アーリウムの大賢者

佐倉真稀

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ラーン王国編ー見習い期間の終わりー(メルトSIDE)

最終試験の始まり

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 夏が終わり、秋の風が吹く頃、最終試験の組み合わせ表が張り出された。基本総当たりになる。得物は木剣だから、弓が得意なものや斧や槌、槍の得意なものは不利になる。
 しかし、弓の実技や槍を扱う実技の方で技量を見るからその辺は加味されるようだ。

 俺はいろんな相手と試合ができるのにワクワクして、試験だというのに浮かれていた。普段から鍛錬を欠かさないが、ますます力が入ってもう気温は涼しくなっているのに汗だくになって部屋に戻ったら、ミランに浄化をかけられた。少し気分が悪くなってしまったがすぐ治った。これくらいなら耐えられる。
 たまにかけてもらおう。これからの季節、水で濡らしたタオルで拭くのは少し辛いから。

 一日一人1試合3ヶ月かけて行う。審判をする騎士の都合もあって午前10試合、午後10試合になる。
 それを休息日を入れて行っていくのだ。負傷したりすると順番が入れ替わったりするので、その辺は混乱しないようにしないといけない。
 俺は20番になったから、一日目の最後の試合だ。相手は21番だった。番号は発表されているけど、名前は載ってなかった。
 毎日試合ができるなんて楽しみだ。

「メルト楽しそうだね。」
 明日から試合が始まるという日の夕飯時。ミランが俺の顔を見ていう。
「…うん。試合、楽しみ。」
 コクっとうなずくと、髪をわしゃわしゃと乱された。もう、夏より3センチは背が伸びているはずなのに。
「お互い頑張ろう。ちなみに僕は21番じゃないからね。」
 そう言ってミランは笑った。一緒に食べていた、ポリカとエメリも違うと言われた。
「うん。」

 そうして、最終試験が始まった。2組づつ、同時に試合が行われる。観戦は自由だ。自分が当たる相手を確認するためにも、最初は、皆食い入るように見ている。
 今行われているのは1番と40番、2番と39番だ。
 勝敗は関係ないというけれど、勝ち数が多いほうがいいに決まっている。
 勝ち数をあげたい。優秀だと認められて、第一騎士団に配属されたい。
 頑張りたい。夢を応援してくれた家族にもちゃんと騎士になれたって言いたい。

 歓声が上がって試合が終わった。
 1番と39番が勝った。
 俺の試合は最後だ。見るのも経験だから、戦法は参考にしよう。
 10試合が終わって昼になる。見てきた試合を頭の中で分析する。
 俺ならどう動くか。
 足運びは、剣の構え方は?
 考え込んでしまって、食べるのを忘れた。
 ミランが苦笑しながら教えてくれて、慌てて掻き込んだ。

 午後の試合も緊張の中、トラブルもなく進んでいった。そして俺の試合だ。
「20番!」
 呼ばれて、試合場に立つ。
「21番!」
 相手はあまり関わったことのない相手だった。野営訓練でも後半組だったのではないだろうか。
「始め!」
 俺は、相手を待つつもりでいた。構えて油断はしなかった。だけど、気がついたら目の前に剣があった。弾こうとしてぶつかる。
「ちっ」
 相手の舌打ちが聞こえた。俺は弾き返すと後ろに下がった。しかし、すぐに詰められてしまう。

 身体強化?スキル?
 俺はスキルも魔法も使えない。
 あるのは練習で培った技術だけ。まだまだ筋力もないし、体も出来上がっていない。
 だけど、すぐ諦めることはできない。
 この素早い相手の動きを捉えなければ。

 身体強化と、スキル。両方の可能性もある。先回りして、予測して、剣を置かないと、すぐ勝負はついてしまう。俺より一回り逞しい体躯。腰の動きも安定している。動きが軽い。

 でも。

 狙っているところが目線に出る。
 だから、剣を置ける。かろうじて間に合うくらい。それでも。
 カン、カン、と、木剣が当たる音が響いて、相手の顔に焦燥が滲んだ。
 多分、初手で沈ませるつもりだったのだろう。全部防がれて焦りが出ている。
 防戦一方だったけれど、これで隙が狙える。

「くそっ」
 剣の振りが大振りになってきた。相手の息が上がった。スキルか、魔法はスタミナ切れになったらしい。
「これで沈め!」
 上段から振り下ろされる剣。待っていた隙。俺は相手の懐に飛び込んで剣を相手の喉元に突きつけた。

「勝者、20番!」
 上がる声に拳を握った。
 スキルと魔法に勝てた。
 訓練すれば勝てるのだと、自信がついた。

 俺はもっと、強くなれる。

 短くなった日が急速に傾いていく中、俺は自分の中の方向性が間違っていなかったことに胸を熱くしていた。



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