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つかの間の歓談
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「ふっ、ところで旦那よぉ。さっきの戦いで、ポピッカがリバースと癒しの魔法を使ったあと、すぐにはどれが本物の弱点かわからなかったじゃんか。あん時、結構、心の中で自虐してたんじゃねぇのか?」
ゲルドーシュが、からかうような口調で話を振る。
「あ、そう言えば、魔獣が召喚魔使具から出た時にもそんなこと言ってましたわよね」
すぐにポピッカが食いついてきた。
「おぉよ、スタンの旦那はよ、冷静沈着かつ大らかな感じがするけど、結構、あれこれと思い悩んで自虐するタイプなんだ」
ゲルドーシュが、とんでもない事を話し始める。
「お、おい、ちょっとゲル」
「へぇ~、意外ですわね」
ポピッカが流し目で僕を見つめる。
「だろ? 前にもさ……」
「わぁ~っ、やめてくれぇ~」
ボクは自身の面目を、丸つぶれにする話をしようとするゲルドーシュを必死に止める。
「まぁ、まぁ。それは又の機会にしましょうよ。今の魔獣戦、皆が余すところなく力を出し切ったのが最大の勝因だとは思いますが、それとて、スタンの適切な指示があったればこそでしょう?
それに免じて、今はやめときましょう」
ザレドスが神の如き救済の手を差し伸べた。
「ま、それもそうだな。楽しみは後にとっておくか」
「そうですわね。少し残念ですけれど」
すっかり息の合った戦士と僧侶が楽し気に納得する。
「さ、さてと……、そろそろ体力も回復してきたころかな……?」
バツの悪くなったボクは、話題をそらす。
「そうですね。では私は妨害者が張った入り口の結界を解除してきます。さっきも言った通り、二十分くらい見ておいてください。」
ザレドスは、すっくと立ちあがり、広間に通じる一本道の方へと歩き出した。
「あ、お願いするね……。ゲルドーシュ、体力の方はどうだい。まだのようならポピッカに癒しの魔法をかけてもらって……」
「いや、大丈夫だ。もしこれ以上妨害者が何かしてくるようなら、その時に改めて頼むわ」
意外と素直にポピッカの助力を得る心づもりのゲルドーシュ。以前であれば、意地でも彼女に助けを求めなかったであろう。今回の魔獣戦、これは本当に皆の絆を一層強めたようだ。
「問題は、この後ですわね」
ポピッカが、真顔でボクたちを見回す。
「この後って何だよ。魔獣は、ものの見事に倒したじゃんか」
ゲルドーシュが不思議そうな顔をした。
「ゲル、忘れていないかい? ボクたちも妨害者も、未だこの迷宮に閉じ込められている事に変わりはないんだぞ」
「あっ、そっか! 救助されるまでは、油断ならねぇって話だな」
ボクの答えに、ゲルドーシュは早速事態を呑み込んだ。
ゲルドーシュが、からかうような口調で話を振る。
「あ、そう言えば、魔獣が召喚魔使具から出た時にもそんなこと言ってましたわよね」
すぐにポピッカが食いついてきた。
「おぉよ、スタンの旦那はよ、冷静沈着かつ大らかな感じがするけど、結構、あれこれと思い悩んで自虐するタイプなんだ」
ゲルドーシュが、とんでもない事を話し始める。
「お、おい、ちょっとゲル」
「へぇ~、意外ですわね」
ポピッカが流し目で僕を見つめる。
「だろ? 前にもさ……」
「わぁ~っ、やめてくれぇ~」
ボクは自身の面目を、丸つぶれにする話をしようとするゲルドーシュを必死に止める。
「まぁ、まぁ。それは又の機会にしましょうよ。今の魔獣戦、皆が余すところなく力を出し切ったのが最大の勝因だとは思いますが、それとて、スタンの適切な指示があったればこそでしょう?
それに免じて、今はやめときましょう」
ザレドスが神の如き救済の手を差し伸べた。
「ま、それもそうだな。楽しみは後にとっておくか」
「そうですわね。少し残念ですけれど」
すっかり息の合った戦士と僧侶が楽し気に納得する。
「さ、さてと……、そろそろ体力も回復してきたころかな……?」
バツの悪くなったボクは、話題をそらす。
「そうですね。では私は妨害者が張った入り口の結界を解除してきます。さっきも言った通り、二十分くらい見ておいてください。」
ザレドスは、すっくと立ちあがり、広間に通じる一本道の方へと歩き出した。
「あ、お願いするね……。ゲルドーシュ、体力の方はどうだい。まだのようならポピッカに癒しの魔法をかけてもらって……」
「いや、大丈夫だ。もしこれ以上妨害者が何かしてくるようなら、その時に改めて頼むわ」
意外と素直にポピッカの助力を得る心づもりのゲルドーシュ。以前であれば、意地でも彼女に助けを求めなかったであろう。今回の魔獣戦、これは本当に皆の絆を一層強めたようだ。
「問題は、この後ですわね」
ポピッカが、真顔でボクたちを見回す。
「この後って何だよ。魔獣は、ものの見事に倒したじゃんか」
ゲルドーシュが不思議そうな顔をした。
「ゲル、忘れていないかい? ボクたちも妨害者も、未だこの迷宮に閉じ込められている事に変わりはないんだぞ」
「あっ、そっか! 救助されるまでは、油断ならねぇって話だな」
ボクの答えに、ゲルドーシュは早速事態を呑み込んだ。
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