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後日談 一緒に住もうよ 後編
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「そうだ。慧くんって、どこに住んでるんだっけ」
しばらく、その状態だったのだが、ふと龍士郎が聞いた。
ようやく落ち着きを取り戻した慧は、顔を上げた。涙と鼻水そのままだが可愛いなあと思うのは、仕方ない事だと思う。
「えっと、川の向こうの駅の三つ先です」
「結構遠いね。車で来てるんだっけ」
「はい、そうです」
当たり前のように会話をしている慧だが、ここが龍士郎と向かい合う膝の上、というのを最初は恥ずかしがっていた事を考えると、大きな進歩のように思えた。
「オレも、車の免許取ろうかな」
「持ってなかったんですか?」
「だって、いらないし。ネットで買えるしさ。でも、慧くんがそんな遠くに住んでるなら、会いに行く時に車いるよね」
「駅まで歩けば良いだけなのでは……」
「歩くの嫌いなんだ」
「不健康ですよ」
「運動はしてるから、大丈夫だよ。夜限定だけど」
「っもう」
何の事を言っているのかわかって、慧は顔を真っ赤にした。その様子を目を細めながら、龍士郎は楽しそうに見ている。
「あの、でもおれ、忍さんの家に居候してるから、龍士郎さまが来られても、その」
そして、また申し訳なさそうな顔になる。今なら、聞けるだろうか。龍士郎はあえて何でもないように言葉を発した。
「その、忍さんって人、慧くんの身内なんだよね? どんな関係?」
しまった、嫉妬するような聞き方になってしまった、と龍士郎は内心で焦ったが、慧はあっけらかんとしていた。
「忍さんですか? 正確には、叔父になるんですけど、おれの事ずっと面倒みてくれてる人です」
「実家は、別にあるって事?」
「そう、ですね。あの、あまり面白い話じゃないんですが」
「君の事なら何でも聞きたいな」
慧の言葉の後に間髪入れずに龍士郎が言うと、慧は少し苦笑しながらも、教えてくれた。
「おれの母は、小さい頃に亡くなってまして。そのあと、父が再婚したんです。でも、オレその人と折り合いが悪くて、その後subってわかって、あの人達ノーマルだから、オレを持て余してしまったんだと思うんです。家を出されるような形になって……そんなオレを見かねて、手を差し伸べてくれたのが、母の弟である、忍さんだったんです。それから、忍さんの会社で働くようになって。忍さんには、本当に頭が上がらないんです」
苦笑、しながら話す慧の言葉に、龍士郎はぎゅっと胸が詰まった。
龍士郎は、名家である秋水家の次男として生まれ、何不自由なく育てられ、愛情を注がれ、それが当たり前だと思って生きてきた。domとわかった後の一連は正直災難だと思ったが、龍士郎はそれで絶望したという程ではなかった。ただひたすら面倒になって、引きこもっただけだ。
だが、慧は。
思った以上に重い話に、龍士郎は、慧を抱きしめていた。
ああ、このsubは、オレが幸せにしよう。もう、泣く事が無いように、大切に大切にしよう。
「慧くん。教えてくれて、ありがとう。言い難い事だったろうに」
「っ、いいえ。あなたになら、大丈夫です」
慧からもギュッと抱きしめられ、龍士郎は、泣きたい気持ちになった。
「慧くん。オレたち一緒に住もうよ」
「え?」
「いつ荷物纏められる? なんだったら、二人で住めるもっと広い部屋借りようか」
「え? え?」
戸惑うばかりの慧に、龍士郎は、どんどん言葉を降らせる。
「仕事場に近い方が良いだろうし、指輪作りに行ったついでに、不動産会社にも行こうね」
「あ、あの、龍士郎さまっ」
焦ったような慧に龍士郎は言葉を遮られたが、めげずに再び口を開く。
「賃貸じゃない方が良いなら、ビル買う? オレ、全然金を使うあてがなくて、結構溜まってるんだよね。ビルでも家でも一棟ぐらいならすぐ買えるけど、どんなのが良い?」
「あの、だから」
「逆に郊外にする? 秋水名義の土地なら、割りと良い所譲ってもらえるように、兄さんに相談してみるし」
「龍士郎さま、お兄さんいらっしゃるんですか?!」
「うん、言ってなかったっけ」
「聞いてないです。お、おれも、龍士郎さまの家族のこと、聞きたい、ですっ」
龍士郎の意識が別の所に向けば、と思ったが、慧はそれが無駄な事だったとすぐに思い知る。
「オレの家は、別に普通だよ。父と母と、兄が一人と犬が3匹くらい。兄さんは、父さんの子会社の社長してるよ。結婚して出て行ったから、会う事は少ないかなあ。でも、三人ともたまに会うたびに、外に出ろとかちゃんとしろとかうるさくて、無視してたんだよね。だから、慧くんがオレと一緒に居てくれると、両親も安心すると思うな」
にっこりと微笑まれ、慧は、降参するしかない事を思い知るのであった。
「時間を、下さい……」
「良いよ、いつまで?」
諦め、ともとれる顔で苦笑する慧は、龍士郎を見つめる。
「忍さんを説得してから、荷物纏めるので、そうですね……一か月、くらい」
「わかった。待ってるね。今度は、遅れないように」
龍士郎の言葉に、今度こそ、慧は素直に、はにかみながら頷いたのだった。
終わり
しばらく、その状態だったのだが、ふと龍士郎が聞いた。
ようやく落ち着きを取り戻した慧は、顔を上げた。涙と鼻水そのままだが可愛いなあと思うのは、仕方ない事だと思う。
「えっと、川の向こうの駅の三つ先です」
「結構遠いね。車で来てるんだっけ」
「はい、そうです」
当たり前のように会話をしている慧だが、ここが龍士郎と向かい合う膝の上、というのを最初は恥ずかしがっていた事を考えると、大きな進歩のように思えた。
「オレも、車の免許取ろうかな」
「持ってなかったんですか?」
「だって、いらないし。ネットで買えるしさ。でも、慧くんがそんな遠くに住んでるなら、会いに行く時に車いるよね」
「駅まで歩けば良いだけなのでは……」
「歩くの嫌いなんだ」
「不健康ですよ」
「運動はしてるから、大丈夫だよ。夜限定だけど」
「っもう」
何の事を言っているのかわかって、慧は顔を真っ赤にした。その様子を目を細めながら、龍士郎は楽しそうに見ている。
「あの、でもおれ、忍さんの家に居候してるから、龍士郎さまが来られても、その」
そして、また申し訳なさそうな顔になる。今なら、聞けるだろうか。龍士郎はあえて何でもないように言葉を発した。
「その、忍さんって人、慧くんの身内なんだよね? どんな関係?」
しまった、嫉妬するような聞き方になってしまった、と龍士郎は内心で焦ったが、慧はあっけらかんとしていた。
「忍さんですか? 正確には、叔父になるんですけど、おれの事ずっと面倒みてくれてる人です」
「実家は、別にあるって事?」
「そう、ですね。あの、あまり面白い話じゃないんですが」
「君の事なら何でも聞きたいな」
慧の言葉の後に間髪入れずに龍士郎が言うと、慧は少し苦笑しながらも、教えてくれた。
「おれの母は、小さい頃に亡くなってまして。そのあと、父が再婚したんです。でも、オレその人と折り合いが悪くて、その後subってわかって、あの人達ノーマルだから、オレを持て余してしまったんだと思うんです。家を出されるような形になって……そんなオレを見かねて、手を差し伸べてくれたのが、母の弟である、忍さんだったんです。それから、忍さんの会社で働くようになって。忍さんには、本当に頭が上がらないんです」
苦笑、しながら話す慧の言葉に、龍士郎はぎゅっと胸が詰まった。
龍士郎は、名家である秋水家の次男として生まれ、何不自由なく育てられ、愛情を注がれ、それが当たり前だと思って生きてきた。domとわかった後の一連は正直災難だと思ったが、龍士郎はそれで絶望したという程ではなかった。ただひたすら面倒になって、引きこもっただけだ。
だが、慧は。
思った以上に重い話に、龍士郎は、慧を抱きしめていた。
ああ、このsubは、オレが幸せにしよう。もう、泣く事が無いように、大切に大切にしよう。
「慧くん。教えてくれて、ありがとう。言い難い事だったろうに」
「っ、いいえ。あなたになら、大丈夫です」
慧からもギュッと抱きしめられ、龍士郎は、泣きたい気持ちになった。
「慧くん。オレたち一緒に住もうよ」
「え?」
「いつ荷物纏められる? なんだったら、二人で住めるもっと広い部屋借りようか」
「え? え?」
戸惑うばかりの慧に、龍士郎は、どんどん言葉を降らせる。
「仕事場に近い方が良いだろうし、指輪作りに行ったついでに、不動産会社にも行こうね」
「あ、あの、龍士郎さまっ」
焦ったような慧に龍士郎は言葉を遮られたが、めげずに再び口を開く。
「賃貸じゃない方が良いなら、ビル買う? オレ、全然金を使うあてがなくて、結構溜まってるんだよね。ビルでも家でも一棟ぐらいならすぐ買えるけど、どんなのが良い?」
「あの、だから」
「逆に郊外にする? 秋水名義の土地なら、割りと良い所譲ってもらえるように、兄さんに相談してみるし」
「龍士郎さま、お兄さんいらっしゃるんですか?!」
「うん、言ってなかったっけ」
「聞いてないです。お、おれも、龍士郎さまの家族のこと、聞きたい、ですっ」
龍士郎の意識が別の所に向けば、と思ったが、慧はそれが無駄な事だったとすぐに思い知る。
「オレの家は、別に普通だよ。父と母と、兄が一人と犬が3匹くらい。兄さんは、父さんの子会社の社長してるよ。結婚して出て行ったから、会う事は少ないかなあ。でも、三人ともたまに会うたびに、外に出ろとかちゃんとしろとかうるさくて、無視してたんだよね。だから、慧くんがオレと一緒に居てくれると、両親も安心すると思うな」
にっこりと微笑まれ、慧は、降参するしかない事を思い知るのであった。
「時間を、下さい……」
「良いよ、いつまで?」
諦め、ともとれる顔で苦笑する慧は、龍士郎を見つめる。
「忍さんを説得してから、荷物纏めるので、そうですね……一か月、くらい」
「わかった。待ってるね。今度は、遅れないように」
龍士郎の言葉に、今度こそ、慧は素直に、はにかみながら頷いたのだった。
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