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番外編 瑠可/楓
番外編 Luka-1
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ボクは最近おかしい。
ボクがというより、ボクに関わってくる楓兄がおかしいのかもしれない。
皇貴先輩に振られた時、楓兄が慰めてくれた。
それは偶然だった。
それから何度か街中で楓兄と遭遇した。
ボクのお気に入りのカフェで、尽くボクのデートの邪魔をした。
デートの相手はみんなベータのセフレで、最近はエッチのないデートしかしてない。
なんでか分からないけど、楓兄に慰めてもらった日から、ボクは誰ともする気にはなれなくなった。
だから連絡が来た人に「エッチなしのデートでいい?」て返信して、それでもいいと言ってくれた人とばかりデートした。
ただ、カフェで休憩していると「次、ホテルに行こう」ってしつこく言う人もいた。
そんな時、楓兄が現れて追い払ってくれた。
それが不思議でならなかった。
「楓兄はなんでボクを助けてくれるの?」
ある日、聞いてみた。
「なんでだと思う?」
「質問してるのはボクだよ」
「んー、瑠可のことが好きだからって言ったらどうする?」
射抜くように真っ直ぐな目で見られて、思わず目を逸らしてしまった。
「じょ、冗談だよね?」
「瑠可がそう思うなら、そうかもな……まだ」
ボクの胸がズシンと重くなった。
それからは、エッチなしのデートもしなくなった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
5月の後半。
発情期も終わったから、外出許可をもらって週末出かけた。
お気に入りのカフェに行ったら、また楓兄に会えるかなってちょっとだけ期待した。
けど、カフェに着く前、ボクは二度と会いたくない男ー田幡ーと遭遇し、人気のないビルの裏に連れ込まれた。
「なんで会ってくれないんだ。俺、瑠可のこと本気で好きなんだよっ……」
「は、離してください。……今更、何言ってるの?」
ボクの腕を掴む手は強くて痛い。
アルファの圧が怖くて逃げたいのに、身体が竦み上がって思うように動けない。
震えるボクを気遣うことなく、田幡さんは迫ってくる。
「あの頃とは違う。お前のこと本気でーー」
「やめてっ!……今も…前も、ボクはあなたのことは好きじゃない」
「っ……アイツか。最近、瑠可の周りをウロチョロしてる奴。何、アイツの番になる約束したのか?………ならやっぱり、お前もそういう奴じゃねぇかよ」
田幡はボクの服を捲り上げた。
剥き出しになった肌を荒っぽく撫でる手が気持ち悪くて、すごく怖い。
「やだって。ほ、本当に止めてよっ」
「……これで本当に最後にしてやるから、させろよ。瑠可の中にたっぷり注いでやる」
ベルトに手を掛けられたその時。
「そこで何をしてる」
「!」
そこに現れたのは楓兄じゃなかった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
彼は篠崎春樹さん。
会社勤めの32歳のアルファ。
20代と言われたら信じちゃうくらい若くてカッコいい。
偶々通りかかったら揉めてる声が聞こえて行った先にボクたちがいた。
田幡さんは篠崎さんの迫力に圧倒されて逃げだ。
篠崎さんは震えるボクの手を優しく取ってくれ頭を撫でてくれた。
少しだけ恐怖心が薄まった気がした。
だからボクは篠崎さんに助けてくれたお礼をさせて欲しいと言ったけど断られた。
その代わり、お茶に付き合って欲しいと言われたから、お気に入りのカフェに案内した。
篠崎さんはやることなすことスマートで、「僕は社会人だからね」とボクの分のお茶代も払ってくれた。
お店を出て別れる時、ボクは篠崎さんと連絡先を交換した。
その日、楓兄には会えなかった。
____________________
瑠可と楓の話になります。
約2週間お付き合い、よろしくお願いします。
ボクがというより、ボクに関わってくる楓兄がおかしいのかもしれない。
皇貴先輩に振られた時、楓兄が慰めてくれた。
それは偶然だった。
それから何度か街中で楓兄と遭遇した。
ボクのお気に入りのカフェで、尽くボクのデートの邪魔をした。
デートの相手はみんなベータのセフレで、最近はエッチのないデートしかしてない。
なんでか分からないけど、楓兄に慰めてもらった日から、ボクは誰ともする気にはなれなくなった。
だから連絡が来た人に「エッチなしのデートでいい?」て返信して、それでもいいと言ってくれた人とばかりデートした。
ただ、カフェで休憩していると「次、ホテルに行こう」ってしつこく言う人もいた。
そんな時、楓兄が現れて追い払ってくれた。
それが不思議でならなかった。
「楓兄はなんでボクを助けてくれるの?」
ある日、聞いてみた。
「なんでだと思う?」
「質問してるのはボクだよ」
「んー、瑠可のことが好きだからって言ったらどうする?」
射抜くように真っ直ぐな目で見られて、思わず目を逸らしてしまった。
「じょ、冗談だよね?」
「瑠可がそう思うなら、そうかもな……まだ」
ボクの胸がズシンと重くなった。
それからは、エッチなしのデートもしなくなった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
5月の後半。
発情期も終わったから、外出許可をもらって週末出かけた。
お気に入りのカフェに行ったら、また楓兄に会えるかなってちょっとだけ期待した。
けど、カフェに着く前、ボクは二度と会いたくない男ー田幡ーと遭遇し、人気のないビルの裏に連れ込まれた。
「なんで会ってくれないんだ。俺、瑠可のこと本気で好きなんだよっ……」
「は、離してください。……今更、何言ってるの?」
ボクの腕を掴む手は強くて痛い。
アルファの圧が怖くて逃げたいのに、身体が竦み上がって思うように動けない。
震えるボクを気遣うことなく、田幡さんは迫ってくる。
「あの頃とは違う。お前のこと本気でーー」
「やめてっ!……今も…前も、ボクはあなたのことは好きじゃない」
「っ……アイツか。最近、瑠可の周りをウロチョロしてる奴。何、アイツの番になる約束したのか?………ならやっぱり、お前もそういう奴じゃねぇかよ」
田幡はボクの服を捲り上げた。
剥き出しになった肌を荒っぽく撫でる手が気持ち悪くて、すごく怖い。
「やだって。ほ、本当に止めてよっ」
「……これで本当に最後にしてやるから、させろよ。瑠可の中にたっぷり注いでやる」
ベルトに手を掛けられたその時。
「そこで何をしてる」
「!」
そこに現れたのは楓兄じゃなかった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
彼は篠崎春樹さん。
会社勤めの32歳のアルファ。
20代と言われたら信じちゃうくらい若くてカッコいい。
偶々通りかかったら揉めてる声が聞こえて行った先にボクたちがいた。
田幡さんは篠崎さんの迫力に圧倒されて逃げだ。
篠崎さんは震えるボクの手を優しく取ってくれ頭を撫でてくれた。
少しだけ恐怖心が薄まった気がした。
だからボクは篠崎さんに助けてくれたお礼をさせて欲しいと言ったけど断られた。
その代わり、お茶に付き合って欲しいと言われたから、お気に入りのカフェに案内した。
篠崎さんはやることなすことスマートで、「僕は社会人だからね」とボクの分のお茶代も払ってくれた。
お店を出て別れる時、ボクは篠崎さんと連絡先を交換した。
その日、楓兄には会えなかった。
____________________
瑠可と楓の話になります。
約2週間お付き合い、よろしくお願いします。
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