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第三章 内政チートで魔王の国を改革! 魔王からの好感度アップを目指します

21 ヴィネ様に食用油と石油の違いを説明します

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 前世では、有機野菜というと、セレブや意識高い系の人たちが好んで食べていたイメージがある。
 野菜に限らず、化粧品も“オーガニック”を好んで使う人たちは多かった。
 ということは、化学肥料を使ってまで生産性を高める必要はないということだろう。
 ならば、この地域での農業はこのままに、アヴァロニア王国北部、農業が難しい地域での生産性を上げるにはどうすべきかという問題に、焦点を絞った方がよいのかもしれない。

「先ほど、馬車の中で話していた、“自動車”や“飛行機”という乗り物も、その“ガソリン”というものを使うのか?」
「はい。確か……飛行機に関しては、ガソリンではなくジェット燃料というものが使われていましたが、ガソリン同様に原油由来の燃料だったはずです」
「その“原油”というもののイメージがよくわからないのだが……。我々が食事に使用する木の実の油や、動物から取った油と何が違うのだ? 『この世界にとって良いことかどうか』とそなたは言うが、油が世界に悪影響を及ぼす可能性があるとでも言うのか?」

 私は、ヴィネ様の問いに対して思わず答えに詰まってしまった。
 前世のニュースで、何度も聞いた「石油は環境破壊を引き起こす」というフレーズ。そして、タンカー事故により海に大量流出した重油にまみれ、瀕死の状態になった海の生物たちの哀れな姿。
 そんな数々のイメージから、「石油=悪」というのは当たり前のように、常識として理解していた。
 しかし、石油燃料のない世界の人々にとって、油と言えばおもに食用油だ。戦で、火矢を使用する際に油を使ったり、火攻めを行ったりすることはあるかもしれないが、多くの油は人に攻撃する目的で使用されるものではなく、生活に必要なものであって、悪ではないのだろう。

「そもそも、その“原油”とは、何なのだ?」
「陛下は化石は、ご存知ですか?」
「化石なら一度、視察に訪れた山の岩肌で見たことがあるぞ。昔の生物が石になったものだろう。どうやって石の中に生物が閉じ込められたかわからぬが」
「そのように、大昔の生物の遺骸が海底や山の中で堆積し、エネルギー資源として利用できるようになったものを化石燃料と呼びます。液体であれば、石油。固体であれば、石炭です」
「生物の遺骸であれば、特に問題はなさそうであるが……。ラードやバターを食しても、身体に悪影響はないであろう。あれらも、動物から取った油だと聞くぞ。石油はそれらと違うというのか?」
「石油は食べられる油ではなかったと思いますが……」

 確か、石油系のオイルを使ったクレンジングオイルなど、化粧品ですら肌にあまりよくないと言われていた記憶があるから、食用油としては使用できないはずだ。

「食べられるか否かはさておき、まず、“自動車”や“飛行機”を動かすには、とてつもない量の化石燃料が必要になります。おそらく、戦の火攻めで使用する油の量とは比べものにならないほど……、化石燃料を、大量に燃やすのです。その結果、簡単に説明するのであれば、空気が汚れます。世界中の気温が徐々に上がっていくと言われています」

 私は、石油による環境破壊について、かなりざっくりとした説明をした。
 石油燃料を燃やすことにより、空気中の二酸化炭素が増え、温室効果ガスによって地球が温暖化する、という仕組みを、この世界の人たちに説明することは、なかなか難しい。
 空気の成分についても、おそらく判明されていないはずだからだ。
 この世界の人たちにとっての、空気は、火・地・水・風という、この世の四大元素のひとつに過ぎない。
 その「風」の中にも、酸素や窒素、二酸化炭素といった、眼に見えないさまざまな成分が含まれているのだが、そのことを伝えるのは至難しなんわざだろう。
 この四大元素を使用した魔法が発達した、アヴァロニア王国の人々を相手に説明するのであれはなおさらだ。

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