ツクチホ短編まとめ

はるば草花

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会長を中心に世界が回る6

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佐城副会長と間戸親衛隊長の隙のないガードによって、家墨会長は守られている。

そのうえ、家墨は時折フラフラとどこかに行くことはあっても普段は出かけるということをしない。

佐城の目がなかった中等部の時にも北義が家墨にあまり会えなかったのはその為だ。
中等部の頃の北義が素直でなかったのもあるが。


「委員長ー。いい情報もってきたよー」

「ああ?」


朝から部屋に十根が訪問してきて北義の機嫌は最悪だ。それを十根は気にせず話す。


「カスミちゃんのことだよ。今日は親衛隊との親睦会で部屋から出るらしいよ」

「へー…」

「まだわかんない?まあ、それでも親衛隊がしっかりお守りするんだろうけど、長い時間の間のどっかに甘いとこが出るだろうから、その時俺がなんとか親衛隊引き離すよ。その間に委員長はカスミちゃんと逢瀬を楽しめばいいよ」

「ほお…」

「わあ、凶悪な笑顔ー」




親衛隊との親睦会は面倒くさがりの家墨でもちゃんとしてきている。ただ、午前中なんて無理。
学校がない日なので佐城が起こしにきても二度寝で睡眠をたっぷりとった。

昼食をとってしっかり頭がさえてきてから、のっそり動く。


「なんですか、その動き。ナマケモノですか」

「うるせー。渋々ながらも動いてやってんだ。十分すごいだろが」


たしかに家墨としては頑張ってるほうなので、佐城もそれ以上うるさくは言わず、温かく見守る。


親睦会は天気もよいので庭園でのお茶会である。

昼前から準備万端、そわそわと待っていた親衛隊の子達。

やっと現れた家墨に不満などなく、きゃあきゃあと頬を染めて喜ぶ。


「あ、あの会長様。これ、もらってください!」

「おー」


愛想のない返事ながらも家墨は親衛隊が差し出した袋を受け取った。プレゼントは事前に隊長の了承済みのものだ。

そんな些細なやりとりにも隊員の子は感激している。
愛想はないが、家墨はちゃんと隊員一人一人に対応しているからだ。


親睦会には何故か佐城までいるが、親衛隊は受け入れている。

やる気なさげ主役だったものの、お茶会は問題なく和やかに進行した。

一時間ほどして、あれほど寝たのに家墨は欠伸をした。


「カスミ様。今日はこれで十分ですから、お戻りになられてもかまいませんよ?」

「あー、そうする」


間戸に言ってもらえた家墨は遠慮なく立ち上がった。たくさん貰ったプレゼントは後で隊長が運ぶので手ぶらだ。


「あ、マユ。カスミ様をお願い」

「はい!頑張ります」


間戸に呼ばれた1人の隊員が家墨の後を追う。


「片づけるのでしたら私も手伝いますよ」

「そんな!副会長にさせられません」

「いえ、この後の予定はなくて暇なのでいいんですよ」


止める間戸に応じず佐城はテーブルの上を片づけはじめた。家墨は片づけなんて考えもせず、寮へとまっしぐらだ。


長身で足が長く進む速度は早い。それを必死についていく隊員だが、ふいに後ろから声をかけられて振り返る。

そこには風紀委員の十根がいた。

こうして家墨を見守っていた隊員が家墨から離される。


不穏な男が家墨に近づいた。


「よお、カスミ」


偉そうな態度でやってきたのは風紀委員長の北義だ。

「あ?」


休みの日にまでこんな顔みたくなかったとばかりに家墨の顔はゆがむ。そんな不機嫌あらわの家墨は見えてないかのように北義は近寄る。


「1人で歩くなんて危険だぜ。お姫様」


姫様って言うのはからかいもあるが、姫様みたいに美人だからと本気で思ってるからもある。


「うるせえ。そう思うなら近寄ってくんなよ。危険人物」


北義の横を通り過ぎようとした家墨だが、腕を掴まれる。


「…なんだ?」

「危ねえから、俺が守ってやるよ」

「触るのもごめんだ」


自分の腕を掴んでいる北義の腕をたたき落とす。


「おい。ただ送ってやろうってだけなんだぞ」

「いらねえよ」


表情ははっきりと拒絶をしめし、家墨は足早に北義から離れた。さすがに追いかけることができない北義。

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