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静かな探り合い(4)
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「考え事かい?」
「少しだけ。もし、彼らに襲われたらどうしたら良いのかなぁと」
「蹴散らせばいい。もし、傷を負わせたり殺したりしたとしても、それは特に罪に問われないだろう。誰が見ても、やつらが悪いとわかるしな。が、捕まった仲間のこともあるから、少しはおとなしくしている可能性も高いかな」
ヴィルマーの答えは明確だ。そして、それは正しいのだろうと思うミリア。
「そうだと良いのですが」
「彼らを裁くことについてでも、考えている?」
「いえ……残念ながら、そういう話についてはほぼ門外漢で……わからなくはないのですが、経験がそこまで多くないので、うまく考えられません。未熟ですね……」
「ははっ!」
ぱん、とヴィルマーは手を叩いた。
「君は本当に、なんていうんだ……良い意味で、きちんと考える人なんだな」
「きちんと考える?」
「ああ。そうだ。きちんと考える。自分に出来ること、出来ないことを判断して、出来ないことを『未熟』だと言う。と言っても、人ってのは、ありとあらゆることに未熟のままであることがほとんどだし、それで誰も特に困らない。」
「……はい」
「が、君が言う『未熟』ってのは、そうではなくなろうとしている感じがする。とても好ましい」
そう言ってミリアを見る彼は、ふわりと微笑んだ。ちょうど、ミリア側から朝陽が昇り、彼は目を細める。その表情が、まるで少し照れ笑いを見せているように見え、いささか可愛い……と、ミリアは思う。
「買いかぶりですよ」
そう言って彼から目を逸らすミリアに、ヴィルマーは軽く肩を竦めて見せる。
「いやいや……まあ、ちょっと嫌な話をするとさ」
「ええ」
「未熟でなくなるために、何かを出来る。何かを知ろうと出来るっていうのかな……それが出来る環境にいたってことだ。だから、逆を言えばさ……いい生まれの人間が持っている考え方だな、って話にもなるんだが」
そのヴィルマーの発言に、ミリアはゆっくりと瞬きながら彼を見る。が、彼の表情、声音からは嫌な感じは受けない。
「いい生まれの人間でも、そんな発想にはなかなかならない。俺はそれを知っているんでね……で、話はそれだけか?」
「はい」
「そうか。頑張って来いよ」
ヴィルマーはそう笑って、ぽん、とミリアの肩に手を置いた。大きく、そして熱い手。彼の手のひらの熱が布越しでもじんわりと伝わる。それを不快と思わず、ミリアは「そうします」と答えた。
失敗をしたわけではないが、自分の言動が自分の肩書きを表してしまっている。ミリアは「仕方はないとは言え……」と困惑しながら部屋に戻った。つい、本音をヴィルマーに話し過ぎた。それは、どこかで彼ならなんとなくわかってくれるだろうと思ったことも含め、必要だったからだ。だから、仕方がない。
(あちらも)
ミリアの肩書きをなんとなくでも気づいているのだろう。だが、あれは「わかっているから吐け」と言っているわけでもなく、また、「気づいているぞ」とほのめかしているわけではない。それをミリアは感じ取っていた。
彼は、気づいている上で踏み込んでこない。が、ミリアの言動で彼なりに気になったことを口にしているだけだ。こうやって、互いに読みあって、互いにばかしあっている上での不思議な信頼があることはいくらかおかしいことだと思う。
(でも、それが全然嫌ではない)
そうだ。嫌ではない。それは彼の朗らかさがそう思わせるのか。その辺りはよくわからないが、腹を割った話をそれなりにしたことで、ミリアはなんとなくすっきりとしていた。
「困ったな……」
ヴィルマーはある意味曲者だ。つい、話してしまう。そして、話したことに彼は応えてくれる。だから更に話してしまう。これが、搾取されるだけだったら、きっとミリアも話をしなくなってしまうだろう。
「ううん、本当に未熟だ」
そうつぶやくと、未だに眠っているヘルマが「ううん」と寝返りを打った。そろそろ、ヘルマも起きる時間だろう、とミリアは窓を開けたのだった。
「少しだけ。もし、彼らに襲われたらどうしたら良いのかなぁと」
「蹴散らせばいい。もし、傷を負わせたり殺したりしたとしても、それは特に罪に問われないだろう。誰が見ても、やつらが悪いとわかるしな。が、捕まった仲間のこともあるから、少しはおとなしくしている可能性も高いかな」
ヴィルマーの答えは明確だ。そして、それは正しいのだろうと思うミリア。
「そうだと良いのですが」
「彼らを裁くことについてでも、考えている?」
「いえ……残念ながら、そういう話についてはほぼ門外漢で……わからなくはないのですが、経験がそこまで多くないので、うまく考えられません。未熟ですね……」
「ははっ!」
ぱん、とヴィルマーは手を叩いた。
「君は本当に、なんていうんだ……良い意味で、きちんと考える人なんだな」
「きちんと考える?」
「ああ。そうだ。きちんと考える。自分に出来ること、出来ないことを判断して、出来ないことを『未熟』だと言う。と言っても、人ってのは、ありとあらゆることに未熟のままであることがほとんどだし、それで誰も特に困らない。」
「……はい」
「が、君が言う『未熟』ってのは、そうではなくなろうとしている感じがする。とても好ましい」
そう言ってミリアを見る彼は、ふわりと微笑んだ。ちょうど、ミリア側から朝陽が昇り、彼は目を細める。その表情が、まるで少し照れ笑いを見せているように見え、いささか可愛い……と、ミリアは思う。
「買いかぶりですよ」
そう言って彼から目を逸らすミリアに、ヴィルマーは軽く肩を竦めて見せる。
「いやいや……まあ、ちょっと嫌な話をするとさ」
「ええ」
「未熟でなくなるために、何かを出来る。何かを知ろうと出来るっていうのかな……それが出来る環境にいたってことだ。だから、逆を言えばさ……いい生まれの人間が持っている考え方だな、って話にもなるんだが」
そのヴィルマーの発言に、ミリアはゆっくりと瞬きながら彼を見る。が、彼の表情、声音からは嫌な感じは受けない。
「いい生まれの人間でも、そんな発想にはなかなかならない。俺はそれを知っているんでね……で、話はそれだけか?」
「はい」
「そうか。頑張って来いよ」
ヴィルマーはそう笑って、ぽん、とミリアの肩に手を置いた。大きく、そして熱い手。彼の手のひらの熱が布越しでもじんわりと伝わる。それを不快と思わず、ミリアは「そうします」と答えた。
失敗をしたわけではないが、自分の言動が自分の肩書きを表してしまっている。ミリアは「仕方はないとは言え……」と困惑しながら部屋に戻った。つい、本音をヴィルマーに話し過ぎた。それは、どこかで彼ならなんとなくわかってくれるだろうと思ったことも含め、必要だったからだ。だから、仕方がない。
(あちらも)
ミリアの肩書きをなんとなくでも気づいているのだろう。だが、あれは「わかっているから吐け」と言っているわけでもなく、また、「気づいているぞ」とほのめかしているわけではない。それをミリアは感じ取っていた。
彼は、気づいている上で踏み込んでこない。が、ミリアの言動で彼なりに気になったことを口にしているだけだ。こうやって、互いに読みあって、互いにばかしあっている上での不思議な信頼があることはいくらかおかしいことだと思う。
(でも、それが全然嫌ではない)
そうだ。嫌ではない。それは彼の朗らかさがそう思わせるのか。その辺りはよくわからないが、腹を割った話をそれなりにしたことで、ミリアはなんとなくすっきりとしていた。
「困ったな……」
ヴィルマーはある意味曲者だ。つい、話してしまう。そして、話したことに彼は応えてくれる。だから更に話してしまう。これが、搾取されるだけだったら、きっとミリアも話をしなくなってしまうだろう。
「ううん、本当に未熟だ」
そうつぶやくと、未だに眠っているヘルマが「ううん」と寝返りを打った。そろそろ、ヘルマも起きる時間だろう、とミリアは窓を開けたのだった。
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