17 / 38
16、嘘つきと偽物、紛い物、フェイクとイミテーションその4
しおりを挟む
「ランゴバルド博物館の件。」
と、ぼくが言うと、ああ、とエミリアは答えた。
とたんにやる気がなくなったのが、これも表情に現れていた。
そうですか。
これを見てもその表情が続けられるかな?
~~~~~よ。
ぼくはポケットから、手のひらに収まる程度の極彩色に輝く破片を取り出した。
さすがにあまり大っぴらでもなく、食卓の下でそっと。
がりっ。
いやな音がした。
エミリアがスプーンを噛み砕いた音だった。
ばり。
ばり。
ごり。
木製のスプーンを咀嚼している。
ゴクリ。
と喉がなる。
「それは?」
「ランゴバルド博物館の隠し部屋の一品。」
バンとテーブルをたたいて、エミリアが立ち上がる。
それほど、混み合ってはいなかったが、昼食どきの学食だった。
周りの目が集まる。
エミリアはどこからか取り出したのか、頑丈そうな木の棒を構えている。
身長に近い長さのそんな武器をどこに隠し持っていたのか。
この間合いならば、一撃でこのぼくを昏倒させられる。
で、昏倒させてどうする。
どうする。
どうする。
どうにもならないことに気がついたのか。
エミレアはもう一度、座った。
ぽて。
と、お尻が椅子に着地した可愛い音がした。
「ほ、ほ、ホ、」
「本物かと言われればそう。」
「な、な、な、なに、に、に、」
「考えたんだ。
博物館は、一般の人たちもたくさん出入りする。あそこでは、とても守りきれない。
ならばいっそ、ぼくが持っていた方が、確実に守れるのではないか、と。」
「に、に、に、にふ、」
「ニフフ副館長はさすがに知りません。」
「ど、ど、どう、どうして」
「アモンは『神竜の鱗』のイミテーションを集めるのが、趣味で。
一つもらって、こっそり入れ替えてきました。
どう言うものか、ぼくはニフフ副館長に信頼が厚くてね。」
「わ、わかった。」
口調が少し変わっていた。
「で、当日はどうする?」
「黒蜥蜴なる賊を捕まえることに全力を集中しようと思うけど、どうだろう?」
「わかった。ならば、わざと警備の冒険者をあの部屋から遠ざけよう。
黒蜥蜴は、イミテーションをつかまされた挙句に、わたしたちにお縄になる。」
「そして、神竜の鱗をもとに戻してめでたしめでたし、と。」
エミリアの顔色はまだすぐれない。
「黒蜥蜴は何ものか、な。」
ぼくは余裕たっぷりに笑って見せた。
「だって、今までなんの活動歴もないただの道化もんだよ。
ぼくはむしろ、もう一つの方を心配してるんだ。」
「もう、一つ・・・てなに、かな?」
「神竜の鱗が自分達のものだと主張するロゼル一族とかいう、連中だ。
盗賊としてより、殺し屋として名高いらしい。
そいつらも実は、神竜の鱗を手中におさめようと暗躍している。」
「そ、そうなの?」
「そしてその黒幕は、迷宮に潜む古竜。深淵竜ゾールと名乗っているようだ。」
「な、なんだかわからないなあ。」
「ロゼル一族は、神竜の鱗を5枚、集めたがっている。
深淵竜ゾールはなにが目的なんだろう?
どうもそいつは、黒竜ラウレスには、まったく別のことを要求したようなんだ。
つまり。
なにものかが、神竜の鱗を集めている。と、それを阻止しろ、と。」
「古竜の考えなんてわからない!」
「ただの育ちすぎの蜥蜴だ。」
ぼくは、アモンからの受け売りでそんな言葉を使った。
「賢いものもいるが、そうでもないものもいる。
だが、仮にロゼル一族なるものが、神竜の鱗を集めているとして、彼らは場所もわからない竜の都や旅路に数年を要する東域からも、鱗をに盗み出せるほどの力のある組織なんだろうか。
もし、そんな力あったら、ランゴバルド博物館の警護なんてないも同然だ。
とっくに、手に入れて。」
エミリアは、顔を青くしたかと思えば、真っ赤になり、可哀想なくらい狼狽しきっていた。
「手に入れてどうするつもりなんだろう。
神竜の鱗は貴重品すぎて、売りさばくことも不可能に近い。
あの、都市伝説。」
ぼくは、視線の先にアモンの姿を認めた。「神竜騎士団」を三、四人引き連れている。
遠目に会釈すると、ニッと笑って応えてくれた。
「神竜が現れて、願いを叶えてくれる、というお伽話を信じているのか。
なら、その願いとはなんだろう。」
ぼくは、神竜の鱗をポケットに戻して、立ち上がった。
「明日は、夕食を済ませたら、正門前に集合。ドロシーも加えて、三人でまる一日、ランゴバルド博物館に詰めるよ。
出来ればその前に、ロゼル一族と接触したいんだけど。
どうも奴らは、深淵竜とか自称する蜥蜴に、いいように利用されているだけかもしれない。」
と、ぼくが言うと、ああ、とエミリアは答えた。
とたんにやる気がなくなったのが、これも表情に現れていた。
そうですか。
これを見てもその表情が続けられるかな?
~~~~~よ。
ぼくはポケットから、手のひらに収まる程度の極彩色に輝く破片を取り出した。
さすがにあまり大っぴらでもなく、食卓の下でそっと。
がりっ。
いやな音がした。
エミリアがスプーンを噛み砕いた音だった。
ばり。
ばり。
ごり。
木製のスプーンを咀嚼している。
ゴクリ。
と喉がなる。
「それは?」
「ランゴバルド博物館の隠し部屋の一品。」
バンとテーブルをたたいて、エミリアが立ち上がる。
それほど、混み合ってはいなかったが、昼食どきの学食だった。
周りの目が集まる。
エミリアはどこからか取り出したのか、頑丈そうな木の棒を構えている。
身長に近い長さのそんな武器をどこに隠し持っていたのか。
この間合いならば、一撃でこのぼくを昏倒させられる。
で、昏倒させてどうする。
どうする。
どうする。
どうにもならないことに気がついたのか。
エミレアはもう一度、座った。
ぽて。
と、お尻が椅子に着地した可愛い音がした。
「ほ、ほ、ホ、」
「本物かと言われればそう。」
「な、な、な、なに、に、に、」
「考えたんだ。
博物館は、一般の人たちもたくさん出入りする。あそこでは、とても守りきれない。
ならばいっそ、ぼくが持っていた方が、確実に守れるのではないか、と。」
「に、に、に、にふ、」
「ニフフ副館長はさすがに知りません。」
「ど、ど、どう、どうして」
「アモンは『神竜の鱗』のイミテーションを集めるのが、趣味で。
一つもらって、こっそり入れ替えてきました。
どう言うものか、ぼくはニフフ副館長に信頼が厚くてね。」
「わ、わかった。」
口調が少し変わっていた。
「で、当日はどうする?」
「黒蜥蜴なる賊を捕まえることに全力を集中しようと思うけど、どうだろう?」
「わかった。ならば、わざと警備の冒険者をあの部屋から遠ざけよう。
黒蜥蜴は、イミテーションをつかまされた挙句に、わたしたちにお縄になる。」
「そして、神竜の鱗をもとに戻してめでたしめでたし、と。」
エミリアの顔色はまだすぐれない。
「黒蜥蜴は何ものか、な。」
ぼくは余裕たっぷりに笑って見せた。
「だって、今までなんの活動歴もないただの道化もんだよ。
ぼくはむしろ、もう一つの方を心配してるんだ。」
「もう、一つ・・・てなに、かな?」
「神竜の鱗が自分達のものだと主張するロゼル一族とかいう、連中だ。
盗賊としてより、殺し屋として名高いらしい。
そいつらも実は、神竜の鱗を手中におさめようと暗躍している。」
「そ、そうなの?」
「そしてその黒幕は、迷宮に潜む古竜。深淵竜ゾールと名乗っているようだ。」
「な、なんだかわからないなあ。」
「ロゼル一族は、神竜の鱗を5枚、集めたがっている。
深淵竜ゾールはなにが目的なんだろう?
どうもそいつは、黒竜ラウレスには、まったく別のことを要求したようなんだ。
つまり。
なにものかが、神竜の鱗を集めている。と、それを阻止しろ、と。」
「古竜の考えなんてわからない!」
「ただの育ちすぎの蜥蜴だ。」
ぼくは、アモンからの受け売りでそんな言葉を使った。
「賢いものもいるが、そうでもないものもいる。
だが、仮にロゼル一族なるものが、神竜の鱗を集めているとして、彼らは場所もわからない竜の都や旅路に数年を要する東域からも、鱗をに盗み出せるほどの力のある組織なんだろうか。
もし、そんな力あったら、ランゴバルド博物館の警護なんてないも同然だ。
とっくに、手に入れて。」
エミリアは、顔を青くしたかと思えば、真っ赤になり、可哀想なくらい狼狽しきっていた。
「手に入れてどうするつもりなんだろう。
神竜の鱗は貴重品すぎて、売りさばくことも不可能に近い。
あの、都市伝説。」
ぼくは、視線の先にアモンの姿を認めた。「神竜騎士団」を三、四人引き連れている。
遠目に会釈すると、ニッと笑って応えてくれた。
「神竜が現れて、願いを叶えてくれる、というお伽話を信じているのか。
なら、その願いとはなんだろう。」
ぼくは、神竜の鱗をポケットに戻して、立ち上がった。
「明日は、夕食を済ませたら、正門前に集合。ドロシーも加えて、三人でまる一日、ランゴバルド博物館に詰めるよ。
出来ればその前に、ロゼル一族と接触したいんだけど。
どうも奴らは、深淵竜とか自称する蜥蜴に、いいように利用されているだけかもしれない。」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
76
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる