よろず魔法使いの日記帳 【第一部 ダンジョンの謎】

藻ノかたり

文字の大きさ
上 下
110 / 115

最後の謎解き(4/4)

しおりを挟む
まずは、未踏破部分の話になります。

ダンジョンに残る未踏破部分については、探索中にも疑問がありましたよね。何でそこは踏破しないで、不自然に残っているのかって……。それについても、ガスラムの戦略だったようです。

彼にとって、抜け穴の位置を知られるのはどうしても避けたかった。これは私たちがダンジョンに入る前からそうでした。やはり余人がその存在を知らなければ、彼はかなり自由に動けたわけですからね。

しかし誰かがいつかは、抜け穴がある可能性に気が付くかも知れない。その場合、少しでも抜け穴の場所が発覚するのを遅らせたいと考えるのは理解できます。そこで未踏破部分を適当に残しておいて、そちらに注意をひく算段だったようです。その間に本当の出入り口を、より強力に隠するつもりだったのでしょう。そこで言葉巧みにパーティーメンバーの心理を操り、調べない部分を作っていたんですね。

次に地上階の爆破が、何故あのタイミングだったのか? もっと早くでも良かったのではないかという疑問がありました。それについては至極単純な答えで、いわゆるアリバイ工作だったようです。

ガスラムは自分が疑われている事にうすうす感づいていたようで、そんな中、アリバイがない時に爆発が起きたら、疑惑が大きくなるのは必定です。彼が選べるタイミングが、あの時しかなかったという事なのでしょう。

もちろん時限式の魔法や魔使具がありますから、完全なアリバイとは行きませんが、それでも無いよりはマシという心づもりだったようです。

あと、抜け穴があると分かった以後に、頭に浮かんだ疑問があります。

最深部の仕掛けが中途半端だった理由について、私たちは「最近まで最深部には人が大勢いたので、隙を見て完璧な隠ぺいをするのは難しかった」との見解を得ていました。

しかし私たちが来る少し前あたりから、ダンジョン内では浅層にしか兵隊たちの巡回はなかったのですから、抜け穴を使って侵入し、念のため隠ぺいの追加をする事は出来たはずです。

それをしなかったのは何故か?

これも運と言いましょうかね。一つは疑惑を掛けられていると知ったガスラムが、迂闊には動けなかった事。パーティーがダンジョンに入った後に関しては、私たちが刺客を次々と倒してしまったので、いつ最深部へ来るのかわからず、鉢合わせするのを避ける為だったようです。

まぁ、とりあえずは以上をもって、謎解きは終わりです。リンシードさんにご満足いただけたかは甚だ自信がありませんが、今回はこの辺でご容赦下さい。

ちなみに同じ内容の手紙をポピッカさんとテュラフィーさん宛てに送付しておきました。ゲルドーシュさん宛に送らなかったのは、内容が内容だからです。あの方は戦士としては超一流ですし、立派な男気も持ち合わせてはいますが、少々迂闊な所があるように思いますので……(これは、内緒に願います)。

テュラフィーさんなら万事を承知した上で、夫のゲルドーシュさんに上手く話してくれると考えました。

さて、今回は用件のみとはなりましたが、これにて失礼致します。ポピッカさんの教会も彼女が持ち返った報酬で一段落したようですし、また近いうちに、パーティーメンバーとテュラフィーさんを交えた五人で集まりましょう。

その日を楽しみにしています。その時にはゲルドーシュさんが言っていた、リンシードさんの"自虐"の話も聞けると幸いです(すいません、少し本気です)。

ではお体を大切に、近いうちにまた。


2023年 キッサーの月 第15日

ロマリアス・E・ザレドス

*******************

以上がザレドスが送って来た真相の全てとなる。ボクとしても納得のいく内容で、さすがとしか言いようがない。不動産屋のほうは恐らく表ざたにはならないだろうが、何がしかの情報はその内に伝わってくるだろう。

だけどあれから、もう三ヶ月か。その間にこちらも幾つかの出来事があったけど、皆はどうだったのだろうか。ザレドスの言うように、近いうちに会えればいいなぁ…。

※ この部分まで、2023年 キッサーの月 第20日に記す。
----------------------------

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

悪魔

夕時 蒼衣
恋愛
ある日青年は、今日という日に疑問を感じる。そんな彼に悪魔はあざ笑うかのようにささやく。 私は彼女を捨てた。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?

恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢 この婚約破棄はどうなる? ザッ思いつき作品 恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

処理中です...