23 / 29
中原から遠く離れて
しおりを挟む
兄さん、と呼ばれて目を覚ました。
暗闇の中、澄んだ高い声のする方へ手を伸ばし、指先に触れた細い髪を撫でる。
兄さん
そう呼びながら、仰向けに横たわる永芳の上に乗る体はとても軽くて、くすぐったいくらいだ。
小さな体を目一杯伸ばして、柔らかい舌が唇の間に入り込む。乳臭いような甘ったるい味に驚いた永芳は顔を背けようとするが、硬直したように動けない。
永芳が何も言えないのをいいことに、小さな舌は口の中を舐め、首筋を吸い、はだけた胸をしゃぶった。
駄目だ、やめなさい、と口を開こうとするのに、声が出ない。
骨ばった細い指が尻のあわいを撫で、ゆっくりと中に入ってくる。思わず腰を浮かせて震えると、いつの間にか硬くなっていた陰茎を吸われた。
小さな口で先端を頬張りながら尻の中を弄られ、永芳は弓なりに仰け反った。駄目だと思うのに、か細い指を飲み込もうと腰が揺れる。
兄さん
食い締めていた指が抜かれて、ひくひくと穴が収縮する。切なさに腰を揺らしていると、健気に勃ち上がった幼い陰茎を当てがわれる。止める間もなく挿入されて、永芳は隙間を埋められた悦びと同時に、罪深さに震えた。
雪児、
やめなさい、と続けるつもりが言葉が継げず、ただ余雪を求めているみたいに名前を呼んだ。
まだ精通を迎えていない陰茎は、達してもぴくぴくと震えるだけで萎えることなく、永芳の中を甘く擦り続ける。
余雪は、永芳の立てた膝にしがみつきながら、一途に腰を振った。
弟子であり、実の子のように世話を焼いてきた余雪に凌辱されて、悲しいのに体は反応してしまう。
「雪児、駄目だ……お願いだから──……」
ハッと目が覚めて、永芳は喘ぐように息を吐いた。暗闇の中で、自らの激しく動悸する胸の音が響く。
おそるおそる股間に手を伸ばすと、そこは熱く勃ち上がっていた。
ぎゅっと目を瞑り、呼吸を整える。早く眠りに落ちてさっきの夢は忘れなければと思うのに、体の奥が甘く疼いて無意識に腰が揺れる。
我慢できずに陰茎をさすると、先走りが雫となって零れ落ちた。こんなことをしてはいけないと思うほど、後ろめたい快感が込み上げてくる。
永芳は陰茎を扱きながら、背中側からまわしたもう一方の手で、夢と同じように尻のあわいを撫でた。窄まりを弄ると、物欲しそうに陰茎が揺れる。
おずおずと指先を挿入すれば、本当に幼い陰茎が入ってくるみたいで、罪悪感で涙が溢れた。
でもこれは、ただの夢だ。
絶対に現実には起こらない、たった一人で見る夢なのだから許して欲しいと、誰に請うでもなく願いながら、永芳は声を殺して吐精した。
痛いほど冷え切った朝の空気を吸い込むと、肺の中まで凍りつきそうになる。
ゲル(遊牧民の移動式住居)から出ると、すでに家畜の世話を始めている者たちから、笑顔で挨拶をされた。永芳もまた、蒙古の言葉で挨拶を返す。
これから食事の支度をし、家族で朝食を摂るのだろう。
永芳は賑やかな団欒をすり抜けて、馬の元へ行った。
朝日が煌めく中、凍てついた風が馬の尾と鬣を靡かせて吹き抜けていく。中原(漢民族の中心地)から遠く離れて六年が経つが、この気候には未だに慣れない。
遮る物のない平原を走る永芳の胸に浮かぶのは、最期の日の前夜、宿屋で覆い被さってきた余雪のことだった。
子供だと思っていた余雪が初めて見せた大人の表情に、今でも動揺する。弟であり子でもある余雪と情交に及ぶなど、あってはならないことだ。
でももし、あの時結ばれていたら……せめて最期に、余雪の思うようにしてやれていたら……
身を切るような冷たい風に当たっても、永芳の鬱々とした気持ちは晴れなかった。
見渡す限り続く草枯れの風景の中にいると、たった一人、大海原に放り出されたような気持ちになる。
この異国には、永芳を知る者は一人もいない。自ら望んでここへ来たはずなのに、何もない草原にいると、どうしようもない淋しさと不安が込み上げてくる。
視界の端に、鹿が草を喰む姿が見えた。
一人ぼっちでこの世界に取り残されたわけじゃないことに、永芳はほっと息を吐いた。
気持ちを切り替えて、馬を走らせたまま鐙の上で立ち上がる。弓を構えると、狙いを定めて弦を引き絞った。
その時、遥か向こうから一騎の人馬がこちらにやって来るのに気づいた。
先日、部族間の諍いや、家畜の略奪が増えているという話を聞いたばかりだった。警戒した永芳は弓を構えたまま、目を凝らして馬上の人物を見つめる。
本当は、見た瞬間にわかっていた。
そこにいるという空気を、はっきりと感じる。でも、確かめるのが怖い。鼓動が高まり、胸が苦しい。
まさかそんな、と何度も心の中で否定する。信じて期待した後に失望すれば、今度こそもう生きていたくないと思うかもしれない。
早くその姿をちゃんと見たいのに、近づくのが怖くて手綱を引いた。
迫る蹄の音に、胸の鼓動が重なる。
永芳は馬から降りると、その人の元へ歩き出した。馬で向かった方が早いのに、冷静に考えられない。
はやる気持ちに、永芳は足を引きずって走り出した。
青年は馬を走らせながら体を横に傾けると、すれ違う勢いのまま片腕で永芳の腰を抱いて、馬上に引き上げた。
「雪児……!」
永芳は目の前の顔を両手でべたべたと撫でて抱き寄せた。
「兄さん、動かないで! 落ちるから待っ──!」
永芳と余雪は縺れ合ったまま、馬から落ちた。背中を強かに打って呻くが、幸い二人とも体は丈夫なので、怪我もない。
「雪児……! ああっ! 雪児……!!」
ずっと待ち焦がれていた再会だったが、予想外に永芳が取り乱す様を見て、余雪は冷静さを取り戻していた。
「はい、余雪です。兄さんはお変わりないですか」
永芳は、余雪の顔をじっと見つめて何度も頷いた。
「ああ……わたしは大丈夫だ……お前が元気なら、わたしは……」
永芳は言葉に詰まると余雪を抱きしめ、涙で濡れた顔を肩口に埋めた。
いつも理性的だった永芳の、初めて見る姿だった。
「永芳兄さん」
余雪が名前を呼ぶと、永芳は恥じらうように目を伏せて顔を上げた。
抜けるように白かった肌は日に焼けて、赤い頬にそばかすが浮いている。
思い出の中の永芳より幼く見えたが、褒め言葉ではないと思って余雪は何も言わず、ただ微笑んでみせた。
暗闇の中、澄んだ高い声のする方へ手を伸ばし、指先に触れた細い髪を撫でる。
兄さん
そう呼びながら、仰向けに横たわる永芳の上に乗る体はとても軽くて、くすぐったいくらいだ。
小さな体を目一杯伸ばして、柔らかい舌が唇の間に入り込む。乳臭いような甘ったるい味に驚いた永芳は顔を背けようとするが、硬直したように動けない。
永芳が何も言えないのをいいことに、小さな舌は口の中を舐め、首筋を吸い、はだけた胸をしゃぶった。
駄目だ、やめなさい、と口を開こうとするのに、声が出ない。
骨ばった細い指が尻のあわいを撫で、ゆっくりと中に入ってくる。思わず腰を浮かせて震えると、いつの間にか硬くなっていた陰茎を吸われた。
小さな口で先端を頬張りながら尻の中を弄られ、永芳は弓なりに仰け反った。駄目だと思うのに、か細い指を飲み込もうと腰が揺れる。
兄さん
食い締めていた指が抜かれて、ひくひくと穴が収縮する。切なさに腰を揺らしていると、健気に勃ち上がった幼い陰茎を当てがわれる。止める間もなく挿入されて、永芳は隙間を埋められた悦びと同時に、罪深さに震えた。
雪児、
やめなさい、と続けるつもりが言葉が継げず、ただ余雪を求めているみたいに名前を呼んだ。
まだ精通を迎えていない陰茎は、達してもぴくぴくと震えるだけで萎えることなく、永芳の中を甘く擦り続ける。
余雪は、永芳の立てた膝にしがみつきながら、一途に腰を振った。
弟子であり、実の子のように世話を焼いてきた余雪に凌辱されて、悲しいのに体は反応してしまう。
「雪児、駄目だ……お願いだから──……」
ハッと目が覚めて、永芳は喘ぐように息を吐いた。暗闇の中で、自らの激しく動悸する胸の音が響く。
おそるおそる股間に手を伸ばすと、そこは熱く勃ち上がっていた。
ぎゅっと目を瞑り、呼吸を整える。早く眠りに落ちてさっきの夢は忘れなければと思うのに、体の奥が甘く疼いて無意識に腰が揺れる。
我慢できずに陰茎をさすると、先走りが雫となって零れ落ちた。こんなことをしてはいけないと思うほど、後ろめたい快感が込み上げてくる。
永芳は陰茎を扱きながら、背中側からまわしたもう一方の手で、夢と同じように尻のあわいを撫でた。窄まりを弄ると、物欲しそうに陰茎が揺れる。
おずおずと指先を挿入すれば、本当に幼い陰茎が入ってくるみたいで、罪悪感で涙が溢れた。
でもこれは、ただの夢だ。
絶対に現実には起こらない、たった一人で見る夢なのだから許して欲しいと、誰に請うでもなく願いながら、永芳は声を殺して吐精した。
痛いほど冷え切った朝の空気を吸い込むと、肺の中まで凍りつきそうになる。
ゲル(遊牧民の移動式住居)から出ると、すでに家畜の世話を始めている者たちから、笑顔で挨拶をされた。永芳もまた、蒙古の言葉で挨拶を返す。
これから食事の支度をし、家族で朝食を摂るのだろう。
永芳は賑やかな団欒をすり抜けて、馬の元へ行った。
朝日が煌めく中、凍てついた風が馬の尾と鬣を靡かせて吹き抜けていく。中原(漢民族の中心地)から遠く離れて六年が経つが、この気候には未だに慣れない。
遮る物のない平原を走る永芳の胸に浮かぶのは、最期の日の前夜、宿屋で覆い被さってきた余雪のことだった。
子供だと思っていた余雪が初めて見せた大人の表情に、今でも動揺する。弟であり子でもある余雪と情交に及ぶなど、あってはならないことだ。
でももし、あの時結ばれていたら……せめて最期に、余雪の思うようにしてやれていたら……
身を切るような冷たい風に当たっても、永芳の鬱々とした気持ちは晴れなかった。
見渡す限り続く草枯れの風景の中にいると、たった一人、大海原に放り出されたような気持ちになる。
この異国には、永芳を知る者は一人もいない。自ら望んでここへ来たはずなのに、何もない草原にいると、どうしようもない淋しさと不安が込み上げてくる。
視界の端に、鹿が草を喰む姿が見えた。
一人ぼっちでこの世界に取り残されたわけじゃないことに、永芳はほっと息を吐いた。
気持ちを切り替えて、馬を走らせたまま鐙の上で立ち上がる。弓を構えると、狙いを定めて弦を引き絞った。
その時、遥か向こうから一騎の人馬がこちらにやって来るのに気づいた。
先日、部族間の諍いや、家畜の略奪が増えているという話を聞いたばかりだった。警戒した永芳は弓を構えたまま、目を凝らして馬上の人物を見つめる。
本当は、見た瞬間にわかっていた。
そこにいるという空気を、はっきりと感じる。でも、確かめるのが怖い。鼓動が高まり、胸が苦しい。
まさかそんな、と何度も心の中で否定する。信じて期待した後に失望すれば、今度こそもう生きていたくないと思うかもしれない。
早くその姿をちゃんと見たいのに、近づくのが怖くて手綱を引いた。
迫る蹄の音に、胸の鼓動が重なる。
永芳は馬から降りると、その人の元へ歩き出した。馬で向かった方が早いのに、冷静に考えられない。
はやる気持ちに、永芳は足を引きずって走り出した。
青年は馬を走らせながら体を横に傾けると、すれ違う勢いのまま片腕で永芳の腰を抱いて、馬上に引き上げた。
「雪児……!」
永芳は目の前の顔を両手でべたべたと撫でて抱き寄せた。
「兄さん、動かないで! 落ちるから待っ──!」
永芳と余雪は縺れ合ったまま、馬から落ちた。背中を強かに打って呻くが、幸い二人とも体は丈夫なので、怪我もない。
「雪児……! ああっ! 雪児……!!」
ずっと待ち焦がれていた再会だったが、予想外に永芳が取り乱す様を見て、余雪は冷静さを取り戻していた。
「はい、余雪です。兄さんはお変わりないですか」
永芳は、余雪の顔をじっと見つめて何度も頷いた。
「ああ……わたしは大丈夫だ……お前が元気なら、わたしは……」
永芳は言葉に詰まると余雪を抱きしめ、涙で濡れた顔を肩口に埋めた。
いつも理性的だった永芳の、初めて見る姿だった。
「永芳兄さん」
余雪が名前を呼ぶと、永芳は恥じらうように目を伏せて顔を上げた。
抜けるように白かった肌は日に焼けて、赤い頬にそばかすが浮いている。
思い出の中の永芳より幼く見えたが、褒め言葉ではないと思って余雪は何も言わず、ただ微笑んでみせた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
高級娼館の少年オーナーはカタブツ騎士団長を抱きたい。
雲丹はち
BL
――王国最大の娼館が違法な奴隷売買に関わっている。
その情報を得た騎士団長ゼル・ライコフは高級娼館に客として潜入する。
「ゲームをしよう。ぼくと君、イッた回数で勝負するんだ。簡単だろう?」
しかし少年オーナー、エルシャが持ちかけた勝負を断り切れず……!?
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
父の男
上野たすく
BL
*エブリスタ様にて『重なる』というタイトルで投稿させていただいているお話です。ところどころ、書き直しています。
~主な登場人物~渋谷蛍(しぶや けい)高校二年生・桜井昭弘(さくらい あきひろ)警察官・三十五歳
【あらすじ】実父だと信じていた男、桜井が父の恋人だと知ってから、蛍はずっと、捨てられる恐怖と戦っていた。ある日、桜井と見知らぬ男の情事を目にし、苛立ちから、自分が桜井を好きだと自覚するのだが、桜井は蛍から離れていく。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる