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33、神竜の鱗をもとめるヤツとそんなものどうでもいいヤツ
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深淵竜ゾールは、仄暗い空間で、一息ついた。
信じられぬ。
あの巨体は、紛れもない。
上古以来、活動の記録のない神獣ギムリウスだ。
あの吸血鬼が真祖リンドならば、たしかにあの力もうなずける。
そして、尻尾を両断したあの剣の技をもつ少年。
空を埋め尽くす炎の矢を作り出したルトとかいう小僧。
・・・あれが、冒険者学校に通う生徒だというのか?
神獣が? 真祖の吸血鬼が? 冒険者学校?
竜の例にもれず、ゾールは人間文化に造詣が深いつもりであった。
いや、人間社会というものは彼が思っていたのものとはまったく違うのかもしれない。
「では、これからホームルームをはじめまあす。」
女教師の声がひびく。
「はーい、先生!」
着席しているのは、神獣に真祖吸血鬼、人化した古竜・・・・
ばかな、そんなばかな。
じゃあ、なにか?
ロゼルの小娘からきいた彼女が所属するクラスのグループ「魔王党」のリーダーは、古の魔王そのひとだとでもいうのか?
自分の妄想に、おかしくなって、くっくっくとゾールが笑い声をたてた。
それよりも、これ。
だ。
ゾールの『収納』から、ザラザラと竜の鱗が溢れ出た。
さきほど、ルトとかいう小僧が持ち出したものだ。ゾールの作り出した空間の破壊とあの謎の世界への転移のどさくさにまぎれて、彼の次元断層にそっくり取り込みそのまま、逃げ出すことに成功したのだ。
さきほどはあまりに見事なイミテーションぶりに、迷ったが、落ち着いて見分ければ、わからぬわけがない。
なにしろ、彼が数百年、知性をもって一番に恋い焦がれたあの神竜リアモンドさまの鱗だ。
彼女のお姿を直視したわけではないが、その波動、その匂い、その魔力のな残り、すべてがゾールの心に焼き付いている。
ほうら、本物はこれだ。
最初に手に取った一枚にまぎれもなく、神竜リアモンドの香りを感じゾールはうっとりと微笑んだ。
いや、まて?
こちらの鱗も。
この鱗に残る魔力の波長は、竜の都の記録に残っていたリアモンドさまのもの!
こちらが本物か、いや最初のものも・・・。同様な波長を発している。
このひとつ下のものはどうだろうか。
確かによくできてはいる。
重さ、質感、輝き、見た目には、本物と区別がつかない。さらにその波動も。
え?
え?
いや、これも、これも、これも、これも
再び、ゾールの額に冷や汗がにじむ。
どうしたというのだ。リアモンドさまの鱗とイミテーションがわらなくなったなど、
そんなことがあるわけがない。
卑小な人間などとは違う。わたしは古竜だ。
わずか650歳で知性を獲得した天才なのだ。
竜でありながら、魔道の真髄を極め、自在にこうして閉ざされた世界の構築もできる。
試したことはまだないが、十分なエネルギーさえ得られれば、「迷宮」ですら作り出すことができるのが、我だ。
この深遠竜たるゾールだ。
たかがフェイクと本物の見分けなど・・・・
どのくらいのときが過ぎたのだろうか。
呆然と座り込むゾールに、怖いほどにやさしい声がひびいた。
「わかったか、蜥蜴。」
あまりの蔑称に、ゾールが激高してさけんだ。
「人間風情がその言葉を高貴なる竜にむかって口にするか!」
あらわれた人影は。
女のものだった。
ゾールは、ラウレスとは違って人間の女性を繁殖の対象とはみなかったから、健康そうで瑕疵のない身体たと思っただけだったが、人間の、そして大人の女性を恋愛対象と見る性癖の持ち主ならば、ひとめで惚れ込んだであろう肢体を、からだにひったりすた薄物ひとつで隠した彼女は優美に微笑んだ。
「・・・まさか、人化した古竜・・・なのか。
わたしは、深淵竜ゾール。わたしの世界に入り込むことのできるとはなみなみならぬ魔力の持ち主と思われる。
ぜひ、お名前をおきかせいただきたい。」
「・・・ふむ、礼儀は心得て折るのか。それとも無意識に己が及ばぬ存在にであるとへりくだるようにしているのか。」
女は、ゆっくりと歩をすすめ・・・座り込んだゾールの目の前につまれた神竜の鱗のイミテーションの山をゆっくりと踏みにじった。
「な、なにをされる。」
再び、ゾールは叫んだ。叫ばずにはいられない。
「これは・・・この中には、あの神竜リアモンドさまの鱗がまじっているのだ。
人間の魔術師の認識阻害魔法のために、どれが本物か特定できずに苦心しているのは事実だが・・・
間違いなく、一枚本物がまじっているのだ・・・無体なことは・・・ああああっ」
女の足のしたで無惨にも鱗がくだけちっていく。
硬質のものが割れる小気味好い音を立てて、鱗は一枚残らずくだけていく。
「や、やめてくれ。世界に5枚しかない至宝の一片がこの中にあるんだ。
なぜ、こんなことをする?
神竜后妃リアモンドさまへの敬意はないのか!」
「いやあ、そんな・・・・」
女は困ったような顔をしながら、鱗の山を粉々に踏みにじり続けた。
「敬意は・・・なんか、ないかなあ。」
「痴れ者があ」
深淵竜ゾールの断層の攻撃は、女の胸を狙った。何度も言うがゾールには人間のメスへの性的な興味はない。
乳房などという器官になにもこだわりはない。
ただ、大きくて的にしやすかっただけだ。
その必殺の断層攻撃が。
チリリ。
はじかれた。
一瞬。
龍鱗がうかんだような気がした。
「やるな。」
リアモンドの鱗を失ったことで激高した深淵竜ゾール。
そして別に自分の剥離した鱗の行末などどうでもいいリアモンド。
二頭の古竜の凄絶なバトルがはじまろうとしていた!
信じられぬ。
あの巨体は、紛れもない。
上古以来、活動の記録のない神獣ギムリウスだ。
あの吸血鬼が真祖リンドならば、たしかにあの力もうなずける。
そして、尻尾を両断したあの剣の技をもつ少年。
空を埋め尽くす炎の矢を作り出したルトとかいう小僧。
・・・あれが、冒険者学校に通う生徒だというのか?
神獣が? 真祖の吸血鬼が? 冒険者学校?
竜の例にもれず、ゾールは人間文化に造詣が深いつもりであった。
いや、人間社会というものは彼が思っていたのものとはまったく違うのかもしれない。
「では、これからホームルームをはじめまあす。」
女教師の声がひびく。
「はーい、先生!」
着席しているのは、神獣に真祖吸血鬼、人化した古竜・・・・
ばかな、そんなばかな。
じゃあ、なにか?
ロゼルの小娘からきいた彼女が所属するクラスのグループ「魔王党」のリーダーは、古の魔王そのひとだとでもいうのか?
自分の妄想に、おかしくなって、くっくっくとゾールが笑い声をたてた。
それよりも、これ。
だ。
ゾールの『収納』から、ザラザラと竜の鱗が溢れ出た。
さきほど、ルトとかいう小僧が持ち出したものだ。ゾールの作り出した空間の破壊とあの謎の世界への転移のどさくさにまぎれて、彼の次元断層にそっくり取り込みそのまま、逃げ出すことに成功したのだ。
さきほどはあまりに見事なイミテーションぶりに、迷ったが、落ち着いて見分ければ、わからぬわけがない。
なにしろ、彼が数百年、知性をもって一番に恋い焦がれたあの神竜リアモンドさまの鱗だ。
彼女のお姿を直視したわけではないが、その波動、その匂い、その魔力のな残り、すべてがゾールの心に焼き付いている。
ほうら、本物はこれだ。
最初に手に取った一枚にまぎれもなく、神竜リアモンドの香りを感じゾールはうっとりと微笑んだ。
いや、まて?
こちらの鱗も。
この鱗に残る魔力の波長は、竜の都の記録に残っていたリアモンドさまのもの!
こちらが本物か、いや最初のものも・・・。同様な波長を発している。
このひとつ下のものはどうだろうか。
確かによくできてはいる。
重さ、質感、輝き、見た目には、本物と区別がつかない。さらにその波動も。
え?
え?
いや、これも、これも、これも、これも
再び、ゾールの額に冷や汗がにじむ。
どうしたというのだ。リアモンドさまの鱗とイミテーションがわらなくなったなど、
そんなことがあるわけがない。
卑小な人間などとは違う。わたしは古竜だ。
わずか650歳で知性を獲得した天才なのだ。
竜でありながら、魔道の真髄を極め、自在にこうして閉ざされた世界の構築もできる。
試したことはまだないが、十分なエネルギーさえ得られれば、「迷宮」ですら作り出すことができるのが、我だ。
この深遠竜たるゾールだ。
たかがフェイクと本物の見分けなど・・・・
どのくらいのときが過ぎたのだろうか。
呆然と座り込むゾールに、怖いほどにやさしい声がひびいた。
「わかったか、蜥蜴。」
あまりの蔑称に、ゾールが激高してさけんだ。
「人間風情がその言葉を高貴なる竜にむかって口にするか!」
あらわれた人影は。
女のものだった。
ゾールは、ラウレスとは違って人間の女性を繁殖の対象とはみなかったから、健康そうで瑕疵のない身体たと思っただけだったが、人間の、そして大人の女性を恋愛対象と見る性癖の持ち主ならば、ひとめで惚れ込んだであろう肢体を、からだにひったりすた薄物ひとつで隠した彼女は優美に微笑んだ。
「・・・まさか、人化した古竜・・・なのか。
わたしは、深淵竜ゾール。わたしの世界に入り込むことのできるとはなみなみならぬ魔力の持ち主と思われる。
ぜひ、お名前をおきかせいただきたい。」
「・・・ふむ、礼儀は心得て折るのか。それとも無意識に己が及ばぬ存在にであるとへりくだるようにしているのか。」
女は、ゆっくりと歩をすすめ・・・座り込んだゾールの目の前につまれた神竜の鱗のイミテーションの山をゆっくりと踏みにじった。
「な、なにをされる。」
再び、ゾールは叫んだ。叫ばずにはいられない。
「これは・・・この中には、あの神竜リアモンドさまの鱗がまじっているのだ。
人間の魔術師の認識阻害魔法のために、どれが本物か特定できずに苦心しているのは事実だが・・・
間違いなく、一枚本物がまじっているのだ・・・無体なことは・・・ああああっ」
女の足のしたで無惨にも鱗がくだけちっていく。
硬質のものが割れる小気味好い音を立てて、鱗は一枚残らずくだけていく。
「や、やめてくれ。世界に5枚しかない至宝の一片がこの中にあるんだ。
なぜ、こんなことをする?
神竜后妃リアモンドさまへの敬意はないのか!」
「いやあ、そんな・・・・」
女は困ったような顔をしながら、鱗の山を粉々に踏みにじり続けた。
「敬意は・・・なんか、ないかなあ。」
「痴れ者があ」
深淵竜ゾールの断層の攻撃は、女の胸を狙った。何度も言うがゾールには人間のメスへの性的な興味はない。
乳房などという器官になにもこだわりはない。
ただ、大きくて的にしやすかっただけだ。
その必殺の断層攻撃が。
チリリ。
はじかれた。
一瞬。
龍鱗がうかんだような気がした。
「やるな。」
リアモンドの鱗を失ったことで激高した深淵竜ゾール。
そして別に自分の剥離した鱗の行末などどうでもいいリアモンド。
二頭の古竜の凄絶なバトルがはじまろうとしていた!
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