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クエスト 披露宴に出席せよ
魔女と神獣と神竜と
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ザザリは、ギムリウスの顔を見つめた。
「それは・・・わたしにどうしろと。」
「ですので、式に出席していただき、二人を祝っていただき、そうですね、スピーチをふりますので、歌をお願いします。」
「な・・・なぜ?」
「なぜってそういうものだからです!」
ギムリウスは薄い胸をはった。
「それが一般常識というものです。」
「どこで学んだのかしらないが、出席するのなら新郎の親として出席するのだろう。新郎の親はあまり余興で歌を歌ったりはしないぞ。」
ショックをうけたように不死身の神獣は、よろめいた。
「ほ、ほんとですか?」
「これでも二十年近く王妃をやっていたんだ。北方や西域の貴族の儀礼には、そこそこ精通しているんだ。」
ザザリは、腕を組んで少し考え込んだ。
こんなところは、かつての控えめで淑やかで清楚な王妃メアは、ぜったいにしなかったポーズである。
「転生酔い」による人格分裂はおさまっていたとはいえ、やはり普段の動作、思考法などはザザリのそれに近いようだった。
「何人くらいの規模で、どこでやるんだ。」
と、ザザリは尋ねた。
ギムリウスは、黙って目をくるくるとまわした。
「‥決まってないのか。」
「内輪でやろうと、ご子息さまがおっしゃってました。」
「ご子息さまって‥‥ああ、リウのことか。」
リウは転生前のザザリの子、グランダの国王エルマートは転生後のメアの子なのだが、ザザリの中ではあっさり「兄弟」として認識されている。
「内輪ならなぜ、わたしを、ああ、そうか。」
ザザリは勝手に納得して頷いた。
「我が夫は、ルトの実の父親であったな、エルマートも弟。ならば、わたしも出ないわけにはいかぬか。
しかし、謀略にかけて命を奪おうとした、実夫に継母、王位を争った腹違いの弟を結婚式に招待するか?」
「それは一般常識では、習いませんでした。」
ギムリウスは「一般常識」の奥の深さに戦慄していた。
これは、なかなか座業だけでは把握しきれるものではない。やはり、実際にいろいろと経験することが大事なのだろう。
いつか自分も絶対に結婚というものをやってみよう、とギムリウスは思った。
「まあ、面白いな、招待してくれるというのなら、行ってみよう。
ミトラは久しぶりだし、聖光教の坊主どもをからかってやりたいしな。
式次第は、聖光教にやらせるのか?」
「さあ‥‥ルトもフィオリナもあそこの教会とは、敵同士のようです。
そうですね。やはり古竜をたくさん、揃えてみましたが、やっぱり神さまの祝福は別ものですからね。」
「本気で結婚式に参列させるために、魔王宮の古竜どもをよんだのか。」
ザザリもさすがに呆れた。
「確かに古竜がやってくるのは、古来、吉兆だと言われているが。
8頭、いやこいつをいれれば9頭はいるぞ。」
「あと、竜王のところから6頭きてもらってます。ラウレスも参加したがるでしょうから、都合16頭ですね。」
「なにを始める! 神々と戦でもはじめるのか?」
「いえ、結婚式ですけど。」
ザックは、魔王宮に潜る時いがいは、たいてい王都の酒場でたむろしていることが、多い。
内輪でゆっくり飲みたいなら『不死鳥の冠』。いろいろな料理と酒を愉しんで、なんだったら、知らぬ連中ともわいわいやりたいなら『闇鴉』。
晩酌ばかりではなく、昼間からそうしているので、仲間たちには評判が悪い。
まずは、ザザリが竜の手配をしてくれるはずだ。
トッドたちは、置いて行こうか、とザックは考えている。彼だけなら、なにがあってもなんとかなるがトッドたちはそうはいかない。
なにより、トッドたちに魔王宮の探索をさせておいて、自分は『踊る道化師』に合流する。
つまりは収入だはいるあてが二つに増えることで、これはうれしいことには違いない。
ローゼは守銭奴のように、こっちを非難するが、遠大な目標ではあるが、実際のところザックはこの北の地が気に入って、ここか、できればクローディア大公国に神殿をぶち建てたいのだ。
そのための費用を自分で稼ぐ、というわけのわからないことにはなっているが、これはいかなる神々、神獣も体験していないことなので、ザックはけっこうワクワクしているのだ。
「よお。」
と、ジョッキを片手に、目の前に座ったのは、人間の淫夢に出てくるような美女だった。
ザックは、飲み掛けの白酒のストレートのはいったグラスを、口に運びかけたまま、呆然と相手の顔を見やった。
「リアモンドの姉さん」
美女は、唇に指をたてて「シッ」と言った。
「わたしは、銀宮冒険者のアモンという。『フェンリルの咆哮』のザック殿だな。」
「な、何のご用意です、リ‥‥アモンさん。」
「うむ、直接、依頼したいことがあってな。」
「あんたが?」
神竜がフェンリルに依頼?
神でもぶち殺せというのだろうか。
「魔王宮の古竜どもを、魔道列車を乗り継いで、ミトラまで連れてきてほしいのだ。」
神の首を取ってこいと言われた方がマシだった。
「それは・・・わたしにどうしろと。」
「ですので、式に出席していただき、二人を祝っていただき、そうですね、スピーチをふりますので、歌をお願いします。」
「な・・・なぜ?」
「なぜってそういうものだからです!」
ギムリウスは薄い胸をはった。
「それが一般常識というものです。」
「どこで学んだのかしらないが、出席するのなら新郎の親として出席するのだろう。新郎の親はあまり余興で歌を歌ったりはしないぞ。」
ショックをうけたように不死身の神獣は、よろめいた。
「ほ、ほんとですか?」
「これでも二十年近く王妃をやっていたんだ。北方や西域の貴族の儀礼には、そこそこ精通しているんだ。」
ザザリは、腕を組んで少し考え込んだ。
こんなところは、かつての控えめで淑やかで清楚な王妃メアは、ぜったいにしなかったポーズである。
「転生酔い」による人格分裂はおさまっていたとはいえ、やはり普段の動作、思考法などはザザリのそれに近いようだった。
「何人くらいの規模で、どこでやるんだ。」
と、ザザリは尋ねた。
ギムリウスは、黙って目をくるくるとまわした。
「‥決まってないのか。」
「内輪でやろうと、ご子息さまがおっしゃってました。」
「ご子息さまって‥‥ああ、リウのことか。」
リウは転生前のザザリの子、グランダの国王エルマートは転生後のメアの子なのだが、ザザリの中ではあっさり「兄弟」として認識されている。
「内輪ならなぜ、わたしを、ああ、そうか。」
ザザリは勝手に納得して頷いた。
「我が夫は、ルトの実の父親であったな、エルマートも弟。ならば、わたしも出ないわけにはいかぬか。
しかし、謀略にかけて命を奪おうとした、実夫に継母、王位を争った腹違いの弟を結婚式に招待するか?」
「それは一般常識では、習いませんでした。」
ギムリウスは「一般常識」の奥の深さに戦慄していた。
これは、なかなか座業だけでは把握しきれるものではない。やはり、実際にいろいろと経験することが大事なのだろう。
いつか自分も絶対に結婚というものをやってみよう、とギムリウスは思った。
「まあ、面白いな、招待してくれるというのなら、行ってみよう。
ミトラは久しぶりだし、聖光教の坊主どもをからかってやりたいしな。
式次第は、聖光教にやらせるのか?」
「さあ‥‥ルトもフィオリナもあそこの教会とは、敵同士のようです。
そうですね。やはり古竜をたくさん、揃えてみましたが、やっぱり神さまの祝福は別ものですからね。」
「本気で結婚式に参列させるために、魔王宮の古竜どもをよんだのか。」
ザザリもさすがに呆れた。
「確かに古竜がやってくるのは、古来、吉兆だと言われているが。
8頭、いやこいつをいれれば9頭はいるぞ。」
「あと、竜王のところから6頭きてもらってます。ラウレスも参加したがるでしょうから、都合16頭ですね。」
「なにを始める! 神々と戦でもはじめるのか?」
「いえ、結婚式ですけど。」
ザックは、魔王宮に潜る時いがいは、たいてい王都の酒場でたむろしていることが、多い。
内輪でゆっくり飲みたいなら『不死鳥の冠』。いろいろな料理と酒を愉しんで、なんだったら、知らぬ連中ともわいわいやりたいなら『闇鴉』。
晩酌ばかりではなく、昼間からそうしているので、仲間たちには評判が悪い。
まずは、ザザリが竜の手配をしてくれるはずだ。
トッドたちは、置いて行こうか、とザックは考えている。彼だけなら、なにがあってもなんとかなるがトッドたちはそうはいかない。
なにより、トッドたちに魔王宮の探索をさせておいて、自分は『踊る道化師』に合流する。
つまりは収入だはいるあてが二つに増えることで、これはうれしいことには違いない。
ローゼは守銭奴のように、こっちを非難するが、遠大な目標ではあるが、実際のところザックはこの北の地が気に入って、ここか、できればクローディア大公国に神殿をぶち建てたいのだ。
そのための費用を自分で稼ぐ、というわけのわからないことにはなっているが、これはいかなる神々、神獣も体験していないことなので、ザックはけっこうワクワクしているのだ。
「よお。」
と、ジョッキを片手に、目の前に座ったのは、人間の淫夢に出てくるような美女だった。
ザックは、飲み掛けの白酒のストレートのはいったグラスを、口に運びかけたまま、呆然と相手の顔を見やった。
「リアモンドの姉さん」
美女は、唇に指をたてて「シッ」と言った。
「わたしは、銀宮冒険者のアモンという。『フェンリルの咆哮』のザック殿だな。」
「な、何のご用意です、リ‥‥アモンさん。」
「うむ、直接、依頼したいことがあってな。」
「あんたが?」
神竜がフェンリルに依頼?
神でもぶち殺せというのだろうか。
「魔王宮の古竜どもを、魔道列車を乗り継いで、ミトラまで連れてきてほしいのだ。」
神の首を取ってこいと言われた方がマシだった。
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