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クエスト 披露宴に出席せよ
魔女の招待状
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「財務卿は正しい。」
魔力による灯りは弱々しく、また維持するにも魔力を消費する。
「不死鳥の冠」では、馬鹿げた魔力量の持ち主だった、前ギルマスがいないときは、たいていランプを使用していた。
「西域通貨をグランダでも流通されるには、まずは現行の金貨、銀貨、銅貨との換金レートを定めておく必要がある。」
ミュラは、王立学院から借りてきた本を懸命に紐解いている。
「だが、それだけでいいのか?
たかが紙に印刷した数字がどうやって、貴金属と同じ価値を表すのだ?
担保となるものはなんだ?」
「難しいことを悩んでも仕方ないんじゃないないですかい?」
帰り支度をすませたフィリオペが、声をかけた。
歳は四十半ば。つい先日まで現役の銀級冒険者だったがっしりとした体格の男だった。
ミュラが、「グランドマスター」に就任後は、ギルマスになることが決まっている。
西域生まれ西域育ちのフィリオペにとっては、金イコールダル紙幣であり、なぜ印刷物が金と同等の価値を持つのか聞かれても「それはそういうものだから」という答えしか
返せなかった。
「そもそも発行する量はどこが決めてるのだ?」
「それは西域中央銀行が」
「たかだかひとつの商会が決めるのか?」
「いやな、ミュラ嬢。」
フィオりぺは、頭をかいた。
「昔は、保有している貴金属、おもに金の量で発行量がきまっていたそうだが、いまは法令で定められたている。」
「その法令の全文があるか?」
「しっかりしてくれ、ミュラ嬢。
俺がもっているわけがないだろう?」
とんでもないことを丸投げしてくれる。
と、ミュラは頭を掻きむしった。
「どうにもわからないわね。
ミトラにでも行けば専門家からアドバイスも受けられるのだろうけど。」
「あら、ちょうどよかった。」
ドアが開かれると、いつもの衣装にマントを羽織ったメアが颯爽と入ってきた。
「王太后陛下。」
一応、尊称では呼んだが、ミュラは跪くこともない。そもそも立ち上がりもしない。
「うちは、もう店じまいです。一杯飲みたければほかを当たってください。」
ガタン。
と、音がしたのでふりむけと、フィリオペが腰を抜かしていた。
「ま、ま、ま、ま、魔女・・・」
「確かにわたしは、前世そうだったんだけれどね。」
メアは、手にした袋をテーブルにおいた。
「うちの果樹園でとれた果物をもってきたわ。まだ少し早いんだけど、味はいいと、思う。」
「ま。魔王宮はどうなったんですかい?
竜を手配するって話は。」
「ある意味失敗。古竜は一体を覗いてみんな出払ってたのよ。」
「そりゃあ、ある意味よかった。」
この、中では一番の常識人であるフィオリベは、竜に出くわすことの意味をよく分かっていた。
「じゃあ、西域にいくのに、竜を使うって案はお流れになったんですか?」
「そっちは、ある意味なんとかなったわ。」
意味のわからないことを言って、メアは、ミュラの、向かいの席に腰を下ろすと、頬杖をついてミュラを眺めた。
「なんですか?」
メアの視線をあびて、ミュラは明らかにたじろいだ。
「美人よね、あなた。」
「はあ・・・よく言われますが。」
「あなた、ドレスは持ってる?」
「ひさしく作ってないけど、実家になら。」
メアは、例の招待状を差し出した。
「あなたもミトラに来るのよ。」
ミュラは、招待状に書かれた名前を食い入るように見つめた。
「なぜ、」
「まったくなにを考えているのやら。」
メアは、立ち上がった。
「竜の手配はしてある。魔王宮の竜どもが総出陣だ。
出発の日時はあらためて連絡するわ。
わたしはもう一件、回るところがあるので失礼するわ。」
ミュラの唇は震えていた。
「わたしは、忙しい身なんだ。こんな茶番につきあってはいられない。」
「西方共通貨幣の導入についての知識が欲しいのだろう?
ミトラならさすがに人、文献ともに豊富にあると思うが?
行き帰り、竜が使えるのも条件としては悪くないだろう?」
「メアっ・・・いや、ザザリ。いったいなんでこうなったのか教えてくれませんか?」
王太后であるメアを、ザザリと読んだことに、再びフィリオぺが青ざめた。
「わたしにもわからん。
招待状をもってきたのは、ギムリウスだ。だから、少なくとも階層主どもはそのつもりなんだろう?
言いたいこと、聞きたいことがあるなら、本人に直接聞けばいいと思うわ。
正直に言えば、わたしの夫やエルマートは血縁だから分かるにせよ、なぜお前を招待しなければいけないのかが一番わからないの。」
魔力による灯りは弱々しく、また維持するにも魔力を消費する。
「不死鳥の冠」では、馬鹿げた魔力量の持ち主だった、前ギルマスがいないときは、たいていランプを使用していた。
「西域通貨をグランダでも流通されるには、まずは現行の金貨、銀貨、銅貨との換金レートを定めておく必要がある。」
ミュラは、王立学院から借りてきた本を懸命に紐解いている。
「だが、それだけでいいのか?
たかが紙に印刷した数字がどうやって、貴金属と同じ価値を表すのだ?
担保となるものはなんだ?」
「難しいことを悩んでも仕方ないんじゃないないですかい?」
帰り支度をすませたフィリオペが、声をかけた。
歳は四十半ば。つい先日まで現役の銀級冒険者だったがっしりとした体格の男だった。
ミュラが、「グランドマスター」に就任後は、ギルマスになることが決まっている。
西域生まれ西域育ちのフィリオペにとっては、金イコールダル紙幣であり、なぜ印刷物が金と同等の価値を持つのか聞かれても「それはそういうものだから」という答えしか
返せなかった。
「そもそも発行する量はどこが決めてるのだ?」
「それは西域中央銀行が」
「たかだかひとつの商会が決めるのか?」
「いやな、ミュラ嬢。」
フィオりぺは、頭をかいた。
「昔は、保有している貴金属、おもに金の量で発行量がきまっていたそうだが、いまは法令で定められたている。」
「その法令の全文があるか?」
「しっかりしてくれ、ミュラ嬢。
俺がもっているわけがないだろう?」
とんでもないことを丸投げしてくれる。
と、ミュラは頭を掻きむしった。
「どうにもわからないわね。
ミトラにでも行けば専門家からアドバイスも受けられるのだろうけど。」
「あら、ちょうどよかった。」
ドアが開かれると、いつもの衣装にマントを羽織ったメアが颯爽と入ってきた。
「王太后陛下。」
一応、尊称では呼んだが、ミュラは跪くこともない。そもそも立ち上がりもしない。
「うちは、もう店じまいです。一杯飲みたければほかを当たってください。」
ガタン。
と、音がしたのでふりむけと、フィリオペが腰を抜かしていた。
「ま、ま、ま、ま、魔女・・・」
「確かにわたしは、前世そうだったんだけれどね。」
メアは、手にした袋をテーブルにおいた。
「うちの果樹園でとれた果物をもってきたわ。まだ少し早いんだけど、味はいいと、思う。」
「ま。魔王宮はどうなったんですかい?
竜を手配するって話は。」
「ある意味失敗。古竜は一体を覗いてみんな出払ってたのよ。」
「そりゃあ、ある意味よかった。」
この、中では一番の常識人であるフィオリベは、竜に出くわすことの意味をよく分かっていた。
「じゃあ、西域にいくのに、竜を使うって案はお流れになったんですか?」
「そっちは、ある意味なんとかなったわ。」
意味のわからないことを言って、メアは、ミュラの、向かいの席に腰を下ろすと、頬杖をついてミュラを眺めた。
「なんですか?」
メアの視線をあびて、ミュラは明らかにたじろいだ。
「美人よね、あなた。」
「はあ・・・よく言われますが。」
「あなた、ドレスは持ってる?」
「ひさしく作ってないけど、実家になら。」
メアは、例の招待状を差し出した。
「あなたもミトラに来るのよ。」
ミュラは、招待状に書かれた名前を食い入るように見つめた。
「なぜ、」
「まったくなにを考えているのやら。」
メアは、立ち上がった。
「竜の手配はしてある。魔王宮の竜どもが総出陣だ。
出発の日時はあらためて連絡するわ。
わたしはもう一件、回るところがあるので失礼するわ。」
ミュラの唇は震えていた。
「わたしは、忙しい身なんだ。こんな茶番につきあってはいられない。」
「西方共通貨幣の導入についての知識が欲しいのだろう?
ミトラならさすがに人、文献ともに豊富にあると思うが?
行き帰り、竜が使えるのも条件としては悪くないだろう?」
「メアっ・・・いや、ザザリ。いったいなんでこうなったのか教えてくれませんか?」
王太后であるメアを、ザザリと読んだことに、再びフィリオぺが青ざめた。
「わたしにもわからん。
招待状をもってきたのは、ギムリウスだ。だから、少なくとも階層主どもはそのつもりなんだろう?
言いたいこと、聞きたいことがあるなら、本人に直接聞けばいいと思うわ。
正直に言えば、わたしの夫やエルマートは血縁だから分かるにせよ、なぜお前を招待しなければいけないのかが一番わからないの。」
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