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幕間 その頃、聖カトミアル王国では その2
3 聖なる乙女と光の騎士たち⑤
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* * *
──同じ頃。
聖カトミアル王国の周辺諸国では、ファシシュ教の伝道師たちが、町や村の広場において、ファシシュ教徒ではない民たちを集めては、その教えの尊さを説いていた。
「今、このローテルン大陸のあちこちに魔物の群れが現れています。それは、アヴァロニア王国の魔王ヴィネが、魔女エレインと共に、この世を混乱に陥れようとして、魔界から呼び寄せているのです。このままだとこの世は、魔王ヴィネと凶悪な魔女エレインによって滅ぼされてしまうことでしょう。間もなく、──もう間もなくで、この世の終わりがやってきます!」
伝道師が煽る恐怖の物語に、村人たちは震え、口々に質問を投げかけた。
「このままだとこの世は滅びてしまうってことかい?」
「この前、うちの畑は、魔物にひどく荒らされちまったんだよ。これも、その凶悪な魔女の呪いってヤツなのかい?」
人々の問いに、伝道師は大きく頷いた。
「その通りです。魔物たちがこの世に姿を現すのは、我々の創造主ファシシュ様への信心が足りないからです。魔王や魔女の力が勝っているから、魔物たちが現れるのです」
「では、どうしたら……どうしたら、魔物から救われることができるんですか? 俺らにできることを、教えてくださいよ」
「そうだ、そうだ!」
「頼む、教えてくれよ」
「今は、創造主ファシシュ様に忠誠を誓う聖堂騎士団と聖女様が、この大陸中を回って、魔物たちの討伐を行っています。間もなく、魔物たちは聖なる力のもと、一刀両断、討伐されることでしょう」
「おお、それなら安心だ」
「よかった、よかった」
「ただし、聖女様たちのお働きがあるとは言え、安心はできません。真に平和な世が訪れるか、この世の終わりが訪れるかは、我々にかかっています。平和な世をもたらすために、創造主ファシシュ様に、我々の信心をご覧いただく必要があります。不信心者がいると、その村や町は、魔物に襲われるそうですよ」
伝道師は、さらに大げさに恐怖を煽った。
「もし創造主ファシシュ様の教えに反し、悪魔に通じるようなことをしてしまった……、そう思ったら、いつでも教会までいらしてください。聖女さまが聖なる息を吹きかけた“免罪符”を、今ならたった銀貨一枚でお分けしています」
「銀貨一枚でいいのか……」
「いや、高くないか? 銀貨一枚であんな紙切れだぞ」
「でも、それで命が助かると思ったら安いもんじゃないか」
「もちろん、お一人で何枚もお持ちいただくことも可能です。魔物に襲われないために、常に持って歩いていただくことをおすすめします。また、その他にも教会に寄進いただけば、聖女様たちの討伐の助けになることでしょう。この世に平和が訪れる日も、さらに近くなるはずです」
伝道師は、免罪符を村人たちによく見えるように、高く掲げた。
「その、創造主ファシシュの教えに反するっていうのは、具体的にどんなことなんだ?」
「それは、この教典にも書いてありますが……、姦淫や盗みはもちろんのこと、たとえば『嘘をつく』というのも、そのひとつですね。あなたは、こんな嘘をついたことはありませんか?
『あなた、昨日は随分遅かったみたいだけど、どうしたの?』
『隣村のハンスと久しぶりに会って、居酒屋で一杯やっていたのさ』
本当は、売春宿で夜を過ごしていたにも関わらず……」
話を聞いていた男たちのほぼ全員に心当たりがあったようだ。
「銀貨一枚でいいなら……教会に行ってみるかな」
「ああ、そうだな。それで魔物に襲われなくなるってぇなら、安いもんだよなあ」
「聖女様に助けてもらいてえよなぁ」
皆、口々に頷き合っていた。
──同じ頃。
聖カトミアル王国の周辺諸国では、ファシシュ教の伝道師たちが、町や村の広場において、ファシシュ教徒ではない民たちを集めては、その教えの尊さを説いていた。
「今、このローテルン大陸のあちこちに魔物の群れが現れています。それは、アヴァロニア王国の魔王ヴィネが、魔女エレインと共に、この世を混乱に陥れようとして、魔界から呼び寄せているのです。このままだとこの世は、魔王ヴィネと凶悪な魔女エレインによって滅ぼされてしまうことでしょう。間もなく、──もう間もなくで、この世の終わりがやってきます!」
伝道師が煽る恐怖の物語に、村人たちは震え、口々に質問を投げかけた。
「このままだとこの世は滅びてしまうってことかい?」
「この前、うちの畑は、魔物にひどく荒らされちまったんだよ。これも、その凶悪な魔女の呪いってヤツなのかい?」
人々の問いに、伝道師は大きく頷いた。
「その通りです。魔物たちがこの世に姿を現すのは、我々の創造主ファシシュ様への信心が足りないからです。魔王や魔女の力が勝っているから、魔物たちが現れるのです」
「では、どうしたら……どうしたら、魔物から救われることができるんですか? 俺らにできることを、教えてくださいよ」
「そうだ、そうだ!」
「頼む、教えてくれよ」
「今は、創造主ファシシュ様に忠誠を誓う聖堂騎士団と聖女様が、この大陸中を回って、魔物たちの討伐を行っています。間もなく、魔物たちは聖なる力のもと、一刀両断、討伐されることでしょう」
「おお、それなら安心だ」
「よかった、よかった」
「ただし、聖女様たちのお働きがあるとは言え、安心はできません。真に平和な世が訪れるか、この世の終わりが訪れるかは、我々にかかっています。平和な世をもたらすために、創造主ファシシュ様に、我々の信心をご覧いただく必要があります。不信心者がいると、その村や町は、魔物に襲われるそうですよ」
伝道師は、さらに大げさに恐怖を煽った。
「もし創造主ファシシュ様の教えに反し、悪魔に通じるようなことをしてしまった……、そう思ったら、いつでも教会までいらしてください。聖女さまが聖なる息を吹きかけた“免罪符”を、今ならたった銀貨一枚でお分けしています」
「銀貨一枚でいいのか……」
「いや、高くないか? 銀貨一枚であんな紙切れだぞ」
「でも、それで命が助かると思ったら安いもんじゃないか」
「もちろん、お一人で何枚もお持ちいただくことも可能です。魔物に襲われないために、常に持って歩いていただくことをおすすめします。また、その他にも教会に寄進いただけば、聖女様たちの討伐の助けになることでしょう。この世に平和が訪れる日も、さらに近くなるはずです」
伝道師は、免罪符を村人たちによく見えるように、高く掲げた。
「その、創造主ファシシュの教えに反するっていうのは、具体的にどんなことなんだ?」
「それは、この教典にも書いてありますが……、姦淫や盗みはもちろんのこと、たとえば『嘘をつく』というのも、そのひとつですね。あなたは、こんな嘘をついたことはありませんか?
『あなた、昨日は随分遅かったみたいだけど、どうしたの?』
『隣村のハンスと久しぶりに会って、居酒屋で一杯やっていたのさ』
本当は、売春宿で夜を過ごしていたにも関わらず……」
話を聞いていた男たちのほぼ全員に心当たりがあったようだ。
「銀貨一枚でいいなら……教会に行ってみるかな」
「ああ、そうだな。それで魔物に襲われなくなるってぇなら、安いもんだよなあ」
「聖女様に助けてもらいてえよなぁ」
皆、口々に頷き合っていた。
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