30 / 78
本編
3月 ①
しおりを挟む
あれからオレは神凪先生をできる限り避け続けた。
呼ばれたらクラスメイトを無理矢理引っ張って行った。
あの人と2人っきりになるのが怖かった。
顔を見る度に起きる頭痛もどんどん酷くなってきてるのも理由だ。
3月の頭は期末試験があり、先生との接触が限りなくなくなり、初めて試験期間に感謝した。
でも、試験の翌週末は卒業式だ。
その日を過ぎると、先輩たちと学園内で会うことがなくなる。
そんなことを考える度、胸にポッカリ空いたような喪失感に視界がボヤける。
オレはもしかしたら先輩のことを…。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
卒業式当日。
在校生はその儀式を遠くから見るだけだ。
「結季くん、そろそろ移動だって」
「ああ、うん」
ゾロゾロと移動する人の波に乗り講堂に向かう。
1年生にとっては2年後の儀式だし、何度も予行練習をしたから、特に緊張もなくガヤガヤ喋りしながら移動してる。
まあ、今日の主役は3年生で、他人事感の方が強いからかもしれない。
「あ、結季くん」
「瑠可、どうした?」
「ボク、おトイレ行きたくなっちゃった」
コラッ、ウッカリしすぎだ。
そう言いつつ、瑠可に付き添ってオメガ用のトイレに行く。
ついでにオレも済ませて廊下に出ると、もう生徒は誰もいなかった。
「瑠可、急ごう」
「うん」
廊下を走り、階段を駆け降りると、階下から人が現れ、オレはギクリとした。
「あ、神凪先生」
「まだ時間に余裕がありますから、慌てないで大丈夫ですよ」
「はーい」
微笑む先生に瑠可は笑顔を向けるが、オレは背筋に寒気が走って笑えない。
「失礼します」
階段を駆け降り、踊り場にいる先生の横を通り抜ける。
「結季くん、待ってぇ」
残り3段のところで、後ろからオレを慌てて追いかける瑠可の声にハッとして振り返る。
「瑠可、ごめっ、置いてっ、た…」
「…?…結季くん、どうしたの?」
首を傾げて聞く瑠可の後ろにいた先生の微笑みが、オレには残虐な笑顔に見えた。
その笑顔に見覚えがある。
あれは…いつだ?
「瑠可、急ごう」
「結季くーーえ…?」
瑠可の体が宙に浮いたと思ったら、オレの目の前に落ちてきた。
視界の隅で手を突き出し微笑む先生が見えた。
「うわっ」
ドンっと瑠可を抱えたオレは背中から倒れ、一瞬息が詰まった。
ぶつけた背中が痛くて起き上がれない。
頭もぶつけたようで痛い。
「結季くん!結季くん!…あ、血が…」
耳に生暖かいものが伝う。
視線を動かすと赤い液体が見えた。
トントンとリズミカルに階段を降りる足音がする。
その人を無意識に呼んだ。
「ぁ……清暙、兄さん…」
「結季、思い出したのか……」
「思い出したって、えっ、何?」
パニックになっている瑠可を見下ろす先生は「邪魔だ」と瑠可を蹴り飛ばした。
「る、か…」
背中の痛みに耐え起きあがろうとするオレの腕を掴んだ先生は、そのままオレを引っ張り上げた。
「さあ家に帰ろうか、結季」
腹に衝撃が走り、オレの意識は途切れた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
あの日。
オレを取り囲む人の視線が刺さる。
「結季はオメガかもしれないとは誠か?よくやった!ならば、番は次の当主である清暙、お前だ」
「はい、お祖父様」
中心で会話を交わし残虐な笑顔を向ける2人の視線に恐怖で竦み上がる。
涙を流し震えるオレを誰かが抱きしめた。
「ゆうは道具じゃない」
誰かが叫んだ。
だけど……。
「決めるのはお前ではない。現当主である、このわしだ」
オレはオレを止める声を無視して家を飛び出した。
あの子が待つ約束の場所へ……。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
頬を撫でる冷んやりとした空気に意識が覚醒する。
見知らぬ木の天井がそこにあった。
横を見ようと首を動かすと、頭に痛みが走った。
「痛っ……え……何これ…?」
そこには格子状に組まれた木が見えた。
それはまるで…
「牢…屋?」
呼ばれたらクラスメイトを無理矢理引っ張って行った。
あの人と2人っきりになるのが怖かった。
顔を見る度に起きる頭痛もどんどん酷くなってきてるのも理由だ。
3月の頭は期末試験があり、先生との接触が限りなくなくなり、初めて試験期間に感謝した。
でも、試験の翌週末は卒業式だ。
その日を過ぎると、先輩たちと学園内で会うことがなくなる。
そんなことを考える度、胸にポッカリ空いたような喪失感に視界がボヤける。
オレはもしかしたら先輩のことを…。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
卒業式当日。
在校生はその儀式を遠くから見るだけだ。
「結季くん、そろそろ移動だって」
「ああ、うん」
ゾロゾロと移動する人の波に乗り講堂に向かう。
1年生にとっては2年後の儀式だし、何度も予行練習をしたから、特に緊張もなくガヤガヤ喋りしながら移動してる。
まあ、今日の主役は3年生で、他人事感の方が強いからかもしれない。
「あ、結季くん」
「瑠可、どうした?」
「ボク、おトイレ行きたくなっちゃった」
コラッ、ウッカリしすぎだ。
そう言いつつ、瑠可に付き添ってオメガ用のトイレに行く。
ついでにオレも済ませて廊下に出ると、もう生徒は誰もいなかった。
「瑠可、急ごう」
「うん」
廊下を走り、階段を駆け降りると、階下から人が現れ、オレはギクリとした。
「あ、神凪先生」
「まだ時間に余裕がありますから、慌てないで大丈夫ですよ」
「はーい」
微笑む先生に瑠可は笑顔を向けるが、オレは背筋に寒気が走って笑えない。
「失礼します」
階段を駆け降り、踊り場にいる先生の横を通り抜ける。
「結季くん、待ってぇ」
残り3段のところで、後ろからオレを慌てて追いかける瑠可の声にハッとして振り返る。
「瑠可、ごめっ、置いてっ、た…」
「…?…結季くん、どうしたの?」
首を傾げて聞く瑠可の後ろにいた先生の微笑みが、オレには残虐な笑顔に見えた。
その笑顔に見覚えがある。
あれは…いつだ?
「瑠可、急ごう」
「結季くーーえ…?」
瑠可の体が宙に浮いたと思ったら、オレの目の前に落ちてきた。
視界の隅で手を突き出し微笑む先生が見えた。
「うわっ」
ドンっと瑠可を抱えたオレは背中から倒れ、一瞬息が詰まった。
ぶつけた背中が痛くて起き上がれない。
頭もぶつけたようで痛い。
「結季くん!結季くん!…あ、血が…」
耳に生暖かいものが伝う。
視線を動かすと赤い液体が見えた。
トントンとリズミカルに階段を降りる足音がする。
その人を無意識に呼んだ。
「ぁ……清暙、兄さん…」
「結季、思い出したのか……」
「思い出したって、えっ、何?」
パニックになっている瑠可を見下ろす先生は「邪魔だ」と瑠可を蹴り飛ばした。
「る、か…」
背中の痛みに耐え起きあがろうとするオレの腕を掴んだ先生は、そのままオレを引っ張り上げた。
「さあ家に帰ろうか、結季」
腹に衝撃が走り、オレの意識は途切れた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
あの日。
オレを取り囲む人の視線が刺さる。
「結季はオメガかもしれないとは誠か?よくやった!ならば、番は次の当主である清暙、お前だ」
「はい、お祖父様」
中心で会話を交わし残虐な笑顔を向ける2人の視線に恐怖で竦み上がる。
涙を流し震えるオレを誰かが抱きしめた。
「ゆうは道具じゃない」
誰かが叫んだ。
だけど……。
「決めるのはお前ではない。現当主である、このわしだ」
オレはオレを止める声を無視して家を飛び出した。
あの子が待つ約束の場所へ……。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
頬を撫でる冷んやりとした空気に意識が覚醒する。
見知らぬ木の天井がそこにあった。
横を見ようと首を動かすと、頭に痛みが走った。
「痛っ……え……何これ…?」
そこには格子状に組まれた木が見えた。
それはまるで…
「牢…屋?」
16
あなたにおすすめの小説
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる