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クローディア大公の結婚式
天使対古竜
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「なにかな、きみは。」
ノウブルは、レクスの顔を見据えた。
おそらく。
ノウブルが宿した力の源泉が、天使であるならば、その膂力も人間、いや竜人をもはるかに凌ぐはずだが、ノウブルの腕はびくりともうごかせないでいた。
「はあ。その顔…竜人、いやその長だね。
汚らしい蜥蜴風情が、ぼくに触るなよ。」
レクスに掴まれたノウブルの腕が、煌めく結晶体に覆われた。それは、掴んだレスクの腕をも侵食していく!
これは意外だったらしく、レクスは、手を離した。だがそのときには、結晶は、レクスの肩口までも覆っている。
ふぃ
「最後くらいはキレイな彫像になって、死になよ、トカゲくん!」
笑いながら、ノウプルは、もう一度、 フィールべ枢機卿を向き直った。
伸ばした手は、またも鉤爪に掴まれた。
「まだ、命があるのかね、トカゲくん。」
ノウブルは、不快そうにレクスを見やった。
足元に、細かな結晶の欠片が、散らばっていた。
「ぼくの聖力を表皮でとめた、と?」
ノウブルは、強引にレクスの手を振り払おぅとした。
だが、レクスは微動だにせず、振り払おうとしたノウブルの腕のほうが、乾いた音を立てておかしな角度に曲がった。
「やるなあ、トカゲくん。」
「神が天使を下すのは1000年ぶりかな。」
レクスはのんびりとした口調で言った。
「たしか、魔族戦争中に、下ろした天使が、魔王の『魔女』と相打ちになって果てて以来じゃないか?」
「なるほど、おまえは」
ノウブルは、唇をなめた。
折れた腕が、さらにレクスの手の中でみしみしと音を立てる。
骨ごと握り潰そうとしている。
「古竜どもの中でも、それなりの名のある強者なのだな。名はなんと言う?」
レクスは答えずに思案顔だった。
「なるほど。神を降ろしてしまえば、人間の体と心がもたない。だが、天使ならば降ろせるし、力は限定されたにしても、天使の本体は依り代に使った人間が屠られても、消滅することはない。なかなかいいシステムだ。」
そして、顔を上げて、フィーベルに、どうする?と聞いた。
「どうする。とは?」
「この者の…ええっと名前はなんだっけ?」
「結晶天使ザザウ。」
「そう、このザザウくんが言うところの、天使憑きによる特殊部隊も、悪い案ではないと思うのだ。」
「自ら、しっぽを巻いて逃げ出すと言うのか!? 懸命だな、トカゲ。」
「もちろん、比喩的な意味だと思う。」
レクスは真面目な顔で言った。
「我々がシッポをもっていることは、否定しないし、勝てぬ戦いから逃げ出すこともありうる。だが、そのときにしっぽを『巻く』ことはないのだが。」
バギバキ。
音を立てて、ノウブルの腕が砕けた。
あ、こりゃごめん、と言って、レクスさ手を離した。
複数箇所で骨折した腕は、だらりと垂れ下がる。
フィールべは、なにが起こったのか理解した。
レクスには、ノウブルを攻撃する気はまったくなかったのだ。
ただ、ノウブルがフィールべを攻撃するのを止めようとして、その手をつかんだ。
そのあと、起きたことは、ノウブルが強引に手を振りほどこうとして、勝手に腕を骨折したこと。考え事をしていたルクスが、つい手に力を込めすぎてしまったこと。
だが、ノウブルは、あるいはその身にやどった「結晶天使」ザザウは、複雑骨折した腕を振り回した。
手が、枯れ木の音をたてて、骨が正常な一におさまる。
「この程度、天使たる我には、なんのダメージにもならん。」
天使は嘯いた。
その手に、複雑な結晶片で構成された長剣が現れた。
「ただの育ちすぎのトカゲと油断した。本気でいかせてもらう。」
「まあ。」
フィールべは、両者の間に体をすべりこませた。破城槌の前に体を投げ出すような勇気が必要だったが、アライアス家に生まれたものは、そのくらいの芸当はやってのける。
家督を妹に押し付けて、信仰の道にはいったフィールべとて、例外ではない。
「両者ともお待ちいただきたい。」
「天使に背くか、フィールべ。」
天使は、燐光を放つ瞳でフィールべを睨んだ。
「背く背かぬの問題ではありませんな。」
フィールべは、言った。
「聖竜師団の顧問閣下は、聖竜師団と並行して、天使旅団を設立することについては、容認されている。そうだな?」
「そのつもりだ。」
レクスは答えた。
「ただ、天使に特務戦団をまかせて、竜人部隊を解散となると少し困る。竜人たちもずいぶんと腕をあげてきた。あと、ぼくもこの地位が気に入ってる。
人化が下手くそでも、師団の顧問という身分があると、人々から嫌がられない。これは大変助かる。」
「ふざけるな。」
天使は、今度はレクスを睨んだ。
「竜人や、育ちすぎのトカゲに信仰を守れるものか。これからは、我ら天使が、ミトラと教皇庁を守るのだ。これが神のご意志だ。」
「でも、ミトラの神は、自らの名も明かさず、神託をくだすこともしないのだろう?」
レクスは、淡々と言った。
「きみが天使だということは、わかるのだけれども、本当にそれが、名もなき神の意志だとは確認のしようがないんだよ。」
「このように、お二人の意見は平行線のようです。つまり話し合いでは解決できない。」
てっきり、戦いをとめるために出てきたのだと、思い込んでいた天使は、毒気をぬかれたように、きょとんとして、フィールべ枢機卿を眺めた。
「ならば、腕っぷしで勝負をつけることは、あながち間違っておりません。ですが、要となるのはあなた方二人の武力ではありません。
組織としての戦力がより強力なほうの意見を、教皇庁としては採用いたしましょう。」
「神たる意志に叛くのか、枢機卿ともあろうものが!」
「ですが現実に、契約している古竜の意向に背いて、契約を打ち切りでもしたら、怒り狂った古竜は、竜人部隊を指揮して、ミトラを焼き尽くすかもしれませんな。」
「そんなものは、我ら天使が、阻止して見せる。」
「なるほど、ならば結局、聖竜師団と戦っていただけるわけですな、甚だ幸いです。ならば、竜の怒りがミトラと教皇庁に向かう前に、互いの代表選手をだしていただき、どちらが優れているかを証明していただきましょう。」
「面白い!」
レクスが手をうってはしゃいだ。
「受けるかね? 結晶天使殿。どれとも、アレか。尻尾を巻いて逃げ出すか? これはもちろん比喩的な意味だよ。きみたちに尻尾がないことは十分承知している。」
ノウブルは、レクスの顔を見据えた。
おそらく。
ノウブルが宿した力の源泉が、天使であるならば、その膂力も人間、いや竜人をもはるかに凌ぐはずだが、ノウブルの腕はびくりともうごかせないでいた。
「はあ。その顔…竜人、いやその長だね。
汚らしい蜥蜴風情が、ぼくに触るなよ。」
レクスに掴まれたノウブルの腕が、煌めく結晶体に覆われた。それは、掴んだレスクの腕をも侵食していく!
これは意外だったらしく、レクスは、手を離した。だがそのときには、結晶は、レクスの肩口までも覆っている。
ふぃ
「最後くらいはキレイな彫像になって、死になよ、トカゲくん!」
笑いながら、ノウプルは、もう一度、 フィールべ枢機卿を向き直った。
伸ばした手は、またも鉤爪に掴まれた。
「まだ、命があるのかね、トカゲくん。」
ノウブルは、不快そうにレクスを見やった。
足元に、細かな結晶の欠片が、散らばっていた。
「ぼくの聖力を表皮でとめた、と?」
ノウブルは、強引にレクスの手を振り払おぅとした。
だが、レクスは微動だにせず、振り払おうとしたノウブルの腕のほうが、乾いた音を立てておかしな角度に曲がった。
「やるなあ、トカゲくん。」
「神が天使を下すのは1000年ぶりかな。」
レクスはのんびりとした口調で言った。
「たしか、魔族戦争中に、下ろした天使が、魔王の『魔女』と相打ちになって果てて以来じゃないか?」
「なるほど、おまえは」
ノウブルは、唇をなめた。
折れた腕が、さらにレクスの手の中でみしみしと音を立てる。
骨ごと握り潰そうとしている。
「古竜どもの中でも、それなりの名のある強者なのだな。名はなんと言う?」
レクスは答えずに思案顔だった。
「なるほど。神を降ろしてしまえば、人間の体と心がもたない。だが、天使ならば降ろせるし、力は限定されたにしても、天使の本体は依り代に使った人間が屠られても、消滅することはない。なかなかいいシステムだ。」
そして、顔を上げて、フィーベルに、どうする?と聞いた。
「どうする。とは?」
「この者の…ええっと名前はなんだっけ?」
「結晶天使ザザウ。」
「そう、このザザウくんが言うところの、天使憑きによる特殊部隊も、悪い案ではないと思うのだ。」
「自ら、しっぽを巻いて逃げ出すと言うのか!? 懸命だな、トカゲ。」
「もちろん、比喩的な意味だと思う。」
レクスは真面目な顔で言った。
「我々がシッポをもっていることは、否定しないし、勝てぬ戦いから逃げ出すこともありうる。だが、そのときにしっぽを『巻く』ことはないのだが。」
バギバキ。
音を立てて、ノウブルの腕が砕けた。
あ、こりゃごめん、と言って、レクスさ手を離した。
複数箇所で骨折した腕は、だらりと垂れ下がる。
フィールべは、なにが起こったのか理解した。
レクスには、ノウブルを攻撃する気はまったくなかったのだ。
ただ、ノウブルがフィールべを攻撃するのを止めようとして、その手をつかんだ。
そのあと、起きたことは、ノウブルが強引に手を振りほどこうとして、勝手に腕を骨折したこと。考え事をしていたルクスが、つい手に力を込めすぎてしまったこと。
だが、ノウブルは、あるいはその身にやどった「結晶天使」ザザウは、複雑骨折した腕を振り回した。
手が、枯れ木の音をたてて、骨が正常な一におさまる。
「この程度、天使たる我には、なんのダメージにもならん。」
天使は嘯いた。
その手に、複雑な結晶片で構成された長剣が現れた。
「ただの育ちすぎのトカゲと油断した。本気でいかせてもらう。」
「まあ。」
フィールべは、両者の間に体をすべりこませた。破城槌の前に体を投げ出すような勇気が必要だったが、アライアス家に生まれたものは、そのくらいの芸当はやってのける。
家督を妹に押し付けて、信仰の道にはいったフィールべとて、例外ではない。
「両者ともお待ちいただきたい。」
「天使に背くか、フィールべ。」
天使は、燐光を放つ瞳でフィールべを睨んだ。
「背く背かぬの問題ではありませんな。」
フィールべは、言った。
「聖竜師団の顧問閣下は、聖竜師団と並行して、天使旅団を設立することについては、容認されている。そうだな?」
「そのつもりだ。」
レクスは答えた。
「ただ、天使に特務戦団をまかせて、竜人部隊を解散となると少し困る。竜人たちもずいぶんと腕をあげてきた。あと、ぼくもこの地位が気に入ってる。
人化が下手くそでも、師団の顧問という身分があると、人々から嫌がられない。これは大変助かる。」
「ふざけるな。」
天使は、今度はレクスを睨んだ。
「竜人や、育ちすぎのトカゲに信仰を守れるものか。これからは、我ら天使が、ミトラと教皇庁を守るのだ。これが神のご意志だ。」
「でも、ミトラの神は、自らの名も明かさず、神託をくだすこともしないのだろう?」
レクスは、淡々と言った。
「きみが天使だということは、わかるのだけれども、本当にそれが、名もなき神の意志だとは確認のしようがないんだよ。」
「このように、お二人の意見は平行線のようです。つまり話し合いでは解決できない。」
てっきり、戦いをとめるために出てきたのだと、思い込んでいた天使は、毒気をぬかれたように、きょとんとして、フィールべ枢機卿を眺めた。
「ならば、腕っぷしで勝負をつけることは、あながち間違っておりません。ですが、要となるのはあなた方二人の武力ではありません。
組織としての戦力がより強力なほうの意見を、教皇庁としては採用いたしましょう。」
「神たる意志に叛くのか、枢機卿ともあろうものが!」
「ですが現実に、契約している古竜の意向に背いて、契約を打ち切りでもしたら、怒り狂った古竜は、竜人部隊を指揮して、ミトラを焼き尽くすかもしれませんな。」
「そんなものは、我ら天使が、阻止して見せる。」
「なるほど、ならば結局、聖竜師団と戦っていただけるわけですな、甚だ幸いです。ならば、竜の怒りがミトラと教皇庁に向かう前に、互いの代表選手をだしていただき、どちらが優れているかを証明していただきましょう。」
「面白い!」
レクスが手をうってはしゃいだ。
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