よろず魔法使いの日記帳 【第一部 ダンジョンの謎】

藻ノかたり

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最後の謎解き(4/4)

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まずは、未踏破部分の話になります。

ダンジョンに残る未踏破部分については、探索中にも疑問がありましたよね。何でそこは踏破しないで、不自然に残っているのかって……。それについても、ガスラムの戦略だったようです。

彼にとって、抜け穴の位置を知られるのはどうしても避けたかった。これは私たちがダンジョンに入る前からそうでした。やはり余人がその存在を知らなければ、彼はかなり自由に動けたわけですからね。

しかし誰かがいつかは、抜け穴がある可能性に気が付くかも知れない。その場合、少しでも抜け穴の場所が発覚するのを遅らせたいと考えるのは理解できます。そこで未踏破部分を適当に残しておいて、そちらに注意をひく算段だったようです。その間に本当の出入り口を、より強力に隠するつもりだったのでしょう。そこで言葉巧みにパーティーメンバーの心理を操り、調べない部分を作っていたんですね。

次に地上階の爆破が、何故あのタイミングだったのか? もっと早くでも良かったのではないかという疑問がありました。それについては至極単純な答えで、いわゆるアリバイ工作だったようです。

ガスラムは自分が疑われている事にうすうす感づいていたようで、そんな中、アリバイがない時に爆発が起きたら、疑惑が大きくなるのは必定です。彼が選べるタイミングが、あの時しかなかったという事なのでしょう。

もちろん時限式の魔法や魔使具がありますから、完全なアリバイとは行きませんが、それでも無いよりはマシという心づもりだったようです。

あと、抜け穴があると分かった以後に、頭に浮かんだ疑問があります。

最深部の仕掛けが中途半端だった理由について、私たちは「最近まで最深部には人が大勢いたので、隙を見て完璧な隠ぺいをするのは難しかった」との見解を得ていました。

しかし私たちが来る少し前あたりから、ダンジョン内では浅層にしか兵隊たちの巡回はなかったのですから、抜け穴を使って侵入し、念のため隠ぺいの追加をする事は出来たはずです。

それをしなかったのは何故か?

これも運と言いましょうかね。一つは疑惑を掛けられていると知ったガスラムが、迂闊には動けなかった事。パーティーがダンジョンに入った後に関しては、私たちが刺客を次々と倒してしまったので、いつ最深部へ来るのかわからず、鉢合わせするのを避ける為だったようです。

まぁ、とりあえずは以上をもって、謎解きは終わりです。リンシードさんにご満足いただけたかは甚だ自信がありませんが、今回はこの辺でご容赦下さい。

ちなみに同じ内容の手紙をポピッカさんとテュラフィーさん宛てに送付しておきました。ゲルドーシュさん宛に送らなかったのは、内容が内容だからです。あの方は戦士としては超一流ですし、立派な男気も持ち合わせてはいますが、少々迂闊な所があるように思いますので……(これは、内緒に願います)。

テュラフィーさんなら万事を承知した上で、夫のゲルドーシュさんに上手く話してくれると考えました。

さて、今回は用件のみとはなりましたが、これにて失礼致します。ポピッカさんの教会も彼女が持ち返った報酬で一段落したようですし、また近いうちに、パーティーメンバーとテュラフィーさんを交えた五人で集まりましょう。

その日を楽しみにしています。その時にはゲルドーシュさんが言っていた、リンシードさんの"自虐"の話も聞けると幸いです(すいません、少し本気です)。

ではお体を大切に、近いうちにまた。


2023年 キッサーの月 第15日

ロマリアス・E・ザレドス

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以上がザレドスが送って来た真相の全てとなる。ボクとしても納得のいく内容で、さすがとしか言いようがない。不動産屋のほうは恐らく表ざたにはならないだろうが、何がしかの情報はその内に伝わってくるだろう。

だけどあれから、もう三ヶ月か。その間にこちらも幾つかの出来事があったけど、皆はどうだったのだろうか。ザレドスの言うように、近いうちに会えればいいなぁ…。

※ この部分まで、2023年 キッサーの月 第20日に記す。
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