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第一部 第一章

45話 幼馴染パーティー視点1

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 時はエルクがパーティーを追放されて酒場を飛び出して行った後まで戻る。

 エルクを追放したミゲルたちはエルクがぶちまけた自分たちの荷物を急いで回収すると足早に酒場を出て二件目の酒場で酒を飲み直していた。

 二件目の酒場で酒を飲み直しているミゲルたちは、酒場を出て行く際のエルクの泣きそうな面を思い出して大笑いしながら温めのエールをがぶ飲みして騒いでいた。

「しっかし、あいつが無限収納に入ってた俺たちの荷物と水の入った樽を全て床にぶちまけて出て行ったせいであそこの酒場には暫く行けなくなっちまった。全く余計なことをしてくれたぜエルクの奴はよ」

「全くだ。あそこの酒場の飯は安い割には量もあって美味しいからな。暫く行けないと言うのは厳しいな」

 ミゲルの呟きに同じくエルクの幼馴染でこのパーティーの盾役をしているゴードンが反応を示した。

「まあ、仕方ない。あの酒場の女将さんが機嫌を戻すまで暫く耐えるとするか」

 ミゲルがそう言うとパーティーの攻撃魔法職のナナリーがミゲルに話しかけて来た。

「ねえミゲル、マリアのことなんだけど、先の酒場ではエルクに全員了承してるって言ってたけど本当はマリアだけまだ了承してないよね。それでマリアのことはどうするつもりなの」

「ああ、マリアのことか、あいつなら大丈夫だろ。あいつ気が弱いし人の意見に流されやすい所があるだろ。だから宿に戻ったら俺たち三人でうまいこと言いくるめれば大丈夫だって」

「ふう、まあそうね」

「そんな事より折角あいつをエルクを追放出来たんだ。今日は盛大に飲んで食おうぜ。あ、おばちゃん酒と串肉じゃんじゃん持って来てくれ。大至急な」

 その後、ミゲルたちは見境なく飲み食いして会計のために会計カウンターまで行き女将に会計を頼んだ。

「え~と、エールが三十杯で串肉が百二十本でしめて六万五千三百円だね」

「はあっ、六万五千三百円だって」

 女将が告げた金額を聞いたミゲルは慌てて自分の荷物の中から巾着袋を引っ張り出して中身の金を数え始めた。

 そして数え終えたミゲルは真っ青な顔で背後を振り返りゴードンとナナリーに話しかけた。

「おい、お前ら今いくら持ってる」

 ミゲルにそう聞かれたゴードンとナナリーは自分の巾着袋を荷物から取り出して中身を確認した。

「えっと、私は一万だけど」

「俺は八千だ。なあミゲル、まさか金が足りないなんて言うんじゃないだろうな」

「だ、大丈夫だ。た、足りる」

 ミゲルはそう言うとゴードンとナナリーの巾着袋をひったくってその中身をカウンターの上に全て出すと自分の巾着袋の中身も全て出した。

「え~と、二万六千三百円だね。残りは三万九千円だね」

「わ、わかっている」

 全く笑っていない目で女将に詰め寄られたミゲルはまた荷物をあさり出して何とパーティーの活動資金から残りの三万九千円を取り出してカウンターの上に置いたのだ。

 ミゲルの行動を見たゴードンとナナリーがミゲルに何か言おうとしたが言う前にミゲルの無言の圧力によって何も言えなかった。

「はい。丁度頂くよ」

 お金を払ったミゲルは下を向きながら苦虫を嚙み潰したような顔をしてゴードンとナナリーを連れて酒場を後にした。

 酒場を出たミゲルはゴードンとナナリーを連れて酒場から少し離れた路地裏に入ると二人などそっちのけで壁を力いっぱい殴りつけて盛大に暴れだした。

「何でこの俺がこんなみじめな思いをしなくちゃいけないんだよ。くそ」

「まあ、仕方ないじゃないか。今まで金の支払いとか管理を含めた諸々の雑用作業は全部エルクがやっていたんだ。村では買い物をするというよりは物々交換が基本だったし村を出て冒険者になってからは全部エルクに任せてオラたちは何もしていないから、それに今回はエルクを追放出来たことで少し浮かれてたんだ。財布のひもが緩くなっていたんだよ」

 ゴードンがミゲルの苛立ちまじりの言葉を聞いて冷静に今の自分たちの状況を分析し言い聞かせて落ち着かせるように話しかけた。

「そんなことはわかってんだよ。くそ、今日のことで金が尽きそうだからよ。明日から依頼を大量にこなして行くぞ。明日から暫くハードなオーバーワークが続くからお前ら覚悟しておけよ」

 ミゲルは二人にそう言うと小走りで先に宿へと戻って行った。

 路地裏で小走りで宿へと戻って行くミゲルの背中を見送ったゴードンとナナリーはエルクが居なくなり買い出しをする者が居なくなったので、路地裏から大通りへと戻り少しずつ暗くなり始めている通りを雑貨屋に向けて歩き出した。

 雑貨屋に着いたゴードンとナナリーは残り少なくなってしまった資金で明日必要になって来るポーション類を人数分買うとそそくさと宿へ戻って行った。





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