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警備隊の揉め事(2)
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突然現れたヴィルマーの姿に人々は「なんだなんだ」と驚き、だが、「いくらあんたでも、この町に住んでいるわけじゃない。話に横から入らないでくれ!」となんとか威勢よく追い払おうとする。しかし、彼は引かなかった。
「それは本当に申し訳ないことをしていると思っている。だが、辺境伯の方でも手は打っているんだ。しかし、今各地に魔獣や野盗が増えている。それらから町を守るためにも、警備隊が必要だ。少なくとも野盗にはその情報が流れて、この町を警戒するようにはなるだろう。そして、しばらく待てば辺境伯の方から間違いなく人員が寄こされる。だから、それまでの間、しばらく、どうか頼む。この町にはこいつらが必要なんだ……」
そう言うと、みなに頭を下げるヴィルマー。人々はぎょっとして、慌ててヴィルマーに口々に言う。
「なんであんたが頭を下げるんだ!」
「あんただって辺境伯に雇われてる立場だろ、そんなことする必要ねぇだろが」
だが、ヴィルマーはそれには答えない。そこに、クラウスが呑気に現れて、まったく事態を知らないかのように普通に「ヴィルマー! そろそろ時間!」と声をかける。
すっかり毒気を抜かれた人々は「まあ、ヴィルマーがそう言うなら……」「大体そのしばらくってのがないから怒ってるってぇの……」と文句をいいつつ、解散をする。むしろ、彼らもまた、文句をつけ始めたものの、退くタイミングがなくなってしまって、仕方なく喚き散らしていた、というところがあったのだろう。
一体、あの喧嘩はなんだったんだ、と言いたげに、尻すぼみの結果になってしまったが、それでいいとミリアは思う。この話は白黒をつけるべき話ではない。反対派の人々をやり込めれば良いなんて、そんな簡単な話ではないのだ。
そういう意味では、ヴィルマーが頭を下げてくれて、それで解散をしたのは悪くなかった。警備隊が勝ったわけでも、反対派が勝ったわけでもない。かといって、それは「そういう風に終わった」からわかることで、ミリアは彼らをねじ伏せようと前に出てしまった。そのことを、心の中で恥じた。
「ヴィルマー、すまなかったな」
「あんたに頭を下げさせるつもりはなかったんだよ」
警備隊の面々はみな、ヴィルマーの肩を叩いたりして、彼を労った。勿論、数名は去っていく男たちに「くそー! お前ら、見てろよ!」「二度とお前らにうちの商品は売らねぇぞ!」と喧嘩腰ではあったが。
「ヴィルマーさん」
「悪いな。個人的な話になっちまって」
「いえ……残念ながら、わたし達ではまだまだ時間がかかってしまっていたと思います。ありがとうございます」
「いや、礼を言われるもんじゃない」
ヘルマは警備隊の人々と、まだぶつぶつと文句を言ってきた者たちへのあれこれをぎゃんぎゃん叫んでいた。だが、彼女はそれでいい。言うだけ言えばすっきりして、後腐れはなくなる。そういうタイプだから特にミリアは問題視をしていない。
ヴィルマーはミリアに肩を竦めて、苦笑いを見せた。
「ま、結局自分の話になっちまった……が、もうちょっと頼ってくれていいぞ。その、頼りがいはあまりないかもしれんが」
「いえ……いえ。その……」
どう伝えればよいのだろうか、とミリアは躊躇した。あなたに間に入ってもらって良かったと言えばいいのか。だが、それはあんな形で頭を下げた彼のことを思えば、そう簡単に認めたくない気もする。かといって、自分たちの力が足りなかったことは確かだ。けれども……。
(なんだか。なんだか、嬉しい。そんなことを言っている場合ではないのに、わたしは一体……どうして……)
うまく説明が出来ない。胸の奥がざわざわとして、その何かに「うるさい」と思う。そんなミリアは珍しい。ヴィルマーは「どうした?」と声をかけたが、その直後に
「やばい。そろそろ行かないと。じゃ、そういうわけで」
と言って、あっという間にその場を去ってしまう。ミリアは彼を引き留めようとしたが、寸でのところで自制をした。そうだ、先ほどクラウスが来たではないか。彼らをこれ以上待たせるわけにはいかない。
人々は「なんだ、ヴィルマー。また出かけるのか」「気をつけて行ってこい!」と、走っていくヴィルマーの背に言葉を投げかける。
だが、ミリアは彼の背に何も声をかけられず、ただ、じっと見つめるだけだった。
「それは本当に申し訳ないことをしていると思っている。だが、辺境伯の方でも手は打っているんだ。しかし、今各地に魔獣や野盗が増えている。それらから町を守るためにも、警備隊が必要だ。少なくとも野盗にはその情報が流れて、この町を警戒するようにはなるだろう。そして、しばらく待てば辺境伯の方から間違いなく人員が寄こされる。だから、それまでの間、しばらく、どうか頼む。この町にはこいつらが必要なんだ……」
そう言うと、みなに頭を下げるヴィルマー。人々はぎょっとして、慌ててヴィルマーに口々に言う。
「なんであんたが頭を下げるんだ!」
「あんただって辺境伯に雇われてる立場だろ、そんなことする必要ねぇだろが」
だが、ヴィルマーはそれには答えない。そこに、クラウスが呑気に現れて、まったく事態を知らないかのように普通に「ヴィルマー! そろそろ時間!」と声をかける。
すっかり毒気を抜かれた人々は「まあ、ヴィルマーがそう言うなら……」「大体そのしばらくってのがないから怒ってるってぇの……」と文句をいいつつ、解散をする。むしろ、彼らもまた、文句をつけ始めたものの、退くタイミングがなくなってしまって、仕方なく喚き散らしていた、というところがあったのだろう。
一体、あの喧嘩はなんだったんだ、と言いたげに、尻すぼみの結果になってしまったが、それでいいとミリアは思う。この話は白黒をつけるべき話ではない。反対派の人々をやり込めれば良いなんて、そんな簡単な話ではないのだ。
そういう意味では、ヴィルマーが頭を下げてくれて、それで解散をしたのは悪くなかった。警備隊が勝ったわけでも、反対派が勝ったわけでもない。かといって、それは「そういう風に終わった」からわかることで、ミリアは彼らをねじ伏せようと前に出てしまった。そのことを、心の中で恥じた。
「ヴィルマー、すまなかったな」
「あんたに頭を下げさせるつもりはなかったんだよ」
警備隊の面々はみな、ヴィルマーの肩を叩いたりして、彼を労った。勿論、数名は去っていく男たちに「くそー! お前ら、見てろよ!」「二度とお前らにうちの商品は売らねぇぞ!」と喧嘩腰ではあったが。
「ヴィルマーさん」
「悪いな。個人的な話になっちまって」
「いえ……残念ながら、わたし達ではまだまだ時間がかかってしまっていたと思います。ありがとうございます」
「いや、礼を言われるもんじゃない」
ヘルマは警備隊の人々と、まだぶつぶつと文句を言ってきた者たちへのあれこれをぎゃんぎゃん叫んでいた。だが、彼女はそれでいい。言うだけ言えばすっきりして、後腐れはなくなる。そういうタイプだから特にミリアは問題視をしていない。
ヴィルマーはミリアに肩を竦めて、苦笑いを見せた。
「ま、結局自分の話になっちまった……が、もうちょっと頼ってくれていいぞ。その、頼りがいはあまりないかもしれんが」
「いえ……いえ。その……」
どう伝えればよいのだろうか、とミリアは躊躇した。あなたに間に入ってもらって良かったと言えばいいのか。だが、それはあんな形で頭を下げた彼のことを思えば、そう簡単に認めたくない気もする。かといって、自分たちの力が足りなかったことは確かだ。けれども……。
(なんだか。なんだか、嬉しい。そんなことを言っている場合ではないのに、わたしは一体……どうして……)
うまく説明が出来ない。胸の奥がざわざわとして、その何かに「うるさい」と思う。そんなミリアは珍しい。ヴィルマーは「どうした?」と声をかけたが、その直後に
「やばい。そろそろ行かないと。じゃ、そういうわけで」
と言って、あっという間にその場を去ってしまう。ミリアは彼を引き留めようとしたが、寸でのところで自制をした。そうだ、先ほどクラウスが来たではないか。彼らをこれ以上待たせるわけにはいかない。
人々は「なんだ、ヴィルマー。また出かけるのか」「気をつけて行ってこい!」と、走っていくヴィルマーの背に言葉を投げかける。
だが、ミリアは彼の背に何も声をかけられず、ただ、じっと見つめるだけだった。
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