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22 久しぶりの対面

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「君が……ルドガー?本当にそっくりだな」
「ええと……勇者、ですか?」
「ああ、オーリという。勇者オーリだ」

 玄関で待ち受けた勇者はとても優しい口調だった。

「そっくりではないと思いますよ。私はそんなに可愛い顔立ちでもないし、いたって普通の……吸血鬼です」
「いや、髪の色も、目の色も、背格好も……そっくりだよ。自分の顔をみたことない?」
「……鏡に映らないので見たことないです……」
「そういえばそうか」

 勇者オーリはどうやら私を斬りに来たわけではなさそうだった。戦闘が始まらないのを確認して、こうちゃんが戻って来てお茶を入れてくれた。話がしたいと言われたので私は応接室にオーリを案内する。

「ああ、ありがとう。君がコウモリか」
「え……あ、はい。ルドガーさまの使い魔のコウモリです」
「あと猫がいるんだっけ」
「……オーリ、一体どうしてそれを?」

 ソファを進めるとオーリは腰を下ろし、武器を置く。本当に私を滅しに来たわけではないようで、少しだけ警戒を緩めた。するとオーリは自分の服の襟元に手を突っ込んでごそごそと探ったあげく、なにかを取り出した。

「コイツだよ。分かるだろう?」

 かなり大きめの首輪のついたコウモリが出てきた。色はちょっと赤みがかった茶色の、目が緑のコウモリは……!

「エ、エセル!?エセルバードじゃないか!」
「キチチ……当たりだよ、兄さん。チチチ……」
「なんて姿に……」

 首輪をしっかりと嵌められたコウモリのエセル。それを見ているオーリ。一体何がどうしたというんだろう、私にはさっぱりわからない。

「だいぶ前になるんだが、このエセルが私に突っかかってきてね。ルドガー、君と会って分かったよ。私達はよく似ている
……だからエセルは気になって私に突っかかって来たんだろうね、舐められたものだよ」
「いやだってさあ……まさかあんなに勇者が強いなんて思わなかったんだよお~びっくりだよ、ボクも」

 キチチ、と鳴きながらエセルこうもりはぱたぱたと飛んで、オーリの膝の上にぺたんと止まった。あれ?

「人の姿で来ても、エセルは吸血鬼……しかも自ら成り上がった真祖だろう?野放しにしておけないと思って……思わず捕まえてしまったんだ」
「顔がルドガーと一緒だから油断したんだぁ」

 と、言う割にエセルはオーリの膝の上から離れなし、オーリも指先でエセルの頭を撫でたりしている。というかここに来るまでに服の中にいれて来たよね?え、ええと……。

「それでこんな吸血鬼を野放しにできないから、私の使い魔として隷属させたんだけど」
「このエセルバード様が、オーリのいうことを全部聞かないといけない奴隷になったんだぞ、信じられる?」

 ……ふうん……抵抗したのかな……?してないんじゃないの……エセル。撫でられて嬉しそうに鼻をふんふんさせているコウモリをみる。後ろにいたこうちゃんもポカンと口を開けているよ。

「そうしたらエセルはお兄さんのルドガーを小さな土地に縛り付けてるっていうじゃないか」
「うん、ここから出ないで僕が帰るのを待っててね、って言っちゃった」
「取り消させようと思ってね。聞けばルドガーも吸血鬼だけれど、馬鹿みたいに優しい奴だっていうし。来る途中街の人達からルドガーと子供達を虐めないでって囲まれちゃったよ……好かれてるんだね」
「流石兄さんってねえ、兄さん本当に子供産んだの?どうやって?ねえどうやって??」

 ……とりあえず、少し話を整理させてもらいたかった。
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