ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第66話

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 僕は今、ヴェルドンさんから鍛治のことを学んでいます。

僕のジョブの特性上、ガンダルク師匠からは作業中はできるだけ席を外して下さっていたので、スキルは覚えやすかったのですが、細かい教えまで受けることができませんでした。

しかしヴェルドンさんから学び始めて分かったことですが、幽霊であるヴェルドンさんが傍にいても経験値のデメリットで10分の1になることもなく、普通通り10倍の速度で経験を積めることが分かりました。


世界、もしくは神様は幽霊を個としての存在として認められていないのでしょうか?


 とはいうものの、その恩恵で今僕はかつてないほどの師弟の関係で教えを請うことができています。


「ロン、お主は本当に筋がよいな!儂の教えをみるみる吸収するだけでなく、スキルまで10倍の速度で成長を遂げる。

これならば、1年もあれば生前の儂を越える鍛治士になれるやもしれんぞ!」


「ありがとうございます。それまでにはシャーマンのスキルも上げられるように努力しておきます。」


 ヴェルドンさんと一緒にいることで霊視のスキルだけはどんどん上がっていっています。

以前はかなりうっすらとしか見えなかった姿も今ではかなりハッキリとした姿として見ることができるようになりました。


 霊視と共に覚えた霊化のスキルは、死体から魂を分離し、霊として一時的に実体化させ使役し、話をすることができるスキルでした。

しかし、このスキルを使うには幾つかの条件があります。

まずはその死体が新しいこと。死体となって時間が経つと、魂が死体からいなくなってしまいスキルを使っても効果がなくなります。

そしてたとえ魂が残っていたとしても、霊化で呼び出した霊には生前の記憶がそのまま残っている為、敵対した相手を霊化しても、全然言うことを聞いてくれません。


 倒した魔物に使ってみると、その霊は僕に強い殺気を込めて唸るだけでした。さすがにスキルの使用者に攻撃することはできないようでしたが、これでは何の役にも立ちそうにないです。

 それでもヴェルドンさんとの約束があるので、スキルのレベルを上げる為にも朝の日課中に倒した魔物には使うようにしています。正直、殺しておいて用もなく霊化させるのは罪悪感を覚える行為なのですけど…

その甲斐あってなのか、スキルのレベルは確実に上がってきています。


 霊化した霊そのものは一定時間が経過すると再び体に戻るようで、多少は移動できるようでしたが自分の死体からは大きく離れることはできないようでした。

スキルレベルが上がるとこの霊化する時間が長くなるようですが、試しにもう一度同じ死体に霊化のスキルを使用しても反応はありませんでした。1つの死体に対して霊化は一回限りのようです。

実験の為にニコルの前で霊化使いましたが、霊の姿は霊視のスキルのないニコルにはやはり見ることはできませんでした。

しかし霊の発する唸り声は、スキルを持たない人にもどうやら聞こえるようで、今のところ使い道は思い付きませんが、そのうち何かの役に立てられる機会があるかもしれないと思いました。

 まさかほんの半年後、このスキルが僕の命を救うことになるとは思いもよらなかったです。



 それは僕がいつものように鍛治場で作業をしていたときに起こりました。


「ご主人様は現在鍛治場で作業中です!いくら騎士の方々でも勝手に中に入られては困ります!私が声を掛けてきますので、広間で少々お待ち下さいませ!!」


慌てた声のナルディスの声が聞こえてきます。


ナルディスは、レナが自分の相手に選んで契約したイケメンのエルフの性奴隷です。レナはきちんと屋敷の仕事のことも考えてくれたらしく、土魔法を得意とする庭師のナルディスを選びました。よく働く寡黙な青年で、仕事をきちんとしてもらえるので僕もエリスも気に入ってます。

最初の頃はよくレナからナルディスとの性行為の許可を求められてましたが、最近は滅多に求められなくなりました。レナは飽きっぽいのかな?


と話が逸れてしまいましたが、何かあったようです。


「ナルディス?どうかしましたか?」


 僕が鍛治場の外に出ると、ナルディスが扉の前で騎士の方々を説得してるところでした。


「ご主人様!お騒がせしてすいません。この方たちが話を聞こうともしてくれないのです。」


騎士の方々の代表の方が無理やりナルディスを横に吹き飛ばし、そのまま僕に迫ってきました。


「お前がロンだな!?お前にアリス·マリー·サファリニア様殺害を企てた首謀者として疑いがかかっている!!さらにお前には彼女の侍女であるマレンダ·イライザーの殺害の疑いも掛けられている!!

我々は、抵抗するようならばこの場でお前を斬る許可も得ている。大人しくついてきてもらおう!」


「えっ?どういうことですか?まさか…マレンダさんが殺されたのですか!?」


 僕は驚きました!!昨日、いつものように王宮に訪れ2人に魔法を教えたばかりだったのです。その時には特に何も異変は感じられませんでした。

それが何故、突然マレンダさんが殺され、その犯人として僕が疑われているのでしょう?


「僕は何も悪いことはしてません。素直についていきますので、案内して下さい!」


 僕が先頭の騎士の後ろについていくと、僕を囲むように残りの騎士が配置し、間髪入れずに全員で僕に斬りかかってきました。

僕は気配感知ですぐにそのことに気づき、慌てて避けました。何ヵ所か軽く斬られましたが、致命傷は防げました。


「いきなり何をするんですか!?」


「ちっ!避けやがったか!!お前は俺たちに抵抗してきたから、この場で死ぬことになるんだ!!騒がれたら面倒だ!さっさと殺るぞ!!!」


「あなたたちは一体何を考えてるんですか!?」


そこからの騎士たちは技まで使って本気で僕を殺しにかかってきました。


「流星斬!」
「烈波斬!」
「空裂斬!」


 次々と剣技の数々が僕に襲いかかってきます。しかし、騎士たちのレベルはそれほど高くないようで、それぞれがBランク冒険者程度の動きです。それでも連携は取れているので面倒ですが、僕は1人ずつ殺さないように素手と魔法でいなしていきました。


「空気投げ!」


この半年間で新たに覚えた格闘技です。相手の力を利用して、相手を空気のように抵抗なく投げることが可能となります。


「ぐあっ!」
「ごふっ!」


投げる先を他の騎士がいるところを狙い、お互いにぶつけてあげます。それに驚いた騎士たちの連携に僅かな隙が生まれたところで一気に無力化してしまいます。


「ダークミスト!シャドウバインド!」


僕の放った闇属性魔法で周りは暗闇の霧に覆われ、地面からは多くの闇の手が騎士たちを捕らえていきます。


「何だこれは!?」
「動けない!!」


騎士たちはここでようやく自分達が敗れたことを把握し始め、余裕の仮面が外れていきました。


「あなたたちは本当に騎士なのですか?人の屋敷に無理矢理押し入って、暴れて…行為だけをみればただの強盗ですよ!!僕にこのまま殺されても何ら文句は言えませんよ!!!」


「待て!我々が悪かった!殺さないでくれ!!

我々はお前を殺すよう命令を受けただけなのだ。」


「誰かに命を狙われるような記憶がないのですが…一体誰が僕を殺すように命令をしたんですか?」


「それは言えない!それを言えば、我々はどちらにしろ殺されることになる…勝手なことを言ってることは分かってる。答えられることは全て答えるからそれで許してくれないか?」


「本当にずいぶんと勝手な物言いですね…でも答えられることを全て答えれば、殺さないことを約束しましょう。

まず始めに、本当にマレンダさんは死んだのですか?」


「それは嘘ではない!そして、その犯人と思われてるのがお前であることも本当だ!!」


「そこが分かりません。何故僕が殺したと思われてるのですか?」


「それは簡単な話だ!お前が2人に渡した魔力回復薬に、強力な毒が入れられていたからだ!!

マレンダ·イライザーはその毒入りの魔力回復薬を飲み、死んだのだ!!」


「そんなバカな!魔力回復薬は確かに渡しましたが、僕はそんな物入れてません!何かの間違いです!!」


 昨日も渡す直前に1つずつきちんと鑑定をしてから渡したので、それは間違いないです。

ということは、その後魔力回復薬をすり替えられたということなのでしょう。


 これは思っている以上に厄介な状況かもしれません。僕自身はそんなことをしてないのも分かってますし、昨日渡して以降すり替えられたのだろうとも予想ができます。

しかし、それを証明する手段が僕にはあるのでしょうか?状況だけでいえば完全に僕が犯人です。。


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