アーリウムの大賢者

佐倉真稀

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再会編(ヒューSIDE)

報酬

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 翌朝、メルトの声が枯れていた。後悔などはしていない。
『ヒュー好き……大好き……』
 などと言われたら、頑張っちゃうのがメイルだろう。

「ワイバーンの査定でてると思うからギルドに行こうと思うんだけど、行けそう?」
 元の姿に戻っていた俺はメルトに問いかけた。気絶するまでずっとしていたから、もしかしたら起き上がれないかもしれない。
「大丈夫だ。今は声があまり出ないけど、午後には戻るんじゃないか? それよりさすがに腹が減った」
「あー……うん。スープとサンドイッチならすぐ出せるよ。ちょっと待ってて」
 魔法で、テーブルを引き寄せてサンドイッチとコーンスープを出す。サンドはたっぷりたまごサンドとレタスをたっぷり挟んだハムサンド。
 ついでに浄化をかけておく。
 メルトは俺のかける浄化がお気に入りだ。俺の魔力が気持ちよくて、さっぱりするからだという。
「食べようか?」
 メルトは美味しそうにサンドを頬張ってあっという間に空にした。追加でBLT サンドやフルーツサンドを出したら、目が輝いていた。
「少しお腹が落ち着くまで休んでからギルドに行こうか。さすがにワイバーンの解体も終わっていると思うんだよね」
「そうだな。大きいから手間がかかるだろうが、人数がいたしな」
 メルトにキスして横に並ぶ。

「メルトはこの街を拠点に動くことに抵抗はない? 僕としては幽玄迷宮があるからここで良いと思ってたんだけど、先日の件があるから嫌だったら、他の街でも……」
「大丈夫だ。襲撃はヒューが助けてくれたおかげで俺に実害はなかったし、ギルドの依頼も豊富で、稼ぎやすそうだ」
「よかった。ギルドの態度次第ではちょっと考えるけど……そろそろ行こうか」
 宿は1週間先払いしてあるから、問題はない。
 出て行く時掃除を頼んで、ギルドに向かった。
「そういえば、パーティーを正式に組んでなかったよね? 今日ついでに手続きしちゃっていいかな?」
「ヒューのカードは使えるようになったんだろう? なら問題はない。お願いする」
「わかった! パーティー名決めないとね」
「任せる」
「……わかった」
 俺のネーミングセンスが問われている。どうしよう。はっきり言ってないんだよな。ネーミングセンス。

 唸りながら歩いているとギルドに到着した。混雑のピークは過ぎたようで、喧騒は聞こえてこない。
 受付に声をかけると「ギルドマスターがお待ちです」と言って面談室に案内された。
 メルトが怪訝な顔をした。
「ここのギルドマスターは元Sランク冒険者だったそうだよ」
「そうなのか」
 ちょっと興味を持った顔をしたのに、俺は内心焦った。メルトは強い人が好きとか。よく漫画や小説にある強い人が好きな設定。私に勝ったら結婚する! みたいな?
 結婚とか、ちゃんとしたほうがいいかな。恋人って熱があるときは仲いいけど、冷めるのも早い。俺のメルトへの思いが冷めることはないし、メルトが俺より強い人に惹かれる可能性はないと思うけど、ちょっと不安だ。
 俺の運命の伴侶なんだ。大切にしたい。

 案内された部屋にはギルドマスターが待っていて、俺と目が合うとその顔が引きつった気がした。
 対面の椅子に座ると、ギルドマスターは俺の方を見ながら話し出す。
「昨日はすまない。あの6人は真っ黒な犯罪者だった。気付かれないよう、初心者の冒険者を狙って事故に見せかけて殺し、金品を奪っていた。最近、GランクやFランクの死亡率が高くて色々調査していたところだった。ギルドに対しては真面目で謙虚な方だったから気付くのが遅れた。捕まえてくれて感謝する。これは報奨金だ」
 昨日ねえ。あの後、かなりの余罪が発覚したのかな? それともミハーラに言われて反省したのかな。脳筋には優秀な副官をつけないとダメだろうな。

 目の前に革袋が置かれて中を確かめると金貨40枚が入っていた。
「少し少ないんじゃないかな~」
 ギルドマスターをじろりと睨むと困ったような苦笑を浮かべた。
「すまないな。ギルドにもいろいろ事情があって、それが精いっぱいだ。まあ、Aランク冒険者の報酬としては少ないだろうが、納得してもらえるとありがたい。ワイバーンの調査には色をつけておいたからそれで勘弁してほしい。それと、緊急依頼がある」
 ギルドマスターが依頼の紙をテーブルに置いた。俺はそれを見て、顔を顰めた。
 ミハーラめ。この依頼は俺にしかできないのをよくわかっている。
「これ、冒険者の僕に宛てたものじゃないね。はあ、面倒。でも行かないとダメか。ミハーラにはとりあえず王都に戻ると伝えて。できる限り最短で行くからと。通信機使ってね。それと、パーティーを組むので登録をお願いしたいな」
「受けてくれるか。わかった。そう伝えておこう。登録はカードとこの紙にパーティー名を書いて預けてくれ。帰りに受付でカードを受け取ってくれ」
 俺はパーティー名を記入し、メルトからギルドカードを預かると自分のカードと一緒に渡した。案内で来ていた受付の職員がカードと用紙を持って出て行った。

 革袋がまた目の前に置かれる。さっきの10倍は大きい。
「これがクエスト完了の報酬だ。卵の個数はまだ確認できてないが竜騎士団に連絡をしたところ、竜騎士団が確認と回収に向かい、それに王都のギルド員が一緒に立ち会うとのことだ。竜騎士団からは感謝されたよ。それもあって報酬をはずむようにと指示があった。ワイバーンの素材は皮も綺麗な状態で最高級のランク評価になった。昨日のうちに商人のオークションにかけてすでに買い手が付いている。ギルドとして、かなりの利益も出ている。何と言っても、犠牲がなかった。本来ならAランク以上の冒険者10人以上か領軍の出る案件だ。と言うわけで金貨200枚が完了報酬、金貨300枚が買い取り報酬だ。これでいいか?」
「ギルドから出る金額としてはまあ妥当かな? いいよ。これで。あ、そうそう、メルトのランク上がるんでしょ?」
「ああ、彼のランクはFを飛ばしてEにした。あのワイバーンの致命傷は剣の傷だった。ワイバーンを狩れる腕前ならFではないと思ってね。Dはあと何か、依頼を達成すれば上がるようにはなっている。あとでカードのポイントを確かめてくれ」
 俺は頷くと金貨を数えた。間違いないので、アイテムボックスに仕舞う。高額の報酬はギルドカードに入れてもらうから、俺はそれほど現金を持っていない。電子マネーカードの機能はばっちりついている。でもほとんど使ってなかったから商会の権利料とか、会頭の報酬とか、えらいことになっていたのを、王都で確認した。それもあって、ミハーラがお冠になっていたのだ。
 これからは失効しないように頑張ろう。メルトが一緒ならいくらでも頑張れる。

 この報酬はメルトと分けるが、パーティーを組むなら共有財産のマネー口座も作らないといけない。必要経費はそこから出すようにする。
 メルトのギルドカードにもある程度お金は入っていた方がいい。カードを受け取るときに口座を開いてもらおう。
「できれば君たちにはデッザを拠点にしてもらいたいが……。今後もよろしく頼む」
 あからさまに荷が下りたという顔をしたギルドマスターをついジト目で見てしまった。
「そうだね。迷宮も近いし、冒険者家業にはいいところだと思っているから考えておこうかな? じゃあ、今日はこれで。行こうメルト」
「ああ」
 俺達は部屋を出て受付に向かった。

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