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隣国ヘーラクレール編
49 聖女覚醒
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「シロ様!?」
近くにいたほぼ全員がシロ様の方を向いた。それくらいシロ様の声は鋭くて大きかったんだ。
「ジーッジジッ!ジーッ! (ちがうちがう、るしあなちがう!おねえちゃんじゃなくておねえちゃま!)」
「シロ、さま……? 私何か間違えたのでしょうか?」
「ジッ!ジーーッ! (だから、おねえちゃまなの!!)」
シロ様がいっている意味が分からない。おねえちゃん、おねえちゃま……?一体どういうことだろう?神官長様とルシアナ様もシロ様のお言葉をはっきり聞き取れるわけではない。私に助けを求める視線を送ってきている。
「あ、あの、シロ様……おねえちゃん、なのですか?」
「ジッ! (おねえちゃんじゃなくて、おねえちゃま!)」
「おねえ、ちゃま?」
「ジージーッ! (おねえちゃまなのーーっ)」
ルシアナ様の腕から飛び出して、シロ様はぐるぐると周りを飛び回り始めた。少し興奮しているみたいでもあり、自分の言いたいことが上手く伝わらず癇癪を起している子供のようでもあった。
「おねえちゃん……おねえちゃま……もしかして、「おねえちゃん」と「おねえちゃま」は別人なのですか?」
「ジッ!! (あたりまえだよっまーがれった!)」
そうするとどういうことだろう……シロ様が姉と慕う人物……ヘーラクレール様はヘーラクレールおじちゃんだった。もしかすると……神様のことをそう呼んでいるのだろう。すると女性の神様、女神様となると……私が良く知る方が二人いらっしゃる。一番よく知られる女神様は今、ルシアナ様が祈りを捧げた女神フェリーチェ様。そして大地の女神ディアネッタ様……。
「もしかしてフェリーチェ様が「おねえちゃん」で、ディアネッタ様が「おねえちゃま」?」
「ジッ!! (そう!)」
私の推測は当たっていたみたいだ。こちらを見ていた神官長様とルシアナ様もハッとして二人で顔を見合わせた。
「私は今まで女神フェリーチェ様との会話を望んで祈っておりました」
「ルシアナ様はディアネッタ様との親和性の方が高いのかもしれません!」
こくり、と二人は頷きルシアナ様は膝まづき手を組み目を閉じた。
「大地を守護する女神ディアネッタ……このヘーラクレールの地を癒すご加護を……」
ああ、やっぱりそうなんだ。神殿の床からきれいな金色の光が湧いてきて、ルシアナ様の周りを回り始めた。金色であり、大地の色の優しい光……「みなさま」の中でも大地を豊かにしてくださる深くて広い愛の持ち主の方。
《ようやくわたくしを呼びましたね、ルシアナ。わたくしはずっと貴女を待っておりましたのよ。シロちゃん、ありがとうあなたの助言のおかげね》
「ジィ! (おねえちゃまー!)」
ディアネッタ様が手にした黄金の麦穂を優しくルシアナ様にかざす。ルシアナ様を中心に金色の麦畑がどこまでも広がってゆく様子が幻視された。
《疲れた大地を癒しましょう、ルシアナ》
「は、はい! ディアネッタ様!」
そうしてディアネッタ様の気配は笑みを残して薄くなる……最後に私の方を向いて可愛らしくウィンクをして去ってゆかれた……いや、去って行かれたように見えて私の隣にいらっしゃる。
《まだルシアナにはきっかけしかないの。力を得るには時間が必要よ、ごめんなさいマーガレッタ。もう少しシロちゃんのこと頼むわね》
勿論です、と心の中で返事をして歓喜の涙を流すルシアナ様と神官長様、神官さん達を見守る。きっとルシアナ様は良い聖女になられるだろう。
その日、その時刻からヘーラクレールの大地には力が行き渡り始める。女神の代行者の聖女がやっと芽吹いた歓喜に震え、毒を封じる土壌がやっと機能し始めた。
近くにいたほぼ全員がシロ様の方を向いた。それくらいシロ様の声は鋭くて大きかったんだ。
「ジーッジジッ!ジーッ! (ちがうちがう、るしあなちがう!おねえちゃんじゃなくておねえちゃま!)」
「シロ、さま……? 私何か間違えたのでしょうか?」
「ジッ!ジーーッ! (だから、おねえちゃまなの!!)」
シロ様がいっている意味が分からない。おねえちゃん、おねえちゃま……?一体どういうことだろう?神官長様とルシアナ様もシロ様のお言葉をはっきり聞き取れるわけではない。私に助けを求める視線を送ってきている。
「あ、あの、シロ様……おねえちゃん、なのですか?」
「ジッ! (おねえちゃんじゃなくて、おねえちゃま!)」
「おねえ、ちゃま?」
「ジージーッ! (おねえちゃまなのーーっ)」
ルシアナ様の腕から飛び出して、シロ様はぐるぐると周りを飛び回り始めた。少し興奮しているみたいでもあり、自分の言いたいことが上手く伝わらず癇癪を起している子供のようでもあった。
「おねえちゃん……おねえちゃま……もしかして、「おねえちゃん」と「おねえちゃま」は別人なのですか?」
「ジッ!! (あたりまえだよっまーがれった!)」
そうするとどういうことだろう……シロ様が姉と慕う人物……ヘーラクレール様はヘーラクレールおじちゃんだった。もしかすると……神様のことをそう呼んでいるのだろう。すると女性の神様、女神様となると……私が良く知る方が二人いらっしゃる。一番よく知られる女神様は今、ルシアナ様が祈りを捧げた女神フェリーチェ様。そして大地の女神ディアネッタ様……。
「もしかしてフェリーチェ様が「おねえちゃん」で、ディアネッタ様が「おねえちゃま」?」
「ジッ!! (そう!)」
私の推測は当たっていたみたいだ。こちらを見ていた神官長様とルシアナ様もハッとして二人で顔を見合わせた。
「私は今まで女神フェリーチェ様との会話を望んで祈っておりました」
「ルシアナ様はディアネッタ様との親和性の方が高いのかもしれません!」
こくり、と二人は頷きルシアナ様は膝まづき手を組み目を閉じた。
「大地を守護する女神ディアネッタ……このヘーラクレールの地を癒すご加護を……」
ああ、やっぱりそうなんだ。神殿の床からきれいな金色の光が湧いてきて、ルシアナ様の周りを回り始めた。金色であり、大地の色の優しい光……「みなさま」の中でも大地を豊かにしてくださる深くて広い愛の持ち主の方。
《ようやくわたくしを呼びましたね、ルシアナ。わたくしはずっと貴女を待っておりましたのよ。シロちゃん、ありがとうあなたの助言のおかげね》
「ジィ! (おねえちゃまー!)」
ディアネッタ様が手にした黄金の麦穂を優しくルシアナ様にかざす。ルシアナ様を中心に金色の麦畑がどこまでも広がってゆく様子が幻視された。
《疲れた大地を癒しましょう、ルシアナ》
「は、はい! ディアネッタ様!」
そうしてディアネッタ様の気配は笑みを残して薄くなる……最後に私の方を向いて可愛らしくウィンクをして去ってゆかれた……いや、去って行かれたように見えて私の隣にいらっしゃる。
《まだルシアナにはきっかけしかないの。力を得るには時間が必要よ、ごめんなさいマーガレッタ。もう少しシロちゃんのこと頼むわね》
勿論です、と心の中で返事をして歓喜の涙を流すルシアナ様と神官長様、神官さん達を見守る。きっとルシアナ様は良い聖女になられるだろう。
その日、その時刻からヘーラクレールの大地には力が行き渡り始める。女神の代行者の聖女がやっと芽吹いた歓喜に震え、毒を封じる土壌がやっと機能し始めた。
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