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21 勇者オーリ
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私は、レオンを好きではない。だって、私が誰かを好きになってはいけない。だってエセルが何をするか分からないから。私は、私は誰かを好きになってはいけないのだ。
「あれぇ?!ルドガー様がりんごの木から出てる!」
「私はルドガーではないよ。私はオーリ……勇者オーリだ」
「え!嘘ぉ!別人なの?!」
「ってか勇者?!勇者がこんな田舎にやって来たー?!」
外の騒がしさが耳に入る。ここは小さな町だから、誰か知らない人が来たらすぐ話題になるけれど、今回は特別のようだ。夜も更け、私が目を覚ます時間なのに、子供達がりんごの木を超えて大声で叫んでいる。
「ルドガーさま、勇者が来た!」
「勇者だよ、ルドガーさま!」
バッとにゃんこちゃんとこうちゃんが立ち上がるけれど、そうか勇者だったんだ。
「にゃんこちゃん、外の子供達にありがとうといって、家に帰るように伝えてくれる?もう夜だから、お父さんとお母さんが心配するよって」
「わ、分かりましたにゃん……ルドガーさま……でも勇者って……」
「大丈夫、かなり遠くから強い気配がしてたから気が付いてた。でも勇者だったんだ」
勇者は選ばれた人、魔を払い滅する人間の味方。魔物や化け物を退治する人類の希望……私は、化け物や魔物だろう、そうか……勇者が来たか。
「ルドガーさま、迎え撃ちますか」
「駄目だよ、こうちゃんじゃ勝てない。それにこうちゃんとにゃんこちゃんがいなくなったら子供達のお世話を誰に頼んだらいいの?」
「そ、それは……」
レオンじゃ駄目だ。レオンじゃ一番下のリーシェにも勝てない。上のルーシェとルーシュは分別がついて来たけれど、下のリーシュ、リーシャ、リーシェは私かにゃんこちゃんかこうちゃんじゃないと手に負えないくらいの強さがもうある。
「私に用事があるんでしょう。まっすぐここに向かっている……いくら大人しくても私は、吸血鬼だからね。勇者としては目障りのはずだ」
「でも!」
「お願いしたらにゃんこちゃんとこうちゃんは見逃してもらえるかもしれない。子供達もね……頼むよ、私は子供達を守りたい」
私の首を差し出しても、守りたいものがある。
「やっと……大事なものが出来たのに、こんなことって……」
「……泣かないで、こうちゃん」
エセルを閉じ込めて300年、それから少し。その少しの間に色々あった……とても素敵で温かい色々が。人間ではなくなった私には勿体ないくらいの温かさだ。もう十分に享受した、これでいい。私は元々死を望んでいた、やっとその願いが叶うんだから、何も恐れることはない……。
「こんなことなら死にたいなあなんて思わなきゃ良かったのにね」
まだ小さい私達の子供達。重い運命を背負わせてしまった子供達の成長を助けて見守っていけたらと思っていたけれど、叶わないようだ。勇者は強いだろう……でも、もし勇者が子供達も斬るというのであれば、私はそれが人類の希望であろうとも、戦うつもりだ。倒せなくてもいい、追い払えれば。もしくは逃げる時間を稼げれば、それで。
「こうちゃん、子供達を連れ出す準備をして。にゃんこちゃんが戻ってきたら二人で抜け穴で待機して……戦闘になったら迷わず行くんだ、良いね」
「わかり……うう、分かりました」
泣きながらこうちゃんが子供達の元へ向かう。全員子供部屋で寝ているから一まとめに扱えるだろう。我の強い子供達もこうちゃんとにゃんこちゃんの真剣さが伝われば、いうことを聞くはず。
「レオン……私は子供達を守るよ。この命に代えて」
レオンはまだ領主の館で仕事をしているはずだ。本気でホークに領主を譲るつもりらしいが、手続きもあるし、ホークに仕事を教え込まないとならないから、まだまだ時間がかかるって言ってた。ごめんね、手間のかかる子供を5人も置いて行ってしまう……ごめん。
なんとか、子供達と皆を守らなくちゃ。
「あれぇ?!ルドガー様がりんごの木から出てる!」
「私はルドガーではないよ。私はオーリ……勇者オーリだ」
「え!嘘ぉ!別人なの?!」
「ってか勇者?!勇者がこんな田舎にやって来たー?!」
外の騒がしさが耳に入る。ここは小さな町だから、誰か知らない人が来たらすぐ話題になるけれど、今回は特別のようだ。夜も更け、私が目を覚ます時間なのに、子供達がりんごの木を超えて大声で叫んでいる。
「ルドガーさま、勇者が来た!」
「勇者だよ、ルドガーさま!」
バッとにゃんこちゃんとこうちゃんが立ち上がるけれど、そうか勇者だったんだ。
「にゃんこちゃん、外の子供達にありがとうといって、家に帰るように伝えてくれる?もう夜だから、お父さんとお母さんが心配するよって」
「わ、分かりましたにゃん……ルドガーさま……でも勇者って……」
「大丈夫、かなり遠くから強い気配がしてたから気が付いてた。でも勇者だったんだ」
勇者は選ばれた人、魔を払い滅する人間の味方。魔物や化け物を退治する人類の希望……私は、化け物や魔物だろう、そうか……勇者が来たか。
「ルドガーさま、迎え撃ちますか」
「駄目だよ、こうちゃんじゃ勝てない。それにこうちゃんとにゃんこちゃんがいなくなったら子供達のお世話を誰に頼んだらいいの?」
「そ、それは……」
レオンじゃ駄目だ。レオンじゃ一番下のリーシェにも勝てない。上のルーシェとルーシュは分別がついて来たけれど、下のリーシュ、リーシャ、リーシェは私かにゃんこちゃんかこうちゃんじゃないと手に負えないくらいの強さがもうある。
「私に用事があるんでしょう。まっすぐここに向かっている……いくら大人しくても私は、吸血鬼だからね。勇者としては目障りのはずだ」
「でも!」
「お願いしたらにゃんこちゃんとこうちゃんは見逃してもらえるかもしれない。子供達もね……頼むよ、私は子供達を守りたい」
私の首を差し出しても、守りたいものがある。
「やっと……大事なものが出来たのに、こんなことって……」
「……泣かないで、こうちゃん」
エセルを閉じ込めて300年、それから少し。その少しの間に色々あった……とても素敵で温かい色々が。人間ではなくなった私には勿体ないくらいの温かさだ。もう十分に享受した、これでいい。私は元々死を望んでいた、やっとその願いが叶うんだから、何も恐れることはない……。
「こんなことなら死にたいなあなんて思わなきゃ良かったのにね」
まだ小さい私達の子供達。重い運命を背負わせてしまった子供達の成長を助けて見守っていけたらと思っていたけれど、叶わないようだ。勇者は強いだろう……でも、もし勇者が子供達も斬るというのであれば、私はそれが人類の希望であろうとも、戦うつもりだ。倒せなくてもいい、追い払えれば。もしくは逃げる時間を稼げれば、それで。
「こうちゃん、子供達を連れ出す準備をして。にゃんこちゃんが戻ってきたら二人で抜け穴で待機して……戦闘になったら迷わず行くんだ、良いね」
「わかり……うう、分かりました」
泣きながらこうちゃんが子供達の元へ向かう。全員子供部屋で寝ているから一まとめに扱えるだろう。我の強い子供達もこうちゃんとにゃんこちゃんの真剣さが伝われば、いうことを聞くはず。
「レオン……私は子供達を守るよ。この命に代えて」
レオンはまだ領主の館で仕事をしているはずだ。本気でホークに領主を譲るつもりらしいが、手続きもあるし、ホークに仕事を教え込まないとならないから、まだまだ時間がかかるって言ってた。ごめんね、手間のかかる子供を5人も置いて行ってしまう……ごめん。
なんとか、子供達と皆を守らなくちゃ。
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