約束 〜幼馴染みの甘い執愛〜

紺乃 藍

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5章 Side:愛梨

7話

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 日頃の疲れを解放するように、目覚まし時計もかけずに気が済むまで眠り続けた。ほぼ同時に目を覚ました弘翔に顔を覗き込まれて、体調を確認される。

「身体辛い?」
「ううん。ちょっとお腹痛いだけ」

 痛いのはお腹よりもう少し下だが、男性には存在しない器官なのでお腹が痛いという事で説明を省かせてもらう。

 少し心配そうな顔をした弘翔に笑顔を作ると、2人でだらだらと動き出した。適当にブランチを済ませて顔を洗うとすぐに手持ち無沙汰になったので

「ゲームしよ、ゲーム」

 と弘翔を誘った。

「愛梨、結構ゲーム好きだよな」
「うん。RPGはやらないけど、パズル系とアクション系は昔から結構好き。あと音楽系」

 ゲーマーという程ではないが、弘翔の家にはテレビやネットで話題になっているテレビゲームが一通り揃っている。実家から持ってきたものもあるようで、中には懐かしいソフトも紛れていた。

 愛梨がその中からレースゲームを選ぶと、準備のためにケーブルを解いていた弘翔に、首を傾げながら問いかけられる。

「河上さんとしてたの?」

 起きてから今この瞬間まですっかり忘れていた人物の名前を出され、思わず黙る。

 脳裏に浮かんだ昨日のキスを思い出さないように懸命に精神統一を図りながら顔を上げると、何故か弘翔の視線が泳いでいた。愛梨はふと、その視線の意味に気付く。

「……いじわる……?」
「や、違う。ごめんごめん」

 どうやら探りを入れられていたらしい。気になっていることを素直に気になっていると言えないところも、弘翔の可愛いところだ。子供っぽいやり口で愛梨の過去を確かめようとした弘翔に、思わずくすくすと笑ってしまう。

「それもあるけど、うち弟がゲーム好きで。割と何でも揃ってたから」

 嘘をつく必要などないので、ありのままを説明する。確かに小学校を卒業するまでは、雪哉ともよくテレビゲームをして遊んでいた。けれど雪哉と離れてからも、弟とたまに遊んでいたのでその話に偽りはない。

(こういう事は、話せるんだけどな)

 秘密のウェイトが違う。昨日の資料室での出来事はヘビー級だが、昔の思い出話などせいぜいライト級だ。本当は弘翔に隠し事などしたくないのに、話すと全てが崩壊してしまいそうで、とても口には出せそうにない。

 何とか溜息を押し隠して、コントローラーを握る。

 画面の中では、愛梨が選んだ女の子のレーサーがトラップやアイテムが散りばめられたコースを爆走していく。見事に1着でゴールしたキャラクターがくるりと踊ると、まんまと愛梨に出し抜かれた弘翔が、ちぇっと唇を尖らせた。

「ちゃんと上手いなぁ。画面と一緒に体が傾くレベルだと思ってたのに」
「えー? 体動かしても、画面の中は動かないでしょ」
「いやいや、それは愛梨が出来るからだって。出来ない子はホントに体傾くの」

 そう言われて思い出す。弘翔の言う通り、同級生の女子はテレビゲームをやると画面の中のキャラクターにつられて本人の身体も動いたり傾いたりしていた。けれどそういう子は、決まってテレビゲームなどに全く興味のない子だ。

 女子同士でつるんでは流行の文房雑貨や少女漫画などに熱量を注ぎ、中学校に入る頃にはいち早く色恋沙汰に身を投じる、いわゆる女子力の高い子たち。男勝りだった愛梨とは早々に趣味が合わなくなった、女子の中の女子だ。

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