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11 美人なんていませんよね

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「わ!ロベル副団長!どこからそんな美人連れて来たんですか?彼女ッスか!」

 向かい側から歩いて来た騎士が副団長に声をかけた。え、美人!?どこどこ!?キョロキョロしてもこの廊下に美人はいない……嘘か、残念だ。

「……セディ、君は今日食事当番じゃなかったかね?」

「あっ!そうでした!すいませーん!」

 騎士は走って行ったけれど、副団長はとても渋い顔をしている。

「おい、早く戻るぞ!」

「引っ張らないでください~転ぶ~~~!」

 副団長は俺の足の鎖を軽く引っ張る。犬の散歩か?でもしゃあない……文句を言える立場じゃないや。


「副団長……良いご趣味で」「まだ任務中なのにそれはどうかと……戻ってからにしてくださいよ」「羨ましいなー!」「かしてくださいよ!あっ冗談ッス!」

 今日に限って色々な人とすれ違うけれど、みんな不思議な挨拶をしていた。騎士ってよくわかんねえや。そしてついに団長のマーカスに出くわす。

「ロベル副団長、君は軍の風紀をなんだと思っているんだ?」

「……死体漁りですよ、団長」

「ん?あのゴミ拾いがどうした」

 ぐいっと鎖を引くもんで、俺は前によろめく。転ぶ前に俺は団長さんの前に突き出される。

「こいつ、死体漁りです。洗ったらこうなりました」

「……ロベル、何を言ってるんだ?あの死体漁りはもっと薄汚れて汚かったぞ」

「だから、洗ったんです!あまりに汚くて臭かったので!そしたらこうなったんです!私の恋人でも何でもないです!こいつは正真正銘地獄街から拾ってきた死体漁りです!」

 ん?なんだなんだ……?俺は死体漁りだけど……ついでに地獄街から連れて来られたけど……。

「……随分と……化けたな。お前本当にあの死体漁りか?」

「そう……ですけど……」

「……色が白いな」

「あそこは日が差さないです」

「きれいな金髪だ」

「そうでしたっけ?元の色なんて覚えてませんけど……」

「目は……紫……?青……副団長、どう思う?」

「ナナ、お前どうしてあそこにいたんだ?」

 副団長さんよ、団長に答えたらどうなんだい……と、思ったけれどまあお答えするしかないよなあ。

「母親に捨てられましたよ。他の男と結婚するから俺は邪魔だって……」

 そう、俺が俺として覚醒する前の事だ。俺は自分の母親にこの地獄に突き落とされたんだ。ぐらりと気分が悪くなる……思い出したくもないと体の方が否定しているのが分かった。


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