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魔獣の脅威(5)
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「うっ……!?」
ようやく3匹倒した、と思った途端、がくん、とミリアの左足から力が抜けた。いや、力が抜けただけではなく、痛みが強くなっていく。どんなに力を入れようとしても、こればかりはどうにもならない。
(いつもは、もっと、もつのに……!)
更に、森から2匹ギスタークが出てくる姿が見える。先ほどの遠吠えを聞いて集まってきたのだろう。それから、また奥から2匹が出てくる。ミリアはなんとか分銅を拾うことが出来た。そして、狙いを定めた時……
「お嬢様!」
と、遠くからかすかにヘルマの声と馬の蹄の音が聞こえる。方向的に、荷台と共に走り去った自分の馬が行った方向ではない。ミリアはギスタークに対応をするため、後ろを振り返る猶予がないので叫んだ。
「ヘルマ、わたしの馬を止めなさい! 荷台に死体がまだ乗っている!」
そして、決してヘルマの方を見ず、彼女はギスタークに向かって分銅を投げる。うまくいけば、2匹同時に倒せるのではないかと思ったが、そうはいかない。ガツッと1匹の頭部に当たっただけで、もう1匹は減速せずにミリアに向かってくる。
「……っつう……!」
びりびりと響く左足の痛みに耐えながら、ほぼ右足だけで立ち、ミリアはもう1匹を倒そうとした。そこまでは、なんとかなったのだが……。
(駄目だ。あと2匹……)
ギスタークたちはそこまで俊敏ではない。だが、今のミリアは左足を動かせないほどの痛みに襲われている。その上、またそのギスタークたちの背後に3匹姿が見えた。まだやれる、と思う心もあったが、2匹、更に3匹を倒すのは、今の自分では厳しいと思う。分銅を取りに動くことすら出来ない。ただ、向かってくるギスタークを迎撃するだけ。だが、同時に3匹に襲われてはどうしようもない。
もう駄目だ。そう思っても、ミリアは剣を構える。もし、自分が諦めたとしたら、次はヘルマが一人になってしまう。だったら、最後まで抗うしかない。逃げることすら出来なくなったのだから、それが最善だと彼女は思った。
と、その時。馬の蹄の音が遠くから聞こえて来た。いや、それはもうとっくに聞こえていたはずの音だ。ギスタークに集中をしていたのと、ヘルマの蹄の音が近かったため、聞こえていたのに聞こえていないように思えていたのだ。
「……!」
ひゅっ、と音がして、横からギスタークに分銅がいくつも投げられた。がつん、がつん、とそれらは当たり、まずは2匹が倒れる。その次の3匹のうち1匹だけ倒れ、残り2匹がミリアに向かって突進する。
だが、その時。
「掴まれ!」
「あっ……」
ギスタークとの間に、一頭の馬が割り込んだ。大きな腕がミリアに向かって差し出されたのを見て、ミリアは剣を捨てて夢中でその手にしがみついた。すると、その腕は容易に彼女の体を持ち上げ、あっという間に馬上に座らせる。なんという筋力か、といささかミリアはぽかんとした。
「よく頑張ったな」
顔を見なくても、声だけでわかる。後頭部に聞こえる、穏やかでよく響く声。支えるように自分の体に回された彼の片腕にそっと触れながら、ミリアは震える声で名を呼んだ。
「ヴィルマーさん……?」
「君は、本当に強いんだな。わかっていたはずなのに、驚いた。だが、無茶をし過ぎだ」
「……はい……」
じんわりと、目の奥が熱くなる。彼が来てくれた。そのことで胸がいっぱいになって、どうにかなってしまいそうだった。自分は泣いているのか……ミリアはそれを悟られないように、軽く首を振って涙を散らした。
「ごめんなさい。足が言うことを聞かないので座っているのが……」
「いい。もたれかかってくれ」
「ありがとうございます」
なんて甘えてしまっているのだろうか。そう思いながらもヴィルマーにもたれかかるミリア。ちらりと背後を見れば、彼女を襲おうとしていたギスタークは既に誰かに倒されたようだった。そのまま、ヴィルマーは馬を走らせ、少し距離を取る。
「まったく、肝を冷やしたぞ……もう大丈夫だ。あとはやつらがどうにかするだろう」
やがて、彼の馬はゆっくりと歩みを止めた。背後で、クラウスが仲間たちを指揮してギスターク狩りを開始し、森へ逆に追い立てるように移動を始めた声が聞こえる。ミリアは彼に礼を言った。
ようやく3匹倒した、と思った途端、がくん、とミリアの左足から力が抜けた。いや、力が抜けただけではなく、痛みが強くなっていく。どんなに力を入れようとしても、こればかりはどうにもならない。
(いつもは、もっと、もつのに……!)
更に、森から2匹ギスタークが出てくる姿が見える。先ほどの遠吠えを聞いて集まってきたのだろう。それから、また奥から2匹が出てくる。ミリアはなんとか分銅を拾うことが出来た。そして、狙いを定めた時……
「お嬢様!」
と、遠くからかすかにヘルマの声と馬の蹄の音が聞こえる。方向的に、荷台と共に走り去った自分の馬が行った方向ではない。ミリアはギスタークに対応をするため、後ろを振り返る猶予がないので叫んだ。
「ヘルマ、わたしの馬を止めなさい! 荷台に死体がまだ乗っている!」
そして、決してヘルマの方を見ず、彼女はギスタークに向かって分銅を投げる。うまくいけば、2匹同時に倒せるのではないかと思ったが、そうはいかない。ガツッと1匹の頭部に当たっただけで、もう1匹は減速せずにミリアに向かってくる。
「……っつう……!」
びりびりと響く左足の痛みに耐えながら、ほぼ右足だけで立ち、ミリアはもう1匹を倒そうとした。そこまでは、なんとかなったのだが……。
(駄目だ。あと2匹……)
ギスタークたちはそこまで俊敏ではない。だが、今のミリアは左足を動かせないほどの痛みに襲われている。その上、またそのギスタークたちの背後に3匹姿が見えた。まだやれる、と思う心もあったが、2匹、更に3匹を倒すのは、今の自分では厳しいと思う。分銅を取りに動くことすら出来ない。ただ、向かってくるギスタークを迎撃するだけ。だが、同時に3匹に襲われてはどうしようもない。
もう駄目だ。そう思っても、ミリアは剣を構える。もし、自分が諦めたとしたら、次はヘルマが一人になってしまう。だったら、最後まで抗うしかない。逃げることすら出来なくなったのだから、それが最善だと彼女は思った。
と、その時。馬の蹄の音が遠くから聞こえて来た。いや、それはもうとっくに聞こえていたはずの音だ。ギスタークに集中をしていたのと、ヘルマの蹄の音が近かったため、聞こえていたのに聞こえていないように思えていたのだ。
「……!」
ひゅっ、と音がして、横からギスタークに分銅がいくつも投げられた。がつん、がつん、とそれらは当たり、まずは2匹が倒れる。その次の3匹のうち1匹だけ倒れ、残り2匹がミリアに向かって突進する。
だが、その時。
「掴まれ!」
「あっ……」
ギスタークとの間に、一頭の馬が割り込んだ。大きな腕がミリアに向かって差し出されたのを見て、ミリアは剣を捨てて夢中でその手にしがみついた。すると、その腕は容易に彼女の体を持ち上げ、あっという間に馬上に座らせる。なんという筋力か、といささかミリアはぽかんとした。
「よく頑張ったな」
顔を見なくても、声だけでわかる。後頭部に聞こえる、穏やかでよく響く声。支えるように自分の体に回された彼の片腕にそっと触れながら、ミリアは震える声で名を呼んだ。
「ヴィルマーさん……?」
「君は、本当に強いんだな。わかっていたはずなのに、驚いた。だが、無茶をし過ぎだ」
「……はい……」
じんわりと、目の奥が熱くなる。彼が来てくれた。そのことで胸がいっぱいになって、どうにかなってしまいそうだった。自分は泣いているのか……ミリアはそれを悟られないように、軽く首を振って涙を散らした。
「ごめんなさい。足が言うことを聞かないので座っているのが……」
「いい。もたれかかってくれ」
「ありがとうございます」
なんて甘えてしまっているのだろうか。そう思いながらもヴィルマーにもたれかかるミリア。ちらりと背後を見れば、彼女を襲おうとしていたギスタークは既に誰かに倒されたようだった。そのまま、ヴィルマーは馬を走らせ、少し距離を取る。
「まったく、肝を冷やしたぞ……もう大丈夫だ。あとはやつらがどうにかするだろう」
やがて、彼の馬はゆっくりと歩みを止めた。背後で、クラウスが仲間たちを指揮してギスターク狩りを開始し、森へ逆に追い立てるように移動を始めた声が聞こえる。ミリアは彼に礼を言った。
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