魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

文字の大きさ
66 / 106
第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

20 セパルの荘園を視察して改善策を考えましょう

しおりを挟む
「到着いたしました、陛下、エレイン様。陛下におかれましては、転移魔法で移動されればすぐでごさいますのに、馬車で長い道中をお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました」
「ああ、エレインの話を聞きたかったのでな。おかげで退屈せずにすんだ。ゆったりと移動するのも、たまにはよいものだな」
「あ、ありがとうございます」

 馬車を降りると、そこにはのどかな田園風景が広がっていた。

「ここは、私が陛下から賜っております荘園の畑のひとつでごさいます」

 それまで農作業に精を出していた民たちは、ヴィネ陛下の姿を認めると、一斉に仕事の手を止めて、その場に跪く。

「ああ、よいよい。続けよ。我々のことは気にしなくてよいぞ。今日はお忍びで参ったのだ。後で話を聞かせてもらうかもしれぬが、それまではそれぞれの仕事を続けるがよい」

「はい」
「かしこまりました」

 ヴィネ陛下の言葉に返事をすると、民たちは再び、先ほどまで行っていた作業を始めた。

「ここでは、おもに小麦と大麦を栽培しています。夏と冬で育てる作物を変えているのです。今は、夏なので大麦を栽培しているところです。休ませている畑では、あのように羊や牛を放牧しています」

 セパルの説明を受けながら、私たちは畑の周囲を歩いて巡る。

「休ませている畑……ということは、この地域ではもう三圃さんぽ制の農業は行われているのですね」

 前世で通っていた高校の世界史の授業で聞きかじった程度の知識でしかないが、確か三圃制は二圃にほ制に比べ、生産性を高めることのできる農業の方法だ。
 休耕地を設けることで、土地が痩せるのを防ぐことができるのである。

「ええ、そうですね。休耕地を設けていなかった昔に比べると、土地の痩せた我が国でも、穀物の生産量が上がったと、国の記録には残されています」
「土地を耕すのには、牛や馬を使っていますか?」
「はい、すきに車輪を付けた農具を、牛に引かせています」
「なら、この地域では、これ以上、生産性を高めるのは難しそうですね」
「そなたが暮らしていた前世でも、農業はこことさほど変わらず、あまり進歩はしていないということか?」
「いえ。農薬を使って害虫を駆除したり、化学肥料を使って土地を豊かにしたりといった進化はしています。しかし、それには化学の進化が必要で、正直に申し上げると私にはそこまで化学や薬に関する専門的な知識がないのです。また、化学肥料や農薬を使った農業が必ずしも良いことばかりとは限らず……。前世の、文明の進んだ世界でも、有機野菜と言って昔ながらの農法で作られた野菜の方が、高価ではあっても、ありがたがられていたと思うので、この点に関しては必ずしも進化が必要とは言えないのです」
「薬は毒にもなるということか」
「まさに、陛下がおっしゃる通りです。文明の進んだ世界では、地球温暖化をはじめ、さまざまな環境破壊が問題となっていました。たとえば、重量じゅうりょう有輪犂ゆうりんすきの代わりに、ガソリンという燃料を使って動かす農耕具も使用されていましたが、これがはたして良いことかどうか……。牛を使うより便利ではありますが、ガソリンを燃料とすることが、この世界にとって良いことかどうか、私には判断がつきません」

 これ以上、この地域で生産性を高めるのは難しいかもしれない。
 しかし、なんとか力になれることはないだろうか。
 私は、前世の記憶に思いを巡らせた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢は推しカプのために婚約破棄されたい 〜好感度モニターが壊れて全人類から溺愛されてます〜

りい
恋愛
悪役令嬢は推しカプのために婚約破棄されたい 〜好感度モニターが壊れて全人類から溺愛されてます〜 「もっとゲームがしたかった……!」 そんな切実な未練を残し、山積みの積ゲーと重量級の設定資料集に埋もれて物理的に「尊死」した限界オタクの私。 目が覚めると、そこは大好きな乙女ゲーム『幻想のルミナス』の世界。しかも、推しカプ(王子×聖女)を邪魔して最後には無残に断罪される悪役令嬢・リリアーナに転生していた! 普通なら破滅フラグ回避に走るところだけど、オタクの私は一味違う。 「断罪イベントを特等席(悪役席)で見られるなんて……これって最高のご褒美じゃない!?」 完璧な婚約破棄を勝ち取り、二人の愛の軌跡を「生」で拝むため、私は悪役として嫌われる努力を開始する。さらに、転生特典(?)で手に入れた**『好感度モニター』**を駆使して、二人の愛の数値をニヤニヤ見守るはずだった。 ――なのに、視界に映る現実はバグだらけ。 「嫌われようと冷たくしたのに、王子の好感度が**【100(カンスト)】を超えてエラーを吐き出してるんですけど!? というか、肝心のヒロインまで私を姉様と慕って【200(唯一無二)】**ってどういうこと!?」 推しカプの二人は私を見るばかりで、お互いへの好感度は一向に上がらない。 果たしてリリアーナは、重すぎる全方位からの溺愛をはねのけ、理想の「婚約破棄」に辿り着けるのか? 勘違いとバグが加速する、異色の溺愛(?)ファンタジー開幕!

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...