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エピソード20
陽だまりと地図(4)
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* * *
ユリアと人狼は、前よりも入れ替わりやすくなっていた。
満月と関係なしに、ユリアが眠りにつくと姿を現すのだ。
オレはそのことをユリアには話さなかった。
むやみやたらと不安にさせても可哀想だし、
ヤツが誰かに危害を加える様子もなかったからだ。
そうして、あっという間に1週間が経った。
慣れとは恐ろしいもので、
オレは人狼と顔を合わせ、普通に会話するようになっていた。
* * *
早朝からバラ園の手入れをし、ユリアの寝室を整え、屋敷の掃除をし、
あれやこれやを終えると、ようやく一日が終わりを迎える。
ほど良い疲れが心地良い。
だらけた体がリフレッシュするようだ。
適切な量の労働は、生活をより充実したものにするのかもしれない……
オレはシャワーで汗を流してから着がえると、
ユリアのためにハーブティーを淹れた。
「ユリア。起きてるか?
寝る前のお茶、持ってきたぞ」
寝室の扉を開けると、
いつものようにユリアは勢いよく駆け寄ってきた。
犬みたいだな、と思う。
「バンさん! お疲れ様です。
今日は朝から忙しそうでしたね」
「それがフツーなんだよ。
お前は? 今日は何してた?」
「僕は久々に本を読みました。
あと、ピアノを少し。でも……」
言葉の途中で、ユリアは少し残念そうに肩をすくめてみせた。
「ダメですね。
ちょっと弾かなかったら指の動きが鈍っちゃって」
「また弾き始めれば、すぐ元に戻るさ」
テーブルに腰掛けたユリアの前に茶器を置き、
ゆっくりとお茶を注ぐ。
カモミールと蜂蜜の甘い匂いが、
ふわりと浮かんで、空気に滲んだ。
「ミルクいるか?」
「このままで結構です。いただきます」
姿勢良く、ユリアがカップを手にする。
と思えば、一息にハーブティーを流し込んだ。
「ふぅ。……おかわりください」
「あ、ああ。なんだよ、喉渇いてたのか?」
「いいえ?」
戸惑いつつ2杯目を注げば、
彼はまた勢いよく飲み干してしまった。
もともと寝る前ということで、
そこまでの量は作ってはいない。
そういうわけで、ポットの中のお湯は空っぽになった。
「ごちそうさまでした」
「えーっと……
まだ飲むなら、お湯貰ってくるけど」
「いえ、お茶はもう十分です。
それより……」
カップをテーブルの中央に押しやって、ユリアが手を組む。
それから、真剣な様子で小首を傾げた。
「バンさん。今日は何の日か覚えていますか?」
「は……?」
今日?
オレは訝しげにユリアを見返した。
「今日――って、何かあったっけ?」
わざわざ尋ねるくらいだから、何か特別な日なのだろう。
誕生日とか恋人同士になった日だとか……
しかし、どれも違う。
「本当に分かりません?」
「ああ、悪い。何の日だよ?」
問えば、彼は少しすねた様子で、
椅子から立ち上がった。
「1週間経ったんですよ!
エッチしなくなって、1週間!!」
ユリアと人狼は、前よりも入れ替わりやすくなっていた。
満月と関係なしに、ユリアが眠りにつくと姿を現すのだ。
オレはそのことをユリアには話さなかった。
むやみやたらと不安にさせても可哀想だし、
ヤツが誰かに危害を加える様子もなかったからだ。
そうして、あっという間に1週間が経った。
慣れとは恐ろしいもので、
オレは人狼と顔を合わせ、普通に会話するようになっていた。
* * *
早朝からバラ園の手入れをし、ユリアの寝室を整え、屋敷の掃除をし、
あれやこれやを終えると、ようやく一日が終わりを迎える。
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だらけた体がリフレッシュするようだ。
適切な量の労働は、生活をより充実したものにするのかもしれない……
オレはシャワーで汗を流してから着がえると、
ユリアのためにハーブティーを淹れた。
「ユリア。起きてるか?
寝る前のお茶、持ってきたぞ」
寝室の扉を開けると、
いつものようにユリアは勢いよく駆け寄ってきた。
犬みたいだな、と思う。
「バンさん! お疲れ様です。
今日は朝から忙しそうでしたね」
「それがフツーなんだよ。
お前は? 今日は何してた?」
「僕は久々に本を読みました。
あと、ピアノを少し。でも……」
言葉の途中で、ユリアは少し残念そうに肩をすくめてみせた。
「ダメですね。
ちょっと弾かなかったら指の動きが鈍っちゃって」
「また弾き始めれば、すぐ元に戻るさ」
テーブルに腰掛けたユリアの前に茶器を置き、
ゆっくりとお茶を注ぐ。
カモミールと蜂蜜の甘い匂いが、
ふわりと浮かんで、空気に滲んだ。
「ミルクいるか?」
「このままで結構です。いただきます」
姿勢良く、ユリアがカップを手にする。
と思えば、一息にハーブティーを流し込んだ。
「ふぅ。……おかわりください」
「あ、ああ。なんだよ、喉渇いてたのか?」
「いいえ?」
戸惑いつつ2杯目を注げば、
彼はまた勢いよく飲み干してしまった。
もともと寝る前ということで、
そこまでの量は作ってはいない。
そういうわけで、ポットの中のお湯は空っぽになった。
「ごちそうさまでした」
「えーっと……
まだ飲むなら、お湯貰ってくるけど」
「いえ、お茶はもう十分です。
それより……」
カップをテーブルの中央に押しやって、ユリアが手を組む。
それから、真剣な様子で小首を傾げた。
「バンさん。今日は何の日か覚えていますか?」
「は……?」
今日?
オレは訝しげにユリアを見返した。
「今日――って、何かあったっけ?」
わざわざ尋ねるくらいだから、何か特別な日なのだろう。
誕生日とか恋人同士になった日だとか……
しかし、どれも違う。
「本当に分かりません?」
「ああ、悪い。何の日だよ?」
問えば、彼は少しすねた様子で、
椅子から立ち上がった。
「1週間経ったんですよ!
エッチしなくなって、1週間!!」
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