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新たな謎
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ゴーンという凄まじい爆音とともに、ゲルドーシュが肩から壁に激突する。
「な、なんてことを!」
ポピッカの金切声と共に、天井からパラパラと細かい石の粒が落ちてくる。
「かぁ~っ、ビクともしねぇぞ、この壁は!」
ゲルドーシュが体当たりした壁を見ると、表面の石は多少けずれているものの、凹みやヒビなどは全く見受けられない。
「ちょっとゲル、どういうつもりですの? 私たちを生き埋めにするつもりですか!!」
僧侶の声のトーンが益々上がっていく。
「はぁ? 生き埋めってどういうこったよ」
「どういう事も何もないですわよ。最深部のこの広間は構造的に問題があるらしく、脆弱な造りになっているって依頼の手引書に書いてあったでしょ!」
「え、えぇっ……? そうだっけか……」
ゲルドーシュが依頼書の細かい部分を見ていないのは明らかであったが、奴にそこまで期待するのはむしろ間違っているとボクは思った。
「まぁ、まぁ、ポピッカ落ち着いて。確かに君の言う通りだけど、体当たりの一つや二つで崩壊するレベルの脆弱さではないよ」
ボクは、キンキンとした声でゲルドーシュを叱りつけるポピッカをなだめるのに腐心した。
「ゲル、キミの事だから依頼書をきちんと読んでいないのかも知れないけれど、この調査の困難なところはそこなんだ」
ボクは努めて冷静さを保つように、戦士へ語りかける。
「単純に向こう側に空間があるとして、そこへ行くのに一番簡単なのは壁をブチ破る事だよね。そういった工事用魔使具は幾らでもあるし、実際に幾つかの方法は試したって依頼書には書いてあった。
でもその都度、今みたいに天井から石の粒が降ってきたんで広間全体の構造が脆弱な可能性が出て来たんだよ。つまり無理をすればポピッカが言ったように、崩落の危険性が出て来てしまう。
だから力づくで、向こう側への道を切り開くのは難しいんだ」
ボクの説明を聞き、初耳とばかりにキョトンとするゲルドーシュ。
「だ、だけどよ。たとえば”メルト”みたいな、物を溶かす魔法だってあるじゃねぇか。あれだったら向こう側まで小さな穴をあけるくらい出来るだろ?
それを手掛かりに少しずつ穴を広げたっていいじゃねぇかよ」
ゲルドーシュは時々、鋭いところをついて来る。
「確かにね。もちろんそれも試されたらしい。だけどそういう類の魔法を使うと壁全体が鳴動して、やっぱり広間全体に大きな振動が発生したそうだよ」
「なるほど……。だから向こう側に行きたくても行けないってわけか」
ようやくゲルドーシュが得心する。
「ゲル、まさかそれも知らないで依頼を引き受けたんですの?」
「あぁ、あぁ……。いや、調査内容がどうであれ、俺の役目はみんなを守る事だから、報酬が良ければそれでいいかなって……」
バツが悪そうにゲルドーシュは頭をかいた。
依頼書をしっかり確認しないのは褒められた事ではないが、女を妊娠させてしまい結婚資金を稼ぐ必要に迫られた身としては、それもわからなくはないなとボクは思った。
それに皆を守るという戦士本来の仕事は十分すぎるほど果たしている。ポピッカの言う事はもっともだけど、それほど非難されるものではないだろう。
「……ってぇ事は、俺たちは壁を問答無用でぶっ壊す事も出来ねぇし、魔法でチマチマと穴を開ける事も出来ねぇってわけか。おい、それって、すげぇ難しい事なんじゃねぇのか!?」
今更かよと思いつつも、もはやボクをはじめ、ポピッカとザレドスもあきらめ顔だ。
「でもですわ、広間が構造的に脆弱なのは仕方がないとしても、壁に対して魔法を使うと鳴動するっていうのは、壁に何らかのフィールド魔法が掛けられているからでしょう?
だったら、それを除去すればメルトで穴をあけられるのではないですの?」
「えぇ、確かにそうです。もちろん州でもそれを試した報告はあるんですね。ですがフィールド魔法を解除する為には、解除する為の魔法を使わなくてはなりませんよね。
報告書によれば、それをやると結局は同じように鳴動を起こしてしまい、さっきのような石のクズ粉が降って来てしまうそうなんです」
僧侶の疑問に細工師が応えた
「へーんだ。ポピッカ、おめぇだって、ロクに依頼書を読んでないじゃねぇかよ」
先ほどやり込められたゲルドーシュが遅まきながら反撃に出る。
「違いますわよ。それは依頼書に書いてありませんでしたわよ。初耳ですわ」
確かにボクが見た依頼書にもその事は書いていなかった。もっとも余り詳しい事は元々記載がなかったんだけどね。
「じゃぁ、ザレドスは何で知ってるんだ?」
「あぁ、私は州兵の隊長さんから聞いたんですよ。まぁ、穴をあけるための魔法もフィールドを解除するための魔法も魔法に変わりはないので、依頼書では”魔法は通用しない”の一言で済ませたのでしょう」
ゲルドーシュとポピッカの小競り合いに、細工師が終止符を打った。
「ねぇ、今、急に思いついたんだけどさ。少し疑問がある。石を溶かして穴をあけるメルトも、フィールドを解除するのも魔法に変わりはないって事だよね。
だったら、壁の向こう側を透視するのも魔法じゃないか。どうして透視の魔法を使っても壁は鳴動しないのだろう。それに壁を測定する魔使具を使った時も同じだよね」
ボクはザレドスに尋ねる。
「いや、そうですね。本当にそうだ。スタンの言う通りだと、壁に仕掛けられたフィールド魔法は、壁を破壊しようとしたり、そう言った行為を補助するような魔法には反応するけれど、探索に関する魔法には反応しない事になりますね。
もちろんフィールド魔法をそういう性質に設定する事は可能ですが、なぜ魔法の種類によって差をつけているのか……実に不可思議です」
「な、なんてことを!」
ポピッカの金切声と共に、天井からパラパラと細かい石の粒が落ちてくる。
「かぁ~っ、ビクともしねぇぞ、この壁は!」
ゲルドーシュが体当たりした壁を見ると、表面の石は多少けずれているものの、凹みやヒビなどは全く見受けられない。
「ちょっとゲル、どういうつもりですの? 私たちを生き埋めにするつもりですか!!」
僧侶の声のトーンが益々上がっていく。
「はぁ? 生き埋めってどういうこったよ」
「どういう事も何もないですわよ。最深部のこの広間は構造的に問題があるらしく、脆弱な造りになっているって依頼の手引書に書いてあったでしょ!」
「え、えぇっ……? そうだっけか……」
ゲルドーシュが依頼書の細かい部分を見ていないのは明らかであったが、奴にそこまで期待するのはむしろ間違っているとボクは思った。
「まぁ、まぁ、ポピッカ落ち着いて。確かに君の言う通りだけど、体当たりの一つや二つで崩壊するレベルの脆弱さではないよ」
ボクは、キンキンとした声でゲルドーシュを叱りつけるポピッカをなだめるのに腐心した。
「ゲル、キミの事だから依頼書をきちんと読んでいないのかも知れないけれど、この調査の困難なところはそこなんだ」
ボクは努めて冷静さを保つように、戦士へ語りかける。
「単純に向こう側に空間があるとして、そこへ行くのに一番簡単なのは壁をブチ破る事だよね。そういった工事用魔使具は幾らでもあるし、実際に幾つかの方法は試したって依頼書には書いてあった。
でもその都度、今みたいに天井から石の粒が降ってきたんで広間全体の構造が脆弱な可能性が出て来たんだよ。つまり無理をすればポピッカが言ったように、崩落の危険性が出て来てしまう。
だから力づくで、向こう側への道を切り開くのは難しいんだ」
ボクの説明を聞き、初耳とばかりにキョトンとするゲルドーシュ。
「だ、だけどよ。たとえば”メルト”みたいな、物を溶かす魔法だってあるじゃねぇか。あれだったら向こう側まで小さな穴をあけるくらい出来るだろ?
それを手掛かりに少しずつ穴を広げたっていいじゃねぇかよ」
ゲルドーシュは時々、鋭いところをついて来る。
「確かにね。もちろんそれも試されたらしい。だけどそういう類の魔法を使うと壁全体が鳴動して、やっぱり広間全体に大きな振動が発生したそうだよ」
「なるほど……。だから向こう側に行きたくても行けないってわけか」
ようやくゲルドーシュが得心する。
「ゲル、まさかそれも知らないで依頼を引き受けたんですの?」
「あぁ、あぁ……。いや、調査内容がどうであれ、俺の役目はみんなを守る事だから、報酬が良ければそれでいいかなって……」
バツが悪そうにゲルドーシュは頭をかいた。
依頼書をしっかり確認しないのは褒められた事ではないが、女を妊娠させてしまい結婚資金を稼ぐ必要に迫られた身としては、それもわからなくはないなとボクは思った。
それに皆を守るという戦士本来の仕事は十分すぎるほど果たしている。ポピッカの言う事はもっともだけど、それほど非難されるものではないだろう。
「……ってぇ事は、俺たちは壁を問答無用でぶっ壊す事も出来ねぇし、魔法でチマチマと穴を開ける事も出来ねぇってわけか。おい、それって、すげぇ難しい事なんじゃねぇのか!?」
今更かよと思いつつも、もはやボクをはじめ、ポピッカとザレドスもあきらめ顔だ。
「でもですわ、広間が構造的に脆弱なのは仕方がないとしても、壁に対して魔法を使うと鳴動するっていうのは、壁に何らかのフィールド魔法が掛けられているからでしょう?
だったら、それを除去すればメルトで穴をあけられるのではないですの?」
「えぇ、確かにそうです。もちろん州でもそれを試した報告はあるんですね。ですがフィールド魔法を解除する為には、解除する為の魔法を使わなくてはなりませんよね。
報告書によれば、それをやると結局は同じように鳴動を起こしてしまい、さっきのような石のクズ粉が降って来てしまうそうなんです」
僧侶の疑問に細工師が応えた
「へーんだ。ポピッカ、おめぇだって、ロクに依頼書を読んでないじゃねぇかよ」
先ほどやり込められたゲルドーシュが遅まきながら反撃に出る。
「違いますわよ。それは依頼書に書いてありませんでしたわよ。初耳ですわ」
確かにボクが見た依頼書にもその事は書いていなかった。もっとも余り詳しい事は元々記載がなかったんだけどね。
「じゃぁ、ザレドスは何で知ってるんだ?」
「あぁ、私は州兵の隊長さんから聞いたんですよ。まぁ、穴をあけるための魔法もフィールドを解除するための魔法も魔法に変わりはないので、依頼書では”魔法は通用しない”の一言で済ませたのでしょう」
ゲルドーシュとポピッカの小競り合いに、細工師が終止符を打った。
「ねぇ、今、急に思いついたんだけどさ。少し疑問がある。石を溶かして穴をあけるメルトも、フィールドを解除するのも魔法に変わりはないって事だよね。
だったら、壁の向こう側を透視するのも魔法じゃないか。どうして透視の魔法を使っても壁は鳴動しないのだろう。それに壁を測定する魔使具を使った時も同じだよね」
ボクはザレドスに尋ねる。
「いや、そうですね。本当にそうだ。スタンの言う通りだと、壁に仕掛けられたフィールド魔法は、壁を破壊しようとしたり、そう言った行為を補助するような魔法には反応するけれど、探索に関する魔法には反応しない事になりますね。
もちろんフィールド魔法をそういう性質に設定する事は可能ですが、なぜ魔法の種類によって差をつけているのか……実に不可思議です」
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