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魔獣の脅威(1)
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翌日、ミリアは宿屋に足を運んだ。スヴェンがヤーナックに来ていたからだ。今回が3回目の治療になる。
「ううん、どうにも、あまりよろしくないですね」
ミリアは「そんな気はしました」と申し訳なさそうに謝る。
「少し負荷をかけてしまったのは事実です」
仕方なく素直に答えた。走り込みをしたのも悪かったと思う。また、グライリヒ子爵領まで馬で行ったのもよろしくなかっただろう。心当たりがないわけではないのでそういうと、スヴェンは「まあ、仕方がないことですね。こちらとしては、時間をかけたらかけた分治療費をいただけるので、良いことなんですが」と苦笑いを見せる。
「とはいえ、ある程度は治っていますね。ただ、更に2回ぐらいは追加治療が必要な感じがします」
「そうですか……申し訳ありませんが、引き続き、よろしくお願いいたします」
「はい。ここにいていただけるなら、どうせわたしは来ますしね。その時にまた」
4か月だけということで家賃をただにしてもらっていたが、これが6か月となったらどうなるんだろうか。町長に確認をしにいかなければ……ミリアはそう思いつつ、宿屋から帰路についた。
ミリアとヘルマは、警備隊の中で更に3人を抜擢して、自分たちがいなくとも鍛錬を出来るようにと育成をした。その3人は剣の腕前はそれなりにあり、かつ、それなりに人望がある人々だ。彼らを上にしてから、警備隊の形は少しずつ整ってきた。そして、参加希望者も増え、今では32人になったため、いくらか昼間は手薄だがそれなりの体裁が出来あがって来ているところだ。
(少しずつ、警備隊もうまく回って来た気がする。最初はどうなるかと思ったけれど、みないい人たちで良かった。あの日以来、反対をする人々もなりを潜めているし……)
ちょうど時間は昼の鍛錬が終わる頃。今日はヘルマとその3人のうちの1人に任せていた。最後の整地ぐらいは自分も参加をしようかと思い、そちらへ向かっていると、何やら人々がわいわいと騒ぎ立てている姿が見える。
「おい! 待て、その魔獣は……」
「お前、なんてもんを狩って来たんだ!?」
「違う! 俺が狩ったんじゃねぇよ! こいつが勝手に襲ってきたから……」
「馬鹿野郎! なんで町に持ち込んでるんだ!」
ミリアは、その人々の中に飛び込んで「何の騒ぎですか?」と尋ねる。すると、彼女の家の近くに住んでいる雑貨屋の主人がそこにいて、説明をしてくれた。
「流れの商人なんだが、この町に入る手前で魔獣に襲われて、護衛が倒したって話でな。だが、その魔獣がよろしくない。ギスタークってぇ魔獣だが、そいつを2体も倒して、しかも持ってきちまった」
「!」
そこまで聞いてミリアは何が起きたのかを瞬時に理解をした。
「ギスタークの死骸を、ですか!?」
「そうだ。毛皮が高く売れるかもしれない、角が高く売れるかもしれない、って考えらしいんだが……何にせよ、2体とも出血が多そうだな……肝心の商人も護衛のやつらも、ギスタークのことはまるっきり素人らしい」
大声で人々がまくしたてる。
「今すぐ、そいつを倒した場所にそれを投げてこい!」
「いや、それじゃ町に近すぎるんじゃねぇのか、もっと離れたところに行け!」
「やべぇだろ、下手したら町まで来る可能性があるだろう!」
ギスタークとは、この付近に時折出没する見た目が狼に似ている魔獣だ。体長は狼よりも少し大きく体毛は長く、更に白い角が頭に生えている。肉食だが、何故か足はそこまで速くない。よって、ギスタークが現れた時は、とにかく逃げろ、と人々は心得ている。
そして、今ここで問題になっているのは、ギスタークは一定量の出血を伴って死ぬと、死後しばらくしてから仲間を集める匂いを放つということだった。これは、今でも「何故死んだ後に時間差でそんなことが起きるのか」ということで、王城付近で研究もされている、いわく「ギスタークの謎」と呼ばれるものだ。
そして、それゆえにミリアはギスタークを知っていた。ギスタークたちは特にこれといった戦闘に特化したスキルは持っていないが、その「一匹の死に呼ばれる」習性、そして、それを誘発する「謎」こそがスキルの一つだと考えられ、野生動物ではなく魔獣という分類になっているのだ。
昔は、それはそう問題にもなっていなかった。ギスタークがただ集まって来るだけ、だったからだ。だが、近年ギスタークたちはいささか凶暴になってきていて、その「匂い」で興奮をして暴れ出すようになり、それは問題視されている。しかも、人がいる場所まで出て来たということは、現在ギスタークにとっての餌が森には足りないということだ。
「ううん、どうにも、あまりよろしくないですね」
ミリアは「そんな気はしました」と申し訳なさそうに謝る。
「少し負荷をかけてしまったのは事実です」
仕方なく素直に答えた。走り込みをしたのも悪かったと思う。また、グライリヒ子爵領まで馬で行ったのもよろしくなかっただろう。心当たりがないわけではないのでそういうと、スヴェンは「まあ、仕方がないことですね。こちらとしては、時間をかけたらかけた分治療費をいただけるので、良いことなんですが」と苦笑いを見せる。
「とはいえ、ある程度は治っていますね。ただ、更に2回ぐらいは追加治療が必要な感じがします」
「そうですか……申し訳ありませんが、引き続き、よろしくお願いいたします」
「はい。ここにいていただけるなら、どうせわたしは来ますしね。その時にまた」
4か月だけということで家賃をただにしてもらっていたが、これが6か月となったらどうなるんだろうか。町長に確認をしにいかなければ……ミリアはそう思いつつ、宿屋から帰路についた。
ミリアとヘルマは、警備隊の中で更に3人を抜擢して、自分たちがいなくとも鍛錬を出来るようにと育成をした。その3人は剣の腕前はそれなりにあり、かつ、それなりに人望がある人々だ。彼らを上にしてから、警備隊の形は少しずつ整ってきた。そして、参加希望者も増え、今では32人になったため、いくらか昼間は手薄だがそれなりの体裁が出来あがって来ているところだ。
(少しずつ、警備隊もうまく回って来た気がする。最初はどうなるかと思ったけれど、みないい人たちで良かった。あの日以来、反対をする人々もなりを潜めているし……)
ちょうど時間は昼の鍛錬が終わる頃。今日はヘルマとその3人のうちの1人に任せていた。最後の整地ぐらいは自分も参加をしようかと思い、そちらへ向かっていると、何やら人々がわいわいと騒ぎ立てている姿が見える。
「おい! 待て、その魔獣は……」
「お前、なんてもんを狩って来たんだ!?」
「違う! 俺が狩ったんじゃねぇよ! こいつが勝手に襲ってきたから……」
「馬鹿野郎! なんで町に持ち込んでるんだ!」
ミリアは、その人々の中に飛び込んで「何の騒ぎですか?」と尋ねる。すると、彼女の家の近くに住んでいる雑貨屋の主人がそこにいて、説明をしてくれた。
「流れの商人なんだが、この町に入る手前で魔獣に襲われて、護衛が倒したって話でな。だが、その魔獣がよろしくない。ギスタークってぇ魔獣だが、そいつを2体も倒して、しかも持ってきちまった」
「!」
そこまで聞いてミリアは何が起きたのかを瞬時に理解をした。
「ギスタークの死骸を、ですか!?」
「そうだ。毛皮が高く売れるかもしれない、角が高く売れるかもしれない、って考えらしいんだが……何にせよ、2体とも出血が多そうだな……肝心の商人も護衛のやつらも、ギスタークのことはまるっきり素人らしい」
大声で人々がまくしたてる。
「今すぐ、そいつを倒した場所にそれを投げてこい!」
「いや、それじゃ町に近すぎるんじゃねぇのか、もっと離れたところに行け!」
「やべぇだろ、下手したら町まで来る可能性があるだろう!」
ギスタークとは、この付近に時折出没する見た目が狼に似ている魔獣だ。体長は狼よりも少し大きく体毛は長く、更に白い角が頭に生えている。肉食だが、何故か足はそこまで速くない。よって、ギスタークが現れた時は、とにかく逃げろ、と人々は心得ている。
そして、今ここで問題になっているのは、ギスタークは一定量の出血を伴って死ぬと、死後しばらくしてから仲間を集める匂いを放つということだった。これは、今でも「何故死んだ後に時間差でそんなことが起きるのか」ということで、王城付近で研究もされている、いわく「ギスタークの謎」と呼ばれるものだ。
そして、それゆえにミリアはギスタークを知っていた。ギスタークたちは特にこれといった戦闘に特化したスキルは持っていないが、その「一匹の死に呼ばれる」習性、そして、それを誘発する「謎」こそがスキルの一つだと考えられ、野生動物ではなく魔獣という分類になっているのだ。
昔は、それはそう問題にもなっていなかった。ギスタークがただ集まって来るだけ、だったからだ。だが、近年ギスタークたちはいささか凶暴になってきていて、その「匂い」で興奮をして暴れ出すようになり、それは問題視されている。しかも、人がいる場所まで出て来たということは、現在ギスタークにとっての餌が森には足りないということだ。
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