ツクチホ短編まとめ

はるば草花

文字の大きさ
7 / 59

会長を中心に世界が回る5

しおりを挟む

「それは理由になっていません」

すぐその場を離れたい佐城なのだけど、言い返すことはしたい。


「ははっ、まあな。なんとなくなんだよ。…嫌か?」

「それは…」


そんなふうに言われては嫌だとはっきり言いづらい。それを青井が計算して言ったのではないかと考えても、それでも駄目などとは言えない。


「ちょっと近すぎますよ。離れてください」

「ああ」


少しだが素直に距離をとった青井。これで隣にいることを許された。

袋からパンを取り出した青井は大人しく食べていて、それを確認した佐城も食事を再開する。

しばし2人に会話はなかったが、パンを2つほど食べ終わった青井が話題を出す。


「噂で聞いたんだが、会長の弁当も作ってるとか」

「……ついでに作っているだけですし、毎日はしてませんよ」


さすがに自分のほうがついでですとは言わない。


「ふーん?」

青井は意味ありげな表情で佐城の弁当をじっと見る。


「な、なんですか」

「うまそうだな。食っていいか?」

「え。なんで」

「ほら。パンやるし」


佐城は了承していないのに青井はパンを投げてよこす。


「パン一つで私の料理が同等だとでも?」

「だから、これ一つでいい」


そう言って青井は卵焼きをひとつ摘んで口に入れた。


「うまいな。やっぱり愛情こもってるからか?」

「…そうですね。愛情も大事な要素だと思いますよ」


さぐるような言葉に佐城はあっさり答えた。これでは、この閉鎖的学園では誤解を生むのだが、隠すようなことではない。


「へえ、愛情ね。大事なんだ、会長が」

「まあ、そうです」

「は、妬けるなあ」

「はい?」


まさか家墨狙いかと佐城は青井を睨む。その視線の意味が分かった青井は弁解する。


「まさか。俺も命がおしいからな。興味本位でも会長を狙ってなんてない」

「一応、そういうことにしておきましょう」

危険人物として覚えたが。


「ああ、それでいい」


不審に思われているのが分かる青井だが、優しい笑顔を佐城に向ける。その真意が分からない佐城は眉を寄せた。


「じゃあまた」

「またはいいです」


間髪入れずつれない言葉を返した佐城にも青井は笑って去っていく。


「なにしにきたんですか。あの人」


考えられるのは生徒会の情報収集だが、よく分からない。


その佐城の想像通り、青井は情報収集をしていた自分の為と、今現在、風紀室にいる男の為に。
その風紀室に戻ってみると不機嫌な風紀委員長がいた。


「よお、アオイ。なんか分かったかあ?」

「弁当の噂は本当だった」


青井が報告すれば、バギャンと破壊音が響く。

その原因は風紀委員長の北義だ。


「あ~。風紀が備品壊しちゃ駄目じゃん」


言葉はたしなめている十根だが、声音は楽しそうである。


「うるせえ。サジョウの野郎、カスミを餌付けしてんのか。卑怯な」

「えー、でも今更じゃない?一年くらい前からカスミ会長のお世話してるって親衛隊の子の証言は手に入ってるし」

「お世話って、どんなお世話だあ!ああ!」


ドガバン!と机が大きく揺れて、その上にあった書類がいくつか散乱した。それを青井が拾う。


「おいキタギ。制御できなすぎだ」

「…わりい。この前カスミに会ったから我慢がきかねえんだよな」

「別に2人とも付き合ってないってはっきり言ってるんだし、焦る必要はないだろ」

「でもさー、イチャつきっぷりは有名でしょ。恋人じゃないにしてもー、それなりに深い関係なんじゃない?あっちのほうとかも、お世話してるかもー」

「おいっ」


面白がってる十根を青井が止めるが、今度は静かだ。逆に気になる2人はゆっくりと顔を動かし北義を伺う。

今にも誰か殴りそうな顔になっている。

なんとか我慢しているようだが、それがさらに怖さを倍増させている。


「あのヤロウ、中等部の頃はそんなにカスミに興味なかったはずなのに、横からとりやがって」

「ええー。委員長も会長とあんまり関わりなかったでしょ」

「うるせえ。とにかく取り返さねえとな」

「アオイどうしよ。キタギいいんちょ妄想激しくなってる」

「よし、アオイ。サジョウのガードを崩す方法とカスミの弱みを探せ!」


犯罪行為を推奨してる言葉ではなく、言い方悪いだけだと青井と十根は分かるが、他の人には聞かせられない。


「…ああ。分かったから、仕事してくれ」


青井が戻るまでしてなかったのは書類の量で分かる。北義は舌打ちしながらも席についた。
それを見て青井も自分の席に座るが、十根がそこに近寄る。


「アオイくんは、なんでそんなに協力的なのかな?…他に目的あるとかー?」

「まあな」

「へぇー」


面白そうと目を細めた十根だが、青井はそれ以上は喋らず、仕事を始めた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...