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幕間 その頃、聖カトミアル王国では その2
2 聖なる乙女と光の騎士たち④
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「聖女様の力で、魔物を封印すればよいのですよ」
どこから現れたのか。茶色のフードを被った修道士と思しき男が、ジャンたちの傍に立っている。
なぜか、魔物たちはその男のことは、空気か何かのように無視していた。
「誰だ? お前は?」
「名乗るほどの者ではありません。ただの修道士です」
「封印……と、言ったか? ヴァレリーにそんなことができるのか?」
「ええ、できるはずですよ。聖女様ですから」
「どうやればいいんでしょうか?」
ヴァレリーも、突然現れた謎の男に問う。
もう、自分たちだけでは、この惨状を打開することは難しいと、四人とも考えていた。
見知らぬ男の言うことでも、試してみるしか道はないのだ。
「魔物たちがあるべき所に帰るように、創造主ファシシュ様に祈りを捧げてみてください。聖女様の祈りなら、神にも通じるはずです」
男は、促すようにヴァレリーに目配せをする。
「わかりました、やってみましょう」
ヴァレリーは、跪くと再び両手を組んで、祈りを捧げた。
「天にまします創造主ファシシュ様、どうか、どうか、私の祈りをお聞き入れくださいませ。魔物たちをあるべき所に返し、その聖なる光によって封印してください」
その時、魔物たちの動きが止まった。
人々を襲っていた魔物たちは、急に大人しくなると、やって来た時とは反対に次々と海へと帰って行く。
「さすが、聖女様だ!」
「聖女様、お助けくださり、ありがとうございます!」
「伝道師様がおっしゃっていたことは、本当だったんだ! 創造主ファシシュ様と聖女様を信じ、祈りさえすればいい、と」
逃げ惑っていた民たちは、皆、その場に跪き、手を組むとヴァレリーを拝み始めた。
「皆様、おやめください。私は、そのような大層な者ではございません。それでも、微力ながら、皆様の幸せのために祈らせていただければと思います。それで、皆様が幸せになるのであれば……」
「ああ、本当に聖女様だ! なんとお優しい」
その様子を眺めていた先ほどの修道士は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっ。茶番を信じてくれたようだな。さあ、次の町を骨抜きにする準備に取り掛かるとするか」
男の呟きは誰の耳にも届いてはいなかった。
どこから現れたのか。茶色のフードを被った修道士と思しき男が、ジャンたちの傍に立っている。
なぜか、魔物たちはその男のことは、空気か何かのように無視していた。
「誰だ? お前は?」
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「封印……と、言ったか? ヴァレリーにそんなことができるのか?」
「ええ、できるはずですよ。聖女様ですから」
「どうやればいいんでしょうか?」
ヴァレリーも、突然現れた謎の男に問う。
もう、自分たちだけでは、この惨状を打開することは難しいと、四人とも考えていた。
見知らぬ男の言うことでも、試してみるしか道はないのだ。
「魔物たちがあるべき所に帰るように、創造主ファシシュ様に祈りを捧げてみてください。聖女様の祈りなら、神にも通じるはずです」
男は、促すようにヴァレリーに目配せをする。
「わかりました、やってみましょう」
ヴァレリーは、跪くと再び両手を組んで、祈りを捧げた。
「天にまします創造主ファシシュ様、どうか、どうか、私の祈りをお聞き入れくださいませ。魔物たちをあるべき所に返し、その聖なる光によって封印してください」
その時、魔物たちの動きが止まった。
人々を襲っていた魔物たちは、急に大人しくなると、やって来た時とは反対に次々と海へと帰って行く。
「さすが、聖女様だ!」
「聖女様、お助けくださり、ありがとうございます!」
「伝道師様がおっしゃっていたことは、本当だったんだ! 創造主ファシシュ様と聖女様を信じ、祈りさえすればいい、と」
逃げ惑っていた民たちは、皆、その場に跪き、手を組むとヴァレリーを拝み始めた。
「皆様、おやめください。私は、そのような大層な者ではございません。それでも、微力ながら、皆様の幸せのために祈らせていただければと思います。それで、皆様が幸せになるのであれば……」
「ああ、本当に聖女様だ! なんとお優しい」
その様子を眺めていた先ほどの修道士は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっ。茶番を信じてくれたようだな。さあ、次の町を骨抜きにする準備に取り掛かるとするか」
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