魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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プロローグ

魔王の妃を目指すことにしました

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「ヴィネ・ド・ロマリエル陛下。私をあなたの妃にしてはいただけないでしょうか」

 私、エレイン・ド・サヴァティエは、魔王と呼ばれる男、ヴィネ・ド・ロマリエルの前で、優雅にこうべを垂れながら、うやうやしくこいねがった。
 アヴァロニア王国を治める王である、ヴィネは玉座に深く腰掛けたまま、目をみはる。
 オペラを歌うような、ヴィネの美声が大広間に響き渡った。

「笑止! 何を言い出すかと思えば。私の妃になりたい、とはな」

 白磁のような、透き通る肌。
 腰まで届く深い紺色のストレート・ヘアは、サファイアのような輝きを放っている。
 目元は仮面で隠されてはいるが、その仮面の下には、形良く、まっすぐに伸びた高い鼻梁が続く。

(ああ、推しが……私の一番の推しが! 私の、目の前にいる!)

 本当ならば、床に転がりながら悶絶し、萌える心の限りを叫んでしまいたい。
 そんな気持ちを抑えながら、私は、貴族の淑女らしく、あくまでも冷静を装った。
 目の前にいる彼は、乙女ゲーム『聖なる乙女と光の騎士たち』のラスボスである、魔王ヴィネ・ド・ロマリエル。
 ラスボスとして設定されている彼は、ゲームの中では、通常、攻略することが叶わないキャラだ。

(ああ、ヴィネ様……尊い! スチル以上に、現実のヴィネ様ってば、なんてお美しいの! もう、何が何でも、攻略させていただきます!!)

 私は、なぜかわからないが前世でプレイしていたゲーム『聖なる乙女と光の騎士たち』の登場人物、しかも悪役である、公爵令嬢エレイン・ド・サヴァティエに生まれ変わっていた。
 そして、今。
 とある事情により、魔王ヴィネ・ド・ロマリエルを恋愛対象として攻略しようと試みていたのだ。

 その、「とある事情」を説明するためには、約一ヶ月前に起きた、「とある事件」にまで遡らなければいけない。
 そう、あの忌まわしい出来事、婚約破棄のあの場面まで──

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