花も嵐も踏み越えて わたしはたぶん振り返らない
ふたりの女性がいる。
ひとりは高校教師の高津実莉(たかつみのり)。
43歳独身。微妙に要領が悪く、人生目標を絞り一点集中することでどうにか望むような人生を歩んできた。仕事に充実感を持っているが、自分の満足感のみを優先してきた人生に一抹の後ろめたさを感じていた。
もうひとりは魔女の緋山奈智子(ひやまなちこ)。
43歳既婚者で一児の母。容姿と人格に恵まれ、何事においても人並み以上にこなせる器用で聡い人物。『子供のような恋愛』に並々ならぬ執着を抱き、若返って身分を偽り、実莉の勤める高校に入学した。
ーー彼女らが青春を迎えていた時代はいわゆる『恋愛至上主義』的価値観が幅を利かせていた時代で、そんなものを誰もが忘れた現代においても、彼女らの価値観の根幹には、恋愛が、深く致命的に根を張っていた。
突如現れたかつての同級生の魔女との共同生活を通し、実莉は、忘れ去っていたかつての『心象風景』を再び垣間見ることになる……。
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