【完結】生き残りたい俺は死者と語る。

鏑木 うりこ

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25 狐野郎

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「ひ、酷い……!」

 どうしてそんな事を!

「お前が悪いんだよ!ナナ!お前が私から団長を取り上げるから!でも、私を選ばなかったマークス団長なんてもう要らない!ふふ、あんな人、死んで当然だよ」

「死……、まさか、殺したの?!」

「殺したよ!1人残らずね!残りはナナ!お前だけだ!」

「ひっ」

 狂ってる、ユーリは狂ってる!

「違うな、残りは」

お前だよ

 大男は剣を振り上げて、ユーリの肩から胸まで切り裂いた。

「ひっ!!」

 真っ赤な血が噴き上がって、辺りは生臭い臭いに包まれる。飛び散った血が俺の顔にまで飛んできた。

「な、な、な、なにを!約束が、ちが!私はそちらの国に……っ」

 ユーリの血走った目が限界まで開かれて、大男を睨みつける。

「馬鹿か、一番汚い狐野郎を我が軍に入れる訳がないだろう、醜い」

「嘘、嘘、嘘……!私は死にたくない、死にたくないぃーーー!」

「お前の元同僚も同じ事を言っていたぞ、死にたくないってな。誰も生き残っちゃいないがな」

「いやだ、しにたく、ない……しにた、く……」

 血泡を吹き目を開けたまま、ユーリはこときれた。

「しんだ……」

「ああ、ここで生きているのは俺の隊の人間とお前だけだ」

 俺は庇護者を失ったようだった。



「全てを見ていたお前をそのまま逃す訳にはいかない」

「し、死にたくない……」

 俺だって死にたくない!何とか助かる道はないのか?!

「そうだな……我が軍でもゴミ処理はいる。こいつらを纏めて処理できるなら、我が軍で働かせてやる」

「こいつ、ら」

 ここにいた騎士達全てと言う事だろう。ついさっきまで笑い、冗談を言い……ついでに抱かれていた人達。

「出来ます……全部この部屋に投げ込んでくれれば……」

「……おい、やれ」

「はっ」

 大男の後ろには部下らしき人がいて、ユーリを筆頭に全ての死体を運んで来て投げ入れた。

「団長……副団長……」

 俺を最初に美人だと呼んだ人も、食事を届けてくれた人も全員いた。本当に全員死んだんだなあ。

「それをどうするんだ?」

「大量ですから、時間をかけて解体して行きます」

 切れ味の悪くなってしまった肉切り包丁を取り出すと、大男ですら顔を顰めた。

「今まで一緒に暮らして来た奴らを切るのに躊躇はないのか?」

「俺、どっか壊れてるらしいです。だから割と平気です。見ますか?解体。かなり不評ですが」

「いや、いい」

 そか、残念。

「ではお前の命は保障しよう。その部屋から出てこい」

「う、後ろからざっくりはやめて下さいよ……」

 部屋に転がっているユーリの死体に目が行く。光を失っても憎しみが消えない虚な目がこっちを睨んでいた。二の舞はやなんだけど。

「お前は嘘つきではない、裏切り者ではない。そして処理屋として能力がある。だから殺さない。俺は使える奴は大事にするタイプの人間だ」

 ……目は真っ直ぐだ、信用出来るかもしれない。この部屋に俺はずっと篭っている訳にはいかない。だって食べる物がないから……。なら、機嫌を損ねる前に従った方が得だろう。

 俺はゆっくりと部屋から出て大男の前に立った。

「言う事を聞きます……殺さないで」

「ああ、約束しよう」

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