金の野獣と薔薇の番

むー

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番外編 瑠可/楓

番外編 kaede-4

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慌ただしく1ヶ月が過ぎようとしていた。
瑠可とは会えなかったが、連絡はまめに取るようにした。
そして、返事を早く聞くために、会えない日々をバネに就活を頑張った。


第一志望の三次面接の帰り、偶然、瑠可と会った。
その前には、篠崎春樹とすれ違った。
瑠可と一緒に居るところを見かけた時から胡散臭い奴だと思っていた。
あの時、篠崎の体からは瑠可とは違う複数のオメガのフェロモンの匂いが混じっていたからだ。
それは複数のオメガとの関係があるということを意味する。
そして今日は、そこに瑠可の匂いが微かに混じっていた。


横断歩道の先にいた瑠可に近づくと、瑠可からも篠崎の匂いがした。
瑠可はヘラヘラ笑いながら、篠崎に告白されたと言った。
更に、その返事に迷ってる、と。
その言葉に自分の眉間の皺が痛くなるほど深くなるのを感じる。

「瑠可、前に俺、お前に言ったよな」
「……あ…」

俺の一言に瑠可が息を飲み、俯き、俺の視線から逃げた。

そうか、瑠可は先に告白した俺への返事なんて考えていなかったんだ。
それに気づいた瞬間、俺の中にあった瑠可への想いはストンと抜け落ち、何の感情も湧かなくなった。
瑠可の腕を掴んでいた手は力なく落ち、俺は無意識に言葉を発した。

「わかった。もういいよ…。俺が言ったこと忘れて」

もう疲れた。
就活も。
こんな虚しいだけとなった想いを抱えることも。

だけど、大事に思う気持ちは捨てられなかった。

「お前に告白した奴、正直お勧めはできない。でも、それでも瑠可がソイツを選ぶのなら、大事にしてもらえ」

それだけ言うと、俺は瑠可に背を向け、顔もを見ることもなく家に帰った。


俺以外のやつに想われ、大事にされる姿は見たくない。
でも、瑠可に見て貰えない俺は、その土俵にも立って篠崎と張り合うこともできない。
手から抜け落ちた想いに胸が痛んだ。

俺は瑠可に連絡することをやめた。
そして、瑠可からも連絡が来なくなった。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

夏休みで帰省した結季から、瑠可が篠崎と付き合い始めたと聞かされた。
「何やってんだよ」と責められたけど、本当、何やってたんだよ俺。

その直後に受けた面接はボロボロで、怒った会社のお偉いさんがその場で俺の不採用を言い渡した。

それから2週間が過ぎた頃。
第一志望の会社から最終面接の案内が来た日の夜、神凪の実家にいる結季から電話が来た。
珍しく電話口で取り乱した様子の結季から、自分の代わりに瑠可にピルを届けて欲しいと頼まれた。

薬箱からピルと抑制剤を取り出し、抑制剤を飲み込むと、財布とスマホだけ持って教えられたホテルへ急いで向かった。


「な、なんで……?ボクは結季くんを呼んだのに…」

俺を見た瑠可は想像以上に動揺した。

「ゆうは今実家にいる。俺はゆうにお前を頼まれたんだよ」

バスローブを着た瑠可の首元には情事の痕がいくつも残されていた。
中からもいろんな匂いがして思わず顔を顰め苛立った。
そのイライラを隠さずにズカズカと奥に進むと、乱れたベッドが目に入って、眉間の皺が更に深くなった。

それを見ないように、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、キャップを開けて瑠可に手渡した。

「ほら、薬出すから飲め」

水を一口飲んだ瑠可の口に錠剤を放り込むと、水をまた一口含んで飲み込んだ。

「中、掻き出したか?」
「あ、うん、一応」

そう言った瑠可の脚の間を白い液体が流れた。
掻き出しきれないほど出されたのだと思ったら益々腹が立ち舌打ちをしてしまった。
俺の様子に焦る瑠可を抱えてバスルームに行き、服が濡れることも構わず瑠可の中にある精液を掻き出した。
その刺激に瑠可は最初、手で口を塞いで声を出さないよう必死に我慢していたが、途中から俺にしがみ付いて声を上げた。
その手にはいくつもついた噛み跡から血が滲み出ていた。
俺は瑠可を襲ってしまわないよう必死に理性を保った。
それでも理性が切れそうな時は痛々しいその手を見て、瑠可の中から篠崎の精液が全て出し切るまで必死に耐えた。


バスタオルで濡れた服を拭きながらうちに連れて帰ると言うと、瑠可はあっさり了承した。
ホテルの前に待機しているタクシーに、濡れた服のまま乗り込もうとしたら運転手に嫌な顔をされた。
とりあえずホテルでもらったゴミ袋を敷いてその上に座り、運転手には少し多めに代金を支払うと文句は言われることはなかった。
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