上 下
158 / 209
Day‘s Eye 花嫁になったデイジー

蜜月初夜【前】(※R18)

しおりを挟む
 名実ともに夫婦と認められた私とテオはその日の夜のうちに新しい住処へと移ることになった。育った家から出ていくのがなんだか寂しかったが、両親はいつでも帰ってきていいと言ってくれたので私は安心して出かけられた。
 家族たちに見送られて私はテオと2人で新居へと向かう。

 丘の上の新しい家まで少し距離はあるが、足元を灯りで照らせば問題なく歩ける。そのはずなのに移動の際はテオが私を抱き上げていた。俺は夜目がきくからと言って。
 テオは私がすぐに死ぬような弱い生き物だと勘違いしているんじゃなかろうか。仮に夜道でずっこけても、そう簡単に死にはしないのに大げさである。
 幼少期にいじめてきた分、足りなかった優しさを今与えられている気がしないこともない。

 扉を開けると、新居には当然ながら誰もいない。真っ暗な室内に最低限の灯りの火を灯して寝る準備をする。ここに来るまでお互い言葉少なめだった。私もだけど、テオも緊張しているのだと思う。初めての2人きりの夜だもの。
 先にお風呂を使わせてもらった私は、身だしなみを整えたあとに夫婦の寝室へと足を踏み入れた。手に握った小さな小瓶を枕下に忍ばせるとため息を吐く。柄にもなくガチガチに緊張していた。
 今までにも何度か睦み合うことはあったけど、私達は最後まではいたしていない。今晩ちゃんと完遂できるだろうかとか不安もある。

 静かな部屋に自分の呼吸音と落ち着かなく高鳴る心臓の音が耳に刺さる。今か今かと待っていたくせに、いざガチャリ、とドアノブが回された音が聞こえると私は大げさにビビってしまった。
 そりゃそうか、ここはテオが建てた家で、この寝室はテオの寝室でもある。ノックとか呼びかけとかせずに遠慮なく入ってくるよね。

 空はとっくに真っ暗に代わり、空には月と星が輝くだけ。ほのかな月明かりが差し込む寝室はランプの灯りだけが頼りだ。近づけばお互いの表情が分かるだろうが、この距離だと少しわからない。
 私はベッドに座ったまま、テオを静かに見上げていた。テオは後ろ手に扉を閉じると、こちらに近づいてくる。

 普段テオと会うときは日中の明るい時間だったから、夜に家で2人きりになるのは新鮮だった。いつもとは違うテオの雰囲気を感じ取って、私は少しばかり恐怖を抱いていた。
 ギシ、と隣にテオが座ったことでベッドが重さで揺れる。私は思った。今までにここまで緊張したことはあったか? 狼家族と遭遇した時や、戦闘に入った時とは違う緊張感だ。

 …ここで何をすればいいのか。
 式の感想でも言うか、明日の朝食どうするか確認するか…。考えすぎて何がなんだかわからなくなってきた。俯いて膝の上でギュッと手を握りしめていると、その上から大きな手が重なってきた。
 私が顔を上げて隣のテオを見上げると、テオは真剣な、しかしいつもとは違った表情で私を熱く見つめていた。熱い視線に捕らえられた私はゆっくり近づいてくるテオの顔を見つめ、静かに目を閉ざす。
 ろうそく灯りでぼんやりと照らされた私達の影はひとつになり、寝台へと倒れ込んでいった。



 結婚前の睦み合いとは違う。私達は着ていた寝間着を脱ぎ去ってお互い生まれたままの姿になると、何度も何度も口づけを交わした。
 テオは首筋に舌をなぞらせながら、私の乳房を両手で揉みしだいた。触り心地を確かめるかのような、パン生地でも捏ねられているみたいな触り方だけど、触られているとなぜだか頭がぼんやりして、私の息も荒くなっていく。

「あ…っ! んんぅ…」

 ツンと主張している尖りをぐにっと摘まれて声を漏らすと、その声を聞くがために何度も何度もいたぶってくる。私はその度にはしたない女みたいな甘えた声を漏らしている。それが恥ずかしいのに、声が抑えられない。
 テオの舌がぬるりと鎖骨から胸の膨らみへと向かい、頂きに到達するとためらいなく固く尖ったそれに吸い付いてきた。

「ぁ、いや」
「いやじゃねーだろ」

 テオはちゅうちゅうとわざと音を立てて吸ってくる。私が恥ずかしがっていると気づいているくせに、更に愛撫を続けて私の痴態を見て楽しんでいる。
 私が嫌だって本気で言えば、きっとテオは中断するだろう。
 ──困ったことに、恥ずかしいくせに行為自体は嫌じゃない。それをテオも気づいている。天の邪鬼な私は与えられる刺激にはしたなく喜んでしまっていた。

 集中的な愛撫を受けているのは胸だけなのに、私の身体の中心がムズムズと疼いてきているのがわかった。触れられていないのに痺れて熱くなっている。
 多分、鼻のいいテオには丸わかりなんじゃなかろうか。私が発情しているってことくらい。

「んー……いい匂い」
「…っ!」

 吸われすぎてふやけた私の胸の尖りはテオの唾液でテカテカ濡れていた。しかし私はそれに恥ずかしがるどころではなかった。
 なぜなら、テオが私の股ぐらに顔を近づけていたからだ。

「ちょ…! やめて!? 直接匂い嗅ぐのはホントやめて!?」
「だってこれからほぐさねーと。最初は口使って馴染ませないときついぞ」
「いや、待って、弛緩剤が」
「だぁめ。俺らどれだけ体格差あると思ってんだよ」

 こういうときのために昔ながらの秘伝の薬があったりするんだが、それだけじゃ駄目だとテオは言う。
 私が止めるのも聞かずに、テオは私の秘部に口をつけると、その舌でねっとり舐め上げた。

「あぁ…」

 ぞくぞくと駆け上がったのは抗えない快感である。私の腰が引けているのに気がついたテオは私の腰を抑え込むと、むしゃぶりつくように喰らいついてきた。

「ヒッ!? あぁぁぁ! 駄目、待って、あ、いやっ」

 恥ずかしいのと、今まで感じたことのない快感と、少しばかりの恐怖で私は悲鳴みたいな喘ぎ声を上げた。無論、テオは中断しない。
 そういう行為もあると本で読んだことはある。だが、それは必須というわけじゃなく。まさか初っ端からされるとは思わなかった。

「すげー次から次に溢れてくる。舐めても終わりがねぇ」
「そういうこと言わないでよ! んっ」
「…痛いか?」

 ヌッと膣内にゆっくり侵入してきたテオの指に私は軽く震えたが、痛くない。私が首を横にふると。テオはホッとした様子だった。
 そのままにゅちにゅちと音を立てながら動かされ…痛くないけど、音が恥ずかしくていたたまれない。なのにテオは私が痛がってないか観察するように顔をじっと見てくるから私はどんな顔をしていいかわからなかった。
 その後2本、3本と指は増やされると、圧迫感が出てきたが私は軽く吐息を漏らすだけ。恥ずかしがっても仕方ない。嫌がっていたらいつまでも私はテオと一つになれないのだ。反抗するのをやめた。
 多分テオもギリギリのところを我慢して、私の身体の準備をしてくれているのだろうし。
 ……それに見た感じ、大丈夫そうな気がする。

 テオの下半身を見て、そう思い込んでいた私はその後、それがとんだ思い違いだと気づかされたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】わたしはお飾りの妻らしい。  〜16歳で継母になりました〜

たろ
恋愛
結婚して半年。 わたしはこの家には必要がない。 政略結婚。 愛は何処にもない。 要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。 お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。 とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。 そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。 旦那様には愛する人がいる。 わたしはお飾りの妻。 せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

【R18】熱い一夜が明けたら~酔い潰れた翌朝、隣に団長様の寝顔。~

三月べに
恋愛
酔い潰れた翌朝。やけに身体が重いかと思えば、ベッドには自分だけではなく、男がいた! しかも、第三王子であり、所属する第三騎士団の団長様! 一夜の過ちをガッツリやらかした私は、寝ている間にそそくさと退散。まぁ、あの見目麗しい団長と一夜なんて、いい思いをしたと思うことにした。が、そもそもどうしてそうなった??? と不思議に思っていれば、なんと団長様が一夜のお相手を捜索中だと! 団長様は媚薬を盛られてあの宿屋に逃げ込んでやり過ごそうとしたが、うっかり鍵をかけ忘れ、酔っ払った私がその部屋に入っては、上になだれ込み、致した……! あちゃー! 氷の冷徹の団長様は、一体どういうつもりで探しているのかと息をひそめて耳をすませた。

処理中です...