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26 傾国の美女?

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「成程、地獄街の死体漁りね」

「隊長、どうするんでさ?傾国の美女ですぜ?」

「まだ騎士団を一つ傾けただけだろ」

「それより男だろう?」

「穴があればなんでも良いぜ!」

 俺は身を小さくして隅っこに座っている。出来ればこの場に居たくないのだが、目の届かない所には行くなと言われていた。
 だから、黙って小さくなる。今日も国へ引き上げるこの隊と一緒にここまで移動して来た。馬に乗れないと言ったら、大男に抱き上げられて一緒に乗った。初めて馬に乗ったけど、馬って高いし乗り心地は良い物じゃなかったんだと分かった。今は野営で明日も馬に乗り、明後日には国へ着くと言う。
 地図なんて知らない俺は何処へ向かっているかなんてわからなかった。

「尻は振らないのか?」

「振らなくても殺されないならふりませんが……」

「抱かせろ」

「……準備……させてください」

 死にたくない……ただそれだけが頭を占める。


「あ!あ!あ……んんっ!」

「成程な、アレが捨てられてお前になった理由が分かるぜ」

「ひ!」

 あまり心は揺れなかった。誰に抱かれても一緒なんだ。そうと分かればもうどうでもよかった。

「傾国ね、あり得るかもしれん」

「どうするんでさあ?隊長。ウチに置いておくなら、使ってみてぇんすけど?」

 俺はとにかく死にたくない。だから大人しく言う事を聞くつもりだ。大人しくしていれば、殴られもしないし食べる物ももらえる。

「上へ納品しよう。こいつと関わるとロクな事がない気がする」

「……そおっすね」

 街についた俺はそのまま大きな貴族の屋敷に連れて行かれた。

「ただいま戻りました。ドルドラン伯爵」

「おお!マドルグ隊長!首尾は上々だと先に報告を受けているよ。素晴らしい!」

「向こうに汚い裏切り者がいただけですよ」

 そして俺はぐいっと前に出された。

「コレが原因です。元々は地獄街の死体漁りだほうですが、災いを呼びそうです。この顔と良い、体と良い……不思議な能力もあります」

「……これは、確かに不味いな」

 何が不味いんだろう……俺には分からないけれど、ジロジロ見られて俯いて小さくなるしかない。

「伯爵、この書類を読んでくれ。壊滅させた騎士団にあった調査票だ」

「どれ……」

 何枚かの紙束。マークス隊長達は何を書き残したんだろう。聞き忘れた俺には分からないが、伯爵はどんどん険しい顔になっていく。

「分かった、預かろう……しかしコレは不味いな……お前、名前は?」

 2人に視線を向けられた。

「お、俺はナナです」

 俺はドルドラン伯爵の屋敷の一室に閉じ込められた。



 
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