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ザレドス決死行
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「落ち着きなさい、ゲル。慌ててしまったら敵の思うつぼですわ! ……う、うっ!」
魔獣の側面に立っていたポピッカが、いきなり両ひざをつく。
「どうした、ポピッカ! 」
ゲルドーシュが素早く駆け寄り、僧侶の華奢な体を支えた。
「少々、力を使いすぎたようですわ。……肝心な時に情けない」
そうか……、妖精の羽根の力、この力を使えば彼女の体内で魔力と体力のバランスが崩れ、極度に消耗する事はオーガ達との戦いでわかっていたはずなのに!
「旦那、もう少しだけ奴を留めておいてくれ!」
ゲルドーシュは半分意識を失ったポピッカを抱きかかえ、広間の反対側へと全速力で突っ走る。
その間も、魔獣は徐々にダメージを回復し、ボクの戒めから逃れようと必死に抵抗する。ボクは迷いながらも腕力向上の魔法を最大限のレベルにまで引き上げた。マジックエッセンスの消費量は甚大になり、あと数分しか持たないのは明白だったが、ここで奴を解き放てば全てが終わる。
「ゲ……ゲル……、何をやっているんですの……。早くスタンのところへ……戻りなさい……」
朦朧とした意識の中でポピッカが囁いた。
「馬鹿、喋るんじゃねぇ」
「……まだ、まだ戦えますわ。私には、取って置きの……」
「こんな時に、負け惜しみ言うんじゃねぇよ。前にお前が俺を助けてくれた時、今度は俺がお前の盾になるって約束したじゃねぇか。大人しくここで見てろ」
そう言い残すと、ゲルドーシュは魔獣に向かい踵を返した。
「スタン! わかりました。奴のマジックエッセンスの流れは背中に集中しています。本物のビートブラックパイはそこです。
爆裂付きのゲルの一撃をそこに!!」
ザレドスが雄叫びにも似た報告をする。
ボクは体制を崩さない様に注意しながら、細工師の指摘した箇所を探した。しかし、ない。何もないのだ。
「見つからない!」
ボクは懇願するようにザレドスに答える。
「そ、そんな馬鹿な。こちらの魔使具には、確かにマジックエッセンスの収束が検知されています!」
ボクの意外な答えに狼狽するザレドス。
「でも本当に……」
そう言いかけて、ボクはハッとする。
「隠蔽だ! 奴は本当の弱点を魔法で可視できないようにしてるんだ」
「なるほど、道理ですな!」
ザレドスが呼応する。
弱点があるのは背中、それはわかった。しかし見た目には何もない。ゲルドーシュが放つ爆裂付きの一撃はあと一度しか放つ事が出来ない。あてずっぽうで、どうにかなる問題ではない。
さぁ、どうする!?
次の瞬間、困り果てたボクは驚くべきものを目の当たりにした。ザレドスがこちらへ向かって走ってくるのである。
「おい、ザレドス、なにやってんだ。下がれ!」
細工師の一歩手前を駆けていたゲルドーシュが、細工師を止めようとする。
「邪魔しないで! 私には奴の隠ぺい魔法を解除する術があります。お忘れか!?」
理屈は確かにそうだ。だが今は、ボクがギリギリのところで魔獣の動きを封じているに過ぎない。こんなところにアイテムによる不十分な防御魔法しか張っていないザレドスが来るのは自殺行為である。それは本人が一番わかっているはずだ。
「戻れ、ザレドス!」
「他に方法はないでしょ? 今は全員が命を掛けなければならない時ですよ」
制止する僕の言葉を細工師が遮った。
確かにその通りだが……。ボクは迷いつつもゲルドーシュに指示を出す。
「ゲル、魔獣がザレドスを補足出来ない様に牽制してくれ!」
いよいよベルインパクトの余韻が抜け始めたガノザイラは、自らに近づく敵を威嚇するように右腕をあげる。ボクは、奴の肩の触手を絡めとった魔奏スティックから伸びた電撃の鞭を、渾身の力で引きしぼる。
そしてゲルドーシュのけん制も手伝って、ザレドスは無事に魔獣の後ろへ回り込む事が出来た。しかしこれは極めて危険な状態である。今のザレドスでは、敵の一撃がかすっただけでも命にかかわる大ケガをしてしまうだろう。
間髪入れずザレドスが、魔獣の弱点があると思われる背中へ魔使具を向けスイッチを入れる。ガノザイラの背面が淡い光に包まれた。
身の危険を察知した魔獣が渾身の一撃を加えようと、ザレドスの方へ体をねじろうとしている。
「もう限界だ。ザレドス逃げろ!」
「だめです。もう少し、もう少しなんだ!」
ザレドスはボクの指示を無視し、魔獣に魔使具の魔法を当て続けた。ガノザイラの本当の弱点が存在する場所に薄っすらと何かが浮かびあがって来る。
「よし、これで!」
細工師が安堵の表情を浮かべたその時、魔獣は遂に横に向きを変えた。ボクは電撃鞭を手放さなかったものの、体を大きく移動させられる。そして魔獣の右腕が細工師の頭上に振り降ろされた。
「ザレドス、ちょっと我慢しろよ!」
仲間の死を予感したボクの目の前で、ゲルドーシュが細工師を思いきり蹴り飛ばす。小柄なザレドスの体はゴムまりの如く宙を舞い、地面にぶつかった後も激しく跳ね転がっていった。次の瞬間、魔獣の腕が床石を砕く。
「ザレドス!」
うずくまった細工師は、ボクの呼びかけに全く応えない。
魔獣の側面に立っていたポピッカが、いきなり両ひざをつく。
「どうした、ポピッカ! 」
ゲルドーシュが素早く駆け寄り、僧侶の華奢な体を支えた。
「少々、力を使いすぎたようですわ。……肝心な時に情けない」
そうか……、妖精の羽根の力、この力を使えば彼女の体内で魔力と体力のバランスが崩れ、極度に消耗する事はオーガ達との戦いでわかっていたはずなのに!
「旦那、もう少しだけ奴を留めておいてくれ!」
ゲルドーシュは半分意識を失ったポピッカを抱きかかえ、広間の反対側へと全速力で突っ走る。
その間も、魔獣は徐々にダメージを回復し、ボクの戒めから逃れようと必死に抵抗する。ボクは迷いながらも腕力向上の魔法を最大限のレベルにまで引き上げた。マジックエッセンスの消費量は甚大になり、あと数分しか持たないのは明白だったが、ここで奴を解き放てば全てが終わる。
「ゲ……ゲル……、何をやっているんですの……。早くスタンのところへ……戻りなさい……」
朦朧とした意識の中でポピッカが囁いた。
「馬鹿、喋るんじゃねぇ」
「……まだ、まだ戦えますわ。私には、取って置きの……」
「こんな時に、負け惜しみ言うんじゃねぇよ。前にお前が俺を助けてくれた時、今度は俺がお前の盾になるって約束したじゃねぇか。大人しくここで見てろ」
そう言い残すと、ゲルドーシュは魔獣に向かい踵を返した。
「スタン! わかりました。奴のマジックエッセンスの流れは背中に集中しています。本物のビートブラックパイはそこです。
爆裂付きのゲルの一撃をそこに!!」
ザレドスが雄叫びにも似た報告をする。
ボクは体制を崩さない様に注意しながら、細工師の指摘した箇所を探した。しかし、ない。何もないのだ。
「見つからない!」
ボクは懇願するようにザレドスに答える。
「そ、そんな馬鹿な。こちらの魔使具には、確かにマジックエッセンスの収束が検知されています!」
ボクの意外な答えに狼狽するザレドス。
「でも本当に……」
そう言いかけて、ボクはハッとする。
「隠蔽だ! 奴は本当の弱点を魔法で可視できないようにしてるんだ」
「なるほど、道理ですな!」
ザレドスが呼応する。
弱点があるのは背中、それはわかった。しかし見た目には何もない。ゲルドーシュが放つ爆裂付きの一撃はあと一度しか放つ事が出来ない。あてずっぽうで、どうにかなる問題ではない。
さぁ、どうする!?
次の瞬間、困り果てたボクは驚くべきものを目の当たりにした。ザレドスがこちらへ向かって走ってくるのである。
「おい、ザレドス、なにやってんだ。下がれ!」
細工師の一歩手前を駆けていたゲルドーシュが、細工師を止めようとする。
「邪魔しないで! 私には奴の隠ぺい魔法を解除する術があります。お忘れか!?」
理屈は確かにそうだ。だが今は、ボクがギリギリのところで魔獣の動きを封じているに過ぎない。こんなところにアイテムによる不十分な防御魔法しか張っていないザレドスが来るのは自殺行為である。それは本人が一番わかっているはずだ。
「戻れ、ザレドス!」
「他に方法はないでしょ? 今は全員が命を掛けなければならない時ですよ」
制止する僕の言葉を細工師が遮った。
確かにその通りだが……。ボクは迷いつつもゲルドーシュに指示を出す。
「ゲル、魔獣がザレドスを補足出来ない様に牽制してくれ!」
いよいよベルインパクトの余韻が抜け始めたガノザイラは、自らに近づく敵を威嚇するように右腕をあげる。ボクは、奴の肩の触手を絡めとった魔奏スティックから伸びた電撃の鞭を、渾身の力で引きしぼる。
そしてゲルドーシュのけん制も手伝って、ザレドスは無事に魔獣の後ろへ回り込む事が出来た。しかしこれは極めて危険な状態である。今のザレドスでは、敵の一撃がかすっただけでも命にかかわる大ケガをしてしまうだろう。
間髪入れずザレドスが、魔獣の弱点があると思われる背中へ魔使具を向けスイッチを入れる。ガノザイラの背面が淡い光に包まれた。
身の危険を察知した魔獣が渾身の一撃を加えようと、ザレドスの方へ体をねじろうとしている。
「もう限界だ。ザレドス逃げろ!」
「だめです。もう少し、もう少しなんだ!」
ザレドスはボクの指示を無視し、魔獣に魔使具の魔法を当て続けた。ガノザイラの本当の弱点が存在する場所に薄っすらと何かが浮かびあがって来る。
「よし、これで!」
細工師が安堵の表情を浮かべたその時、魔獣は遂に横に向きを変えた。ボクは電撃鞭を手放さなかったものの、体を大きく移動させられる。そして魔獣の右腕が細工師の頭上に振り降ろされた。
「ザレドス、ちょっと我慢しろよ!」
仲間の死を予感したボクの目の前で、ゲルドーシュが細工師を思いきり蹴り飛ばす。小柄なザレドスの体はゴムまりの如く宙を舞い、地面にぶつかった後も激しく跳ね転がっていった。次の瞬間、魔獣の腕が床石を砕く。
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