154 / 224
エピソード24
命の雫(2)
しおりを挟む
「え? あれ? うそ、なんで噛んで……って、食べてる!?
ぎゃぁぁああっ、い、痛い! 痛いよ、ジルベール!!」
物凄い力で、彼は俺の肉を食い千切った。
血が噴き上がって、ガクガクと身体が震えた。
「いてぇえつってんだろうが!!
離せ、こらっ、あっ……クソ、いってぇえぇええ!」
悲鳴をあげながら、俺はジルベールがココに戻ってきた理由を理解した。
ゾクゾクした。
彼は彼の理論を証明すべく戻って来たのだ。
「じ、ジルベール様……っ!?」
処刑官の1人が、腰を抜かした。
当たり前だ。
死んだと思っていた上司が、死力を振り絞って動いたかと思ったら、
ヴァンパイアを食べ始めたんだもの。
更には、致命傷を負っていた身体が、みるみるうちに治っていく。
そんなの、俄には信じられないに違いない。
「あはは、痛い、痛い。あはは、あははははっ……!」
がっつくねえ、ジルベール。
俺はゴポゴポ血を吐きながら、声をあげて笑った。
ジルベール。ねえ、ジルベール。
その執念に免じて、あんたの夢に協力してあげるよ。
難しいことは分かんないけど、
あんたは人を永遠の存在にしたいんだろ?
俺にはそれが出来るから。
唇から、ゴロゴロと乾いた吐息がこぼれる。
俺の生きてきた、長い、長い人生はいつも愉快だった。
楽しくてたまらなかった。それは、俺の、俺だけの人生だ。
俺はそれに、とても満足していた。
でも、たまには誰かのために生きてみたっていいかもしれない。
何事も経験だと思うから。
ジルベールは情熱的に俺を求めた。
俺は、肉を殺がれ、骨を砕かれ、血を啜られ、
丸ごと彼のお腹に収まってしまった。
* * *
月の光が、木々の合間から微かに見える。
メティスの街から逃げ出して、2晩、
人狼はオレを抱えて走り続けていた。
冷たい夜風が頬を撫でる。
景色がもの凄い速度で後ろへ流れていく。
「ぐっ……」
山を2、3越えたところで、人狼の足がもつれ、
オレは地面に投げ出された。
「……っ!」
軋む体をなんとか持ち上げ人狼を見れば、
ヤツは膝をつき、苦しげに息を吐いていた。
その足元には、赤い血溜まりが出来ている。
「おい……っ、大丈夫か……?」
「うるさい……貴様よりマシだ」
「どこがだよ……
お前、ケガ治ってねぇじゃん……」
毒でも塗られていたのだろうか。
それにしても、治りが悪すぎる。
這うようにして寄れば、伸ばした手を思いきり叩き落とされた。
「気安く触るな」
「そんなこと言ってる場合か。
……休める場所、探してくる」
胸に去来する疑問と不安を飲み込んで、
オレは踵を返した。
「貴様は馬鹿か? なぜ、俺が貴様を抱えて走ったと思っている?」
「だから、俺が行くんだろ……
お前のケガをなんとかしねえと、すぐ追手に追いつかれちまう。
……そんなことも分からないくらい弱ってんのかよ?」
人狼が押し黙る。
オレは深く息を吸い込むと、今度こそ、森に分け入った。
来た道を忘れないように、目印を付けながら慎重に歩を進める。
身を隠せる洞窟や何やらがないか、目をこらした。
どこかで火を焚いて、
アイツのケガをちゃんと見なければ。
強がっているのは、すぐに分かった。
あのまま回復しなければ、命に関わるかもしれない。
オレは祈るような気持ちで、草の生い茂った獣道を進む。
――やがて、その祈りが通じたのか、
オレは打ち捨てられた村を見つけた。
ぎゃぁぁああっ、い、痛い! 痛いよ、ジルベール!!」
物凄い力で、彼は俺の肉を食い千切った。
血が噴き上がって、ガクガクと身体が震えた。
「いてぇえつってんだろうが!!
離せ、こらっ、あっ……クソ、いってぇえぇええ!」
悲鳴をあげながら、俺はジルベールがココに戻ってきた理由を理解した。
ゾクゾクした。
彼は彼の理論を証明すべく戻って来たのだ。
「じ、ジルベール様……っ!?」
処刑官の1人が、腰を抜かした。
当たり前だ。
死んだと思っていた上司が、死力を振り絞って動いたかと思ったら、
ヴァンパイアを食べ始めたんだもの。
更には、致命傷を負っていた身体が、みるみるうちに治っていく。
そんなの、俄には信じられないに違いない。
「あはは、痛い、痛い。あはは、あははははっ……!」
がっつくねえ、ジルベール。
俺はゴポゴポ血を吐きながら、声をあげて笑った。
ジルベール。ねえ、ジルベール。
その執念に免じて、あんたの夢に協力してあげるよ。
難しいことは分かんないけど、
あんたは人を永遠の存在にしたいんだろ?
俺にはそれが出来るから。
唇から、ゴロゴロと乾いた吐息がこぼれる。
俺の生きてきた、長い、長い人生はいつも愉快だった。
楽しくてたまらなかった。それは、俺の、俺だけの人生だ。
俺はそれに、とても満足していた。
でも、たまには誰かのために生きてみたっていいかもしれない。
何事も経験だと思うから。
ジルベールは情熱的に俺を求めた。
俺は、肉を殺がれ、骨を砕かれ、血を啜られ、
丸ごと彼のお腹に収まってしまった。
* * *
月の光が、木々の合間から微かに見える。
メティスの街から逃げ出して、2晩、
人狼はオレを抱えて走り続けていた。
冷たい夜風が頬を撫でる。
景色がもの凄い速度で後ろへ流れていく。
「ぐっ……」
山を2、3越えたところで、人狼の足がもつれ、
オレは地面に投げ出された。
「……っ!」
軋む体をなんとか持ち上げ人狼を見れば、
ヤツは膝をつき、苦しげに息を吐いていた。
その足元には、赤い血溜まりが出来ている。
「おい……っ、大丈夫か……?」
「うるさい……貴様よりマシだ」
「どこがだよ……
お前、ケガ治ってねぇじゃん……」
毒でも塗られていたのだろうか。
それにしても、治りが悪すぎる。
這うようにして寄れば、伸ばした手を思いきり叩き落とされた。
「気安く触るな」
「そんなこと言ってる場合か。
……休める場所、探してくる」
胸に去来する疑問と不安を飲み込んで、
オレは踵を返した。
「貴様は馬鹿か? なぜ、俺が貴様を抱えて走ったと思っている?」
「だから、俺が行くんだろ……
お前のケガをなんとかしねえと、すぐ追手に追いつかれちまう。
……そんなことも分からないくらい弱ってんのかよ?」
人狼が押し黙る。
オレは深く息を吸い込むと、今度こそ、森に分け入った。
来た道を忘れないように、目印を付けながら慎重に歩を進める。
身を隠せる洞窟や何やらがないか、目をこらした。
どこかで火を焚いて、
アイツのケガをちゃんと見なければ。
強がっているのは、すぐに分かった。
あのまま回復しなければ、命に関わるかもしれない。
オレは祈るような気持ちで、草の生い茂った獣道を進む。
――やがて、その祈りが通じたのか、
オレは打ち捨てられた村を見つけた。
0
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる