呪うなんてしそうもないですから、あなたから何かを吹っ掛けて、結局、傷心しているのでしょう?」
「それは…まあ。認めたくはないけど合ってる…よ。うん。」
哉太の両目に宿る紅の瞳に色味が無くなっていく。反省しているのだと分かった麗永は煙草を吸い終えた撫子が哉太の書斎に入るのを傍目に見てから言い放つ。
「今は溜まっている仕事にも目を向けなければなりません。…でも、あなたは自分だけではなく、…彼岸花君の立場になって考えてもみてください。誠意をもって対応すれば、あなたの気持ちに宿っている心の騒めきも、あなたが今、支配されている呪いという名の感情の正体が分かると思いますから。…ね?」
麗永の励ましに哉太は少し驚いてから何かを考え込んだ。
「麗永…。分かったよ。…考えてみる。」
優しく微笑む親友の姿に哉太の瞳が輝きを取り戻しそうにつつある。飄々としているが意外と単純な思考の哉太に麗永は微笑んでから口に出した。
「まあ最悪、刑事事件にでも発展しそうなので細かくは聞きませんが…。歳の差も長く見てみれば良いかもしれませんしね。」
「そうだよね!やっぱりまた俺、花ちゃんに」
「今は行かない方が良いですよ?ちょうど今日、彼岸花君と会った時に彼を見ましたが…まあ手が付けられなかったので。…本当に訴えられるかもしれませんね~?」
「…もう少し経ったらで良いかな~?あはは…。」
頭を掻いて気分を紛らわすようになぜかストレッチをする哉太に麗永は先ほどとは打って変わり普段通りの対応をすることにした。
「君は本当にずる賢いですね。じゃあ僕は明日は仕事なので帰らせて頂きます。…撫子さんもさっさと帰りますよ!締め切りもありますが、このバカ狼は反省していると思われますから。…反省しなかったら逮捕状を持って」
「分かった!!!めちゃくちゃ反省してるから!!!…撫子~!ちゃ~んと締め切り守るから、お願いだから原稿を増やさないでね!!!?」
哉太の直感は当たっていたようで撫子は哉太の書斎から顔を出してにっこりと笑っていた。
「いや~!ハッピーエンドも良かったけど今書いてるクソバットエンドも良いかなとか思って」
「書かないからね。」
「あ…そう。…なんだよ。ケチ。」
ふて腐れる撫子に哉太と麗永は呆れていた。
『哉太さんの…匂い。。。はぁん。んぅぅっ。』
『サチだけずるい…。俺にも。ムマにも嗅がせて…?』
-あれ?これは…夢か?…花ちゃんが2人いる。普段の長髪の花ちゃんと…髪が短めな花ちゃんだ。
『ムマぁ?てめぇ、哉太さんのカーディガンこっちに寄越せぇ…よ。』
『サチだって持ってるじゃん。俺、ぜんぜん嗅げてないから…ち○ち○勃たないぃ。』
『俺の顔で言うなぁ…?ばか。』
-えっ?!ちょっと待って??!…多分、短い髪の方が夢魔サチだよね?…2人して俺のカーディガンで自慰、オ○ニーしてんの?…やばい。引くどころか、おかずにされて嬉しいんだけど。
おお~!夢魔サチが結構積極的じゃん?花ちゃんの上に乗っかって。そんで二人で…これはなかなか濃厚なキスだな~?
-クチュゥ…。プチュゥ…。クチュリ。
『ムマぁ。。。てめぇ…舌、絡め…すぎ。哉太さんの…服、汚しちゃう…からぁ。』
『んんぅ。だってぇ…哉太さんでオ○ニーしてるサチが可愛いんだもん…。…俺、サチに挿入れたい。』
-……え?今…なんて?
『サチでどーてー卒業したい。ダメ?』
-そんな顔しないでよ!!!?もう2人とも顔がトロトロじゃん!!!でも花ちゃん!!悪いけど夢魔サチを断って…いや?どっちにしろ2人とも花ちゃんなんだから…良いのか?…というか、見てみたいという俺の衝動が…!!!
『それは…その…俺は哉太さんと』
「哉太さんと!!?なに??ってあれ??夢?」
自室にて原稿を書き上げていた哉太が起きてみれば窓辺から朝日が覗いていた。麗永と撫子が帰った後に必死になって原稿を書き上げていた哉太ではあったが…嬉しいことが1つ。…なんと夢ではあったが幸と夢魔サチによって哉太の息子が元気になっていたのである。普通であれば恥ずかしいことではあるが、この時の哉太は嬉しさのあまり飛び上がっていた。
「!!!やった!!勃起不全!!EDが治ってる!!!花ちゃんと夢魔サチのおかげだ~!!!ありがとう~!!!」
すぐさま賢者タイムをしてからひと息吐けばスマホから連絡が来ていた。あて名は麗永からでこのような内容の文面であった。
『もしかしたら状況次第であなたの想い人に良いところを見せられるかもしれません。…作戦に乗りますか?』
哉太はすぐさま返事をした。…もう自身の中で答えは決まっていたのだから。
「…花ちゃんと仲直りして…告白する。好きだって。…だったら危険な作戦だろうが乗ってやんよ?」
やる気に満ち溢れている哉太は原稿をものすごい勢いで片付けて作戦の決行まで待機することにした。
今日は非番でゆっくりとコーヒーを嗜んでいた最中に来たメールに麗永は宛先に溜息を吐く。そんな兄の様子にこれからバイトへ行こうとしている妹…うららが首を傾げた。
「??お兄ちゃん、どうしたの?溜息なんか吐いて。…今日は休みもらえたから溜まった小説でも読もうって張り切っていたのに?」
朝食のサラダを食べながら妹に心配された兄は今度は深い溜息を吐いてしまう。
「…あの人に休みのことを言わなければ良かったですね…。」
「…はい?」
不思議がるうららに麗永は残りのコーヒーを一気に飲んでから立ち上がり疲れた顔をしてうららに向けて言った。
「うららさん。今は周囲の人たちに助けられて送っている日々だと思いますが…なにがあっても、人を簡単に利用する人間とは付き合ってはいけませんよ。」
「…?えっと…。どうしていきなりそんなこと…を?」
再び不思議そうな表情を見せるうららに彼は頭を抱える。
「まったく…。うららさんは天然すぎます。…あなたの雇い主にでも聞いてみて下さい。彼なら状況でも説明しておけば…柊君に聞いてもらえば答えは分かると思いますから。」
「えっと…。はい…?つばめ君に聞いてみるよ?」
サラダを食べ終えてトーストを口にするうららに麗永は着替えるために妹と離れてから彼女に課題を出した。
「それでは私はこれから用事を済ませるので、うららさんは夏休みの宿題とともに期末テストでの反省点をまとめたレポートを進めるように。」
「え~!!!期末終わったのに~???なんで」
「あと3日後に出来なかったら小遣いは30%カットです。」
「やります。やらせてください。」
妹の反応に満足をした鬼…いや兄の麗永はにっこりと微笑んだ。
無駄に広いエントランスを通り抜けて指紋と認証キーをしてから廊下へと向かいエレベーターを押してとある一室へと麗永は向かう。一応のインターホンを鳴らせば出てきたのはがっしりとした体格でなおかつ身長も190cmはあるそばかすの男に迎えられた。
「おお~!やっと来てくれたか~!ま~た、休みなのに小説やらドラマやら見てたんだろ~?…よかったな!無駄な時間にならなくて!」
「…僕にとっては無駄ではありませんし、あと普段から体力を使う仕事なので息抜きするのによろしいかと?」
「まあまあ!先輩の頼みを聞いてくれよ~!いいじゃねぇか!…お前の親友が今、大変なんだぞ?」
男が麗永を中へと連れ出せばヤニ臭さと異様な匂いが充満していたので麗永は急いで窓を開けようとして…なにかを踏んだ。
…それは吐瀉物に塗れたカップ麺であった。さすがの麗永も軽い悲鳴を上げのんきに口笛を吹いている男に文句を言い放った。
「!!!なんですか?この酷い有り様は!!??煙草臭いし嘔吐をしている形跡もありますし!…この歳になって酒の飲み方も分からないんですか!?…撫子さん!」
さすがにゲロを踏んで怒りだす麗永に撫子と呼ばれた男は軽快に笑っていた。
「まあまあ!たまには良いじゃんかよ~?…そんなことより!あいつが今、大変なことになってっから!っさ!ほらほら、来いよ~!」
踏み場の無い道をなんとか通ってカーテンと窓を開けて麗永は部屋の換気をすれば、窓から差し込む日の光を浴びて見えるのはごみ溜めの中でソファにうずくまっている哉太であった。なにがあったのかは分からないが哉太は相当落ち込んでいるようだ。そんな彼に撫子は今のこの荒れ果てた状況を説明する。
「いつもだったらハウスキーパーのおばちゃんが来るから綺麗なんだけどよ~?…こいつあんま人間好きじゃねぇじゃん?だから断って開かずの間にさせたんだよ~!まっ!俺は無理やり入って酒とかつまみ買ってドンちゃん騒ぎしたら…こうなった!」
悪気さえもない清々しい撫子に嫌な視線を送りつつ麗永は靴下を脱いでその辺に落ちているビニール袋に靴下を入れてから溜息を吐く。そんな彼に撫子は追い打ちをかける。
「あと小説の出来も悪くてなぁ~!好きな人を殺して犯して食って…みたいな?暗すぎたから説教してやったよ~!いや~…。ハッピーエンドがバットエンドになるとはなぁ~?それもそれで面白れぇかなとか思ったりしたけど!」
嬉々として話し出す哉太の編集者かつ学部は違えど2人の大学の先輩かつOBに麗永は怒りを覚えるが…その前にやりたいことは1つ。
「…その前に、このバカ狼の部屋の掃除をしてから説教といきましょうか。…場磁石君。覚悟は良いですね?」
「……コトバガ、ワカリマセン。」
「ふざける余裕があるのならしても良いですね。さっ。早くこの汚部屋を綺麗にしてさっさと帰りましょう。…撫子さん?こういう時だけ抜け駆けしないで下さいね?…手伝って頂きますので。」
そそくさと帰ろうとする撫子の背中に拳を入れて動けなくさせてから2人はうずくまっている哉太を置いて掃除を始めるのであった。
朝から連絡を受けて今はもう夕方過ぎになった。なんとかゴミ屋敷を掃除にして綺麗にさせた麗永はすぐさまコンビニへ向かって靴下と遅めの昼食を買いに行って哉太の家へと帰還する。…しかしドアを開けてみれば換気扇の前で煙草を吸っている撫子と同じく吸っているがどことなくしょげている哉太が居座っていた。再び際立つ煙草臭さに麗永は買い物ついでに買った消臭スプレーを2人に向ける。
「こっちに来ないで下さいよ。ヤニ臭さが移るのは嫌なので。…で?なんで場磁石君がしょげていて撫子さんは笑ってるんです?場磁石君が事情聴取で容疑者だった雷 萌果に接触はしていたのは分かっています。ですが逆に彼女から恨みを買われていた…という風に聞いていますが。でもあなたがそんな小さなことでしょげるとは思いませんがね?」
「いやwww。それがなぁ~?あるんだよなぁ~?…男としてのことでな~?尊厳がなぁ~?」
「…男として?」
麗永が疑問を抱けば今度は哉太が泣きそうな顔をして言い放った。
「…タタナクなった。」
「…はい?たたない?なにが?」
すると哉太は叫んだのである。
「俺の大事な!!!大事な息子が!!!ち○こが勃たなくなったの!!!エロいの見ても勃起しないの!!!なんで?どうして???」
「…は?」
泣き出しそうな表情を見せる哉太に訳が分からないと言った様子の麗永を交互に見て撫子は腹を抱えて笑っていた。
そんな撫子のことなど気にせずに哉太は語りだす。
「あの女とセ○クスしようという流れになってね?んで決戦になってもさ!俺の息子が…!ち○こが勃たなかったんだよ?全然こーふんしないんだよ!!?…挙句の果てには『私のことどうでも良くなったの?…サイテー。』って侮辱されてしまいには殺されかけたんだよ?もう…本当になんなの?マジで。」
「は…はあ?」
麗永にとっては心底どうでもいい情報に彼はこのまま帰ってしまいたいという衝動に駆られるのだが哉太がとんでもないことを言い放った。
「もう!それもこれも花ちゃんのせいだよ~!普段はあ~んなエロくないのにセ○クスの時はエッチだけどやっぱり純粋無垢なところとかさ!!!そこが天然というか?もうギャップ萌えっていうか?イカつい顔してヤンキーみたいでさ?…綺麗な赤髪で色黒で…いかにもヤンキーって子がさ~?もう可愛いっていうか?なんていうか」
「ちょっと待ってください。その花ちゃんって子は赤髪で色黒で…ヤンキーみたいに人相が悪い…?」
「うん?そうだよ?だって麗永も会って……あっ。」
ことは既に遅し。”不幸の花人”から”花ちゃん”と伏せていた名前ではあったが特徴を言ってしまったおかげで刑事である麗永にバレてしまったらしい。明らかに青ざめて冷や汗を垂らしている哉太と冷酷かつ蔑むような視線を送る麗永の明らかな様子に撫子は不覚にも笑わずにはいられない。…そう、彼は人の不幸が一番の好物なのだから。
そんな彼など気にもせず麗永は消臭スプレーを換気扇へと振り撒きながらニヤついている撫子を退けて冷たく笑うのだ。
「…まずは身を清めるために氷入りの冷水にでも浴びましょうか?それから誠意を見せるために彼岸花君にこれから近づかないように…いや近づいても大丈夫なようにあなたの大事な局部を切り落として」
「それだけはやめて!!!!いや!俺が悪かったから!!反省してるけど…でも…その。」
「何が言いたいんです?一回りも歳が違っているなんて犯罪ですよ?…しかも彼は高校生。あなたは彼の純粋な青春を奪った責任はあるんです?…なにか文句でも?」
氷点下0度の視線を向ける麗永に何も言えない哉太ではあるが遂に笑いが堪えきれなくなった愚か者…もとい、撫子が2人の仲裁に入る。
「まあまあ!麗永もそんな怒んなって!さすがにち○こ切るのはやめようぜ?…それだったら溜まっている原稿を片してもらって死ぬほど働いて違約金として払えばいいんじゃね?あっ!被害者金か~?」
「それも良いですね…。局部を切られるよりは負担はとてつもなく軽いですしね。…じゃあその方向性でいきましょうか。お恥ずかしいですが僕の給料が上がってくれることを願いますよ。」
一見、にこやかに笑っている麗永と撫子のSコンビが勝手に話を進める中で哉太は泣き寝入りをして叫ぶのだ。
「なんだよ~?結局カネじゃんか?…だから本当の職業が言いたくなかったの!あの女のことも言いたくなかったの!!!…そういう目当てで付き合うのが嫌だったから…。もういい!!!2人なんかどっか行けよ!このドSバカコンビ!!!」
「「そういう目当て???」」
2人が言葉を重ねてみれば哉太は言葉を詰まらせるが吐き出すことにした。
「…そりゃあ出会いは本当にアクシデントだったし手も引こうとしたよ?でも、花ちゃんは、俺という…田中 皐月ではなくて”場磁石 哉太”として見てくれた…気がしたんだよ。花ちゃんがおバカなところがあるからっていうのも要因の1つだけど…。…嬉しかったんだ。外見とか地位とかではなくて俺っていう、”場磁石 哉太”として見てくれで判断せずに付き合ってくれたことが…さ。…でも、俺も意地になって結局、花ちゃんには嫌われちゃったけどね?…あはは。」
悲しげに笑う哉太に刑事から彼の親友へと変化させた麗永はどことなく悲しさを感じてしまう。すると撫子は少し笑ってからとある言葉を呟いたのだ。
「…呪いだな。それ。」
「のろ…い?呪いって?なんで?」
すると撫子は再び口元に弧を描いて言葉を添える。
「その花ちゃんって子がお前に呪いをかけたのかもな~?宙ぶらりんなお前が一生お前を、”場磁石 哉太”を忘れさせないようにっていう。…どんな奴かは知らねぇけど面白い奴だな~。…その花ちゃんって子は。」
撫子の言葉に哉太は幸を思い返す。
「…面白いし可愛いよ。…告白まがいのこともしたけど、それでも…好きなのかは分からない。」
すると撫子に便乗して麗永も溜息を吐いてから言葉に出した。
「愛情と憎悪は紙一重って言いますし。…”人を呪わば穴二つ”とも言うじゃありませんか。あの彼が呪うなんてしそうもないですから、あなたから何かを吹っ掛けて、結局、傷心しているのでしょう?」
「それは…まあ。認めたくはないけど合ってる…よ。うん。」
哉太の両目に宿る紅の瞳に色味が無くなっていく。反省しているのだと分かった麗永は煙草を吸い終えた撫子が哉太の書斎に入るのを傍目に見てから言い放つ。
「今は溜まっている仕事にも目を向けなければなりません。…でも、あなたは自分だけではなく、…彼岸花君の立場になって考えてもみてください。誠意をもって対応すれば、あなたの気持ちに宿っている心の騒めきも、あなたが今、支配されている呪いという名の感情の正体が分かると思いますから。…ね?」
麗永の励ましに哉太は少し驚いてから何かを考え込んだ。
「麗永…。分かったよ。…考えてみる。」
優しく微笑む親友の姿に哉太の瞳が輝きを取り戻しそうにつつある。飄々としているが意外と単純な思考の哉太に麗永は微笑んでから口に出した。
「まあ最悪、刑事事件にでも発展しそうなので細かくは聞きませんが…。歳の差も長く見てみれば良いかもしれませんしね。」
「そうだよね!やっぱりまた俺、花ちゃんに」
「今は行かない方が良いですよ?ちょうど今日、彼岸花君と会った時に彼を見ましたが…まあ手が付けられなかったので。…本当に訴えられるかもしれませんね~?」
「…もう少し経ったらで良いかな~?あはは…。」
頭を掻いて気分を紛らわすようになぜかストレッチをする哉太に麗永は先ほどとは打って変わり普段通りの対応をすることにした。
「君は本当にずる賢いですね。じゃあ僕は明日は仕事なので帰らせて頂きます。…撫子さんもさっさと帰りますよ!締め切りもありますが、このバカ狼は反省していると思われますから。…反省しなかったら逮捕状を持って」
「分かった!!!めちゃくちゃ反省してるから!!!…撫子~!ちゃ~んと締め切り守るから、お願いだから原稿を増やさないでね!!!?」
哉太の直感は当たっていたようで撫子は哉太の書斎から顔を出してにっこりと笑っていた。
「いや~!ハッピーエンドも良かったけど今書いてるクソバットエンドも良いかなとか思って」
「書かないからね。」
「あ…そう。…なんだよ。ケチ。」
ふて腐れる撫子に哉太と麗永は呆れていた。
『哉太さんの…匂い。。。はぁん。んぅぅっ。』
『サチだけずるい…。俺にも。ムマにも嗅がせて…?』
-あれ?これは…夢か?…花ちゃんが2人いる。普段の長髪の花ちゃんと…髪が短めな花ちゃんだ。
『ムマぁ?てめぇ、哉太さんのカーディガンこっちに寄越せぇ…よ。』
『サチだって持ってるじゃん。俺、ぜんぜん嗅げてないから…ち○ち○勃たないぃ。』
『俺の顔で言うなぁ…?ばか。』
-えっ?!ちょっと待って??!…多分、短い髪の方が夢魔サチだよね?…2人して俺のカーディガンで自慰、オ○ニーしてんの?…やばい。引くどころか、おかずにされて嬉しいんだけど。
おお~!夢魔サチが結構積極的じゃん?花ちゃんの上に乗っかって。そんで二人で…これはなかなか濃厚なキスだな~?
-クチュゥ…。プチュゥ…。クチュリ。
『ムマぁ。。。てめぇ…舌、絡め…すぎ。哉太さんの…服、汚しちゃう…からぁ。』
『んんぅ。だってぇ…哉太さんでオ○ニーしてるサチが可愛いんだもん…。…俺、サチに挿入れたい。』
-……え?今…なんて?
『サチでどーてー卒業したい。ダメ?』
-そんな顔しないでよ!!!?もう2人とも顔がトロトロじゃん!!!でも花ちゃん!!悪いけど夢魔サチを断って…いや?どっちにしろ2人とも花ちゃんなんだから…良いのか?…というか、見てみたいという俺の衝動が…!!!
『それは…その…俺は哉太さんと』
「哉太さんと!!?なに??ってあれ??夢?」
自室にて原稿を書き上げていた哉太が起きてみれば窓辺から朝日が覗いていた。麗永と撫子が帰った後に必死になって原稿を書き上げていた哉太ではあったが…嬉しいことが1つ。…なんと夢ではあったが幸と夢魔サチによって哉太の息子が元気になっていたのである。普通であれば恥ずかしいことではあるが、この時の哉太は嬉しさのあまり飛び上がっていた。
「!!!やった!!勃起不全!!EDが治ってる!!!花ちゃんと夢魔サチのおかげだ~!!!ありがとう~!!!」
すぐさま賢者タイムをしてからひと息吐けばスマホから連絡が来ていた。あて名は麗永からでこのような内容の文面であった。
『もしかしたら状況次第であなたの想い人に良いところを見せられるかもしれません。…作戦に乗りますか?』
哉太はすぐさま返事をした。…もう自身の中で答えは決まっていたのだから。
「…花ちゃんと仲直りして…告白する。好きだって。…だったら危険な作戦だろうが乗ってやんよ?」
やる気に満ち溢れている哉太は原稿をものすごい勢いで片付けて作戦の決行まで待機することにした。
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【3人で出来るわけない!】→3P
【言葉攻め】→後輩×先輩
『僕は肉便器です』
眠りん
BL
「僕は肉便器です。どうぞ僕を使って精液や聖水をおかけください」その言葉で肉便器へと変貌する青年、河中悠璃。
彼は週に一度の乱交パーティーを楽しんでいた。
そんな時、肉便器となる悦びを悠璃に与えた原因の男が現れて肉便器をやめるよう脅してきた。
便器でなければ射精が出来ない身体となってしまっている悠璃は、彼の要求を拒むが……。
※小スカあり
2020.5.26
表紙イラストを描いていただきました。
イラスト:右京 梓様
俺たちの××
怜悧(サトシ)
BL
美形ドS×最強不良 幼馴染み ヤンキー受 男前受 ※R18
地元じゃ敵なしの幼馴染みコンビ。
ある日、最強と呼ばれている俺が普通に部屋でAV鑑賞をしていたら、殴られ、信頼していた相棒に監禁されるハメになったが……。
18R 高校生、不良受、拘束、監禁、鬼畜、SM、モブレあり
※は18R (注)はスカトロジーあり♡
表紙は藤岡さんより♡
■長谷川 東流(17歳)
182cm 78kg
脱色しすぎで灰色の髪の毛、硬めのツンツンヘア、切れ長のキツイツリ目。
喧嘩は強すぎて敵う相手はなし。進学校の北高に通ってはいるが、万年赤点。思考回路は単純、天然。
子供の頃から美少年だった康史を守るうちにいつの間にか地元の喧嘩王と呼ばれ、北高の鬼のハセガワと周囲では恐れられている。(アダ名はあまり呼ばれてないが鬼平)
■日高康史(18歳)
175cm 69kg
東流の相棒。赤茶色の天然パーマ、タレ目に泣きボクロ。かなりの美形で、東流が一緒にいないときはよくモデル事務所などにスカウトなどされるほど。
小さいころから一途に東流を思ってきたが、ついに爆発。
SM拘束物フェチ。
周りからはイケメン王子と呼ばれているが、脳内変態のため、いろいろかなり残念王子。
■野口誠士(18歳)
185cm 74kg
2人の親友。
角刈りで黒髪。無骨そうだが、基本軽い。
空手の国体選手。スポーツマンだがいろいろ寛容。
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
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