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謎の正体
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「はい。私がここに来て初めて壁を測定した時、ノイズのようなものがあると言ったのを覚えているでしょうか。それに、先ほどスタンが”壁に仕掛けられた魔法の全ては解除していない”とも……。
実はその解除していない魔法というのが、くだんのノイズだったんですよ。それを詳細に調べてみると、そのノイズも”インチキ”の一つだったんです。それを今から証明します。では、問題のノイズを消去してみますね」
細工師は別の魔使具を取り出して、壁全体に処理を施した。
「さぁ、ではもう一度、壁の厚みを測定してみましょう」
調査用魔使具を壁にあて、その厚みを再計測するザレドス。ほどなくその結果を皆の前に披露する。
「こ、これは……一体どういうことですの!?」
ポピッカが驚嘆の声をあげた。
魔使具のディスプレイには「材質”石”、厚み=三十センチ、その先の岩盤の厚み=測定可能領域外」と表示されている。これは一体何を意味するのか?
「……すまねぇ、俺はもう本当に何が何やらわからなくなっちまった……」
ゲルドーシュが頭を抱える。
さぁてと、いよいよ謎解きのクライマックスだ。
「じゃぁ、ボクから結論を言おう。
第二の可能性について、全ての事象を考え合わせるとだね。
最初っから、壁の向こう側に空間なんて”存在しない”って事なのさ! 三十センチの壁の向こう側は、元々ある岩盤だ」
ボクは、高らかに宣言した。そして呆気に取られている戦士と僧侶をよそに説明を続けた。
「それからさ、壁の厚さを調査した時、1メートル強と結果が出るように妨害者が偽装したのは、こういう理由からだと思うんだ。
厚みが三十センチ程度なら鳴動しようがどうしようが、無理矢理にでも穴を開けようとするかも知れないけれど、さすがに1メートル以上ともなれば、広場崩壊の危険を考えないわけには行かないだろう?」
横にいるザレドスが、”さんざん私に説明させておいて、オイシイところは持っていきますな”と言いたげな目をしているがしょうがない。これはリーダーとしてのケジメであり特権なのだ。
「あっー!! ますます、わかんねぇ!
普通は”何かある”事を隠すのに、色々と策を弄するよな? だけど今回は、”何もない”事を隠すのに七面倒くさいインチキをあちこちに仕掛けたって事なのか?」
ゲルドーシュの頭はパニック寸前だ。
「そうですわよ。それだとゼットツ州は、ありもしない空間に怯えていた事になりますわよね。もしかしたら、その先から魔物が出て来たり呪いのアイテムがあるかも知れないっていう……。
しかもそのせいで、このダンジョンを含む遺跡一帯の都市開発が、著しく遅れているんですのよね。それってどういう……」
ポピッカも混乱しきりのようである。
そんな二人を無視するかのように、ザレドスがボクに耳打ちをする。そして、ボクは振り返った
「じゃぁ、その辺の事情を聞いてみようじゃないか。この壮大でバカげた仕掛けを施した張本人にさ」
「は? なに言ってんだ旦那」
「右に同じですわ。スタン、一体何を……」
二人を尻目にボクは魔奏スティックを、出入り口に近い広間の角に向ける。スティックの先がほのかに光り、次の瞬間、高出力のライトニングアローがけたたましい轟音と共に発射された。
身構える、ボクとザレドス。呆気にとられるゲルドーシュとポピッカ。
雷光の矢が部屋の隅に届こうとした直前、それは見えない壁に阻まれ爆音とともに四散した。雷撃特有の無数のバチバチと音をたてる小さい雷が消えゆく中、見えない壁の向こう側から明らかに魔法使いとおぼしき人影が姿を現す。
「あぁ? 何だあいつは? どっから出てきやがった」
反射的に剣を抜いて、臨戦態勢に入るゲルドーシュ。同様にポピッカも、ザレドスを護衛できる場所に素早く位置取りする。
「紹介しよう。彼がこのインチキの主催者であり、ボクたちが呼ぶところの”妨害者”その人だ!」
ボクたち四人の視線が、正体を現した敵をねめつける。
「……なんで、わかった……?」
僕より少し背が高い魔法使いの男は、困惑と怒りがない交ぜの表情で問うてきた。
「なめてもらっては困ります。今まであなたは私たちを何度も陥れてきました。その度にデータを蓄積していったのですよ。どれだけ隠ぺいしようが、あなたの魔力の波長は既に解析済みです」
ザレドスが、いつもらしからぬ迫力で妨害者に迫る。
「……って、そうっだのかよ。全然気がつかなかったぜ」
仲間の功績に、ゲルドーシュは関心しきりだ。
「えぇ、最初の崩落現場からポピッカに運んでもらった瓦礫、あれに残っていた魔力の痕跡が始まりでしてね。まぁ、だからこそ、この広間の仕掛けも見破る事が出来たってわけです」
「それでボクが頼んでおいたのさ。妨害者はきっとどこかで見ているはずだから、気取られないように調べてくれってね。
それにこの広間に入った時、あんたが見ているかも知れないって言ったよね。ゆっくり調べたかったから、わざとああいう風に言って出来れば退散してほしかったんだけど、それもしなかった。
要するに、あんたは自分の隠ぺいの力を過信して、油断したって事だよ」
ザレドスとボクの言葉に、妨害者のギリギリと鳴る歯ぎしりの音が、ここまで聞こえてくるようだ。
「あ……、そういえばあなた、どこかで見た事があると思ったら、ゼットツ州付きの魔法使いですね。州兵の隊長さんのいる部屋で見た資料の一つに、あなたの顔絵がありましたよ」
「マジか、それ!」
「はい、大マジです。間違いありません」
驚くゲルドーシュに、ザレドスがきっぱりと答える。
「なるほどですわね。正に内部中の内部の人間ってわけですの。それならこのダンジョンの事も知り尽くしているでしょうし、工作がしやすかったのも当然ですわ」
「フン、仮面でも付けていれば正体は分からなかったろうに……。自らの技におぼれて、ボクたちを余りに甘く見すぎたようだね」
これまでの仕打ちの仇でも討つかのように、皆が奴に向かってまくしたてた。
「は!! 調子に乗るなよ、お前ら。大人しく救助を待っていれば、他に危害は何も加えなかったものを! こっちの温情もここまでだ。
図に乗ってやりすぎた事をタップリと後悔するんだな!!」
言いたい放題を言われプライドが傷ついたのか、妨害者は手を振り上げて激昂する。
実はその解除していない魔法というのが、くだんのノイズだったんですよ。それを詳細に調べてみると、そのノイズも”インチキ”の一つだったんです。それを今から証明します。では、問題のノイズを消去してみますね」
細工師は別の魔使具を取り出して、壁全体に処理を施した。
「さぁ、ではもう一度、壁の厚みを測定してみましょう」
調査用魔使具を壁にあて、その厚みを再計測するザレドス。ほどなくその結果を皆の前に披露する。
「こ、これは……一体どういうことですの!?」
ポピッカが驚嘆の声をあげた。
魔使具のディスプレイには「材質”石”、厚み=三十センチ、その先の岩盤の厚み=測定可能領域外」と表示されている。これは一体何を意味するのか?
「……すまねぇ、俺はもう本当に何が何やらわからなくなっちまった……」
ゲルドーシュが頭を抱える。
さぁてと、いよいよ謎解きのクライマックスだ。
「じゃぁ、ボクから結論を言おう。
第二の可能性について、全ての事象を考え合わせるとだね。
最初っから、壁の向こう側に空間なんて”存在しない”って事なのさ! 三十センチの壁の向こう側は、元々ある岩盤だ」
ボクは、高らかに宣言した。そして呆気に取られている戦士と僧侶をよそに説明を続けた。
「それからさ、壁の厚さを調査した時、1メートル強と結果が出るように妨害者が偽装したのは、こういう理由からだと思うんだ。
厚みが三十センチ程度なら鳴動しようがどうしようが、無理矢理にでも穴を開けようとするかも知れないけれど、さすがに1メートル以上ともなれば、広場崩壊の危険を考えないわけには行かないだろう?」
横にいるザレドスが、”さんざん私に説明させておいて、オイシイところは持っていきますな”と言いたげな目をしているがしょうがない。これはリーダーとしてのケジメであり特権なのだ。
「あっー!! ますます、わかんねぇ!
普通は”何かある”事を隠すのに、色々と策を弄するよな? だけど今回は、”何もない”事を隠すのに七面倒くさいインチキをあちこちに仕掛けたって事なのか?」
ゲルドーシュの頭はパニック寸前だ。
「そうですわよ。それだとゼットツ州は、ありもしない空間に怯えていた事になりますわよね。もしかしたら、その先から魔物が出て来たり呪いのアイテムがあるかも知れないっていう……。
しかもそのせいで、このダンジョンを含む遺跡一帯の都市開発が、著しく遅れているんですのよね。それってどういう……」
ポピッカも混乱しきりのようである。
そんな二人を無視するかのように、ザレドスがボクに耳打ちをする。そして、ボクは振り返った
「じゃぁ、その辺の事情を聞いてみようじゃないか。この壮大でバカげた仕掛けを施した張本人にさ」
「は? なに言ってんだ旦那」
「右に同じですわ。スタン、一体何を……」
二人を尻目にボクは魔奏スティックを、出入り口に近い広間の角に向ける。スティックの先がほのかに光り、次の瞬間、高出力のライトニングアローがけたたましい轟音と共に発射された。
身構える、ボクとザレドス。呆気にとられるゲルドーシュとポピッカ。
雷光の矢が部屋の隅に届こうとした直前、それは見えない壁に阻まれ爆音とともに四散した。雷撃特有の無数のバチバチと音をたてる小さい雷が消えゆく中、見えない壁の向こう側から明らかに魔法使いとおぼしき人影が姿を現す。
「あぁ? 何だあいつは? どっから出てきやがった」
反射的に剣を抜いて、臨戦態勢に入るゲルドーシュ。同様にポピッカも、ザレドスを護衛できる場所に素早く位置取りする。
「紹介しよう。彼がこのインチキの主催者であり、ボクたちが呼ぶところの”妨害者”その人だ!」
ボクたち四人の視線が、正体を現した敵をねめつける。
「……なんで、わかった……?」
僕より少し背が高い魔法使いの男は、困惑と怒りがない交ぜの表情で問うてきた。
「なめてもらっては困ります。今まであなたは私たちを何度も陥れてきました。その度にデータを蓄積していったのですよ。どれだけ隠ぺいしようが、あなたの魔力の波長は既に解析済みです」
ザレドスが、いつもらしからぬ迫力で妨害者に迫る。
「……って、そうっだのかよ。全然気がつかなかったぜ」
仲間の功績に、ゲルドーシュは関心しきりだ。
「えぇ、最初の崩落現場からポピッカに運んでもらった瓦礫、あれに残っていた魔力の痕跡が始まりでしてね。まぁ、だからこそ、この広間の仕掛けも見破る事が出来たってわけです」
「それでボクが頼んでおいたのさ。妨害者はきっとどこかで見ているはずだから、気取られないように調べてくれってね。
それにこの広間に入った時、あんたが見ているかも知れないって言ったよね。ゆっくり調べたかったから、わざとああいう風に言って出来れば退散してほしかったんだけど、それもしなかった。
要するに、あんたは自分の隠ぺいの力を過信して、油断したって事だよ」
ザレドスとボクの言葉に、妨害者のギリギリと鳴る歯ぎしりの音が、ここまで聞こえてくるようだ。
「あ……、そういえばあなた、どこかで見た事があると思ったら、ゼットツ州付きの魔法使いですね。州兵の隊長さんのいる部屋で見た資料の一つに、あなたの顔絵がありましたよ」
「マジか、それ!」
「はい、大マジです。間違いありません」
驚くゲルドーシュに、ザレドスがきっぱりと答える。
「なるほどですわね。正に内部中の内部の人間ってわけですの。それならこのダンジョンの事も知り尽くしているでしょうし、工作がしやすかったのも当然ですわ」
「フン、仮面でも付けていれば正体は分からなかったろうに……。自らの技におぼれて、ボクたちを余りに甘く見すぎたようだね」
これまでの仕打ちの仇でも討つかのように、皆が奴に向かってまくしたてた。
「は!! 調子に乗るなよ、お前ら。大人しく救助を待っていれば、他に危害は何も加えなかったものを! こっちの温情もここまでだ。
図に乗ってやりすぎた事をタップリと後悔するんだな!!」
言いたい放題を言われプライドが傷ついたのか、妨害者は手を振り上げて激昂する。
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