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15 確かにその通りです

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 色んな罠みたいな人達を掻い潜り、アンセルは無事最終学年に到達した。一学年上のランディ先輩や王太子オレルアン殿下が卒業だ。

「最後のパーティくらい来てくれよ」

「私達は最後ではないので、先輩達の同級の人達と楽しんでください」

 そんな危ないパーティになんて出る訳がない!弱味を握られている訳じゃないし、卒業パーティはやっぱり卒業生で楽しむ物だろうしね!

 アンセルと私ユールは生徒会のような執行部会に誘われたけれど、アンセルは辞退した。だから私も勿論辞退して、のんびりとした最後の学生を過ごすことにした。のんびりといっても卒業と同時に領地経営の実践や社交界に本格参入となるから本当にのんびりなんてしていられないのだけれども。
 新しく入ってくる一つ下の学生達も結局は後輩で見知った顔も多い。有力だったり縁故だったりする子息達との顔合わせは済んでいるからまあ楽なものだ。


「……うう、吐きそう」

「ダルタン、流石にもう無理だと思う」

 アンセルが気づかわし気に背中をさすってやるけれど、私はため息をつくしかない。

「時期を考えなよ……まだ学生なんだよ、ダルタンは」

 本当にダルタンもグリード先生も実験馬鹿だから……時期も何も考えずに試したらしいんだよね。自分達の理論と研究の成果の男性妊娠薬を。そしたら……天才って怖いよね、ダルタンのお腹はもう隠しきれないほど膨らんじゃって、吐きそう、吐きそうって……悪阻だよね、レモンばっかり齧ってる。
 太ったっていう言い訳ももう無理なくらい。お腹だけがポンと大きくなってきちゃってるから……ダルタンは近々休学しないと駄目だろう。もしかしたらそのまま退学かもしれないし、グリード先生は辞職かクビか……。

「ある意味生徒に手を出して妊娠させた教師だもんなぁ」

「言葉に嘘はないね」

「でもぉ……」

 まったく「でも」じゃないよ?ダルタン。

「届、書きなよ」

「……うん……」

 ダルタンとグリード先生は二人の両親とも話し合って、アンセルの王都のフェルム家でお世話になることになった。製薬の研究室を拡大、屋敷の離れを研究所兼2人の愛の巣にする事に。何せ、アンセルのお父さんの公爵がダルタンとグリード先生に最大限の支援を約束してるからね。

「二人の研究がなければ私はあのままベッドの上で寝たきりだっただろう」

 フェルム公爵は痛みと戦い、相当な努力の末に、とうとう自力で歩けるようになった。勿論、杖は必要だし、ゆっくりだけれど、脊椎を損傷したであろう成人男性が歩けるようになったんだよ?!ダルタンとグリード先生の研究は本当にすごいと思う。そしてその技術は今、少しづつ実験をする人々を増やしていて数年後には治療法として確立するかもしれない。
 戦いで腱を切られて腕が動かなくなったり足が動かなくなったりした人なんかを募って今の所かなりの確率で良い方向へ進んでいる。なんでそっち方面だけ特化しなかったのかなあ……?

「へへ……でもねえ、先生とボクの子供だよ」

「絶対実験好きの薬好きな天才が産まれるね」

 ダルタン、幸せそうなんだよねえ。「俺」の作ったゲームにこんな事はなかったけれど、ニコニコ笑うダルタンを見ていたらこれで良かったのかもしれないって思ってしまう。暗い顔でオドオドしながらランディ先輩の後ろをついて歩くダルタンより絶対良かったよね?ゲームのダルタンの最後は禁忌の薬物を製造した罪で斬首だった。


「は、はは……やっと、やっと楽になれる……」

 それがゲームのダルタンの最後の言葉で、泣きながら首が転がるシルエットのスチルを挟んだ気がするな。

「ディル。一緒に行こう」

 今後について決めた翌日、教室にグリード先生がやって来て、ダルタンの手を取った。

「アンセル君、お世話になるよ」

「勿論ですよ、先生。うちの馬車が門の所で待ってますからそのまま乗って帰って下さい」

「ありがとう」

 ゆっくりダルタンを立たせて、二人で学園長室へ向かっていく。辞表と退学届を出しに行く二人なのにとても楽しそうで幸せそうなのが不思議だ。きっと二人の届けは受理されて、そのまま学園には戻ってこないだろう。

「あれで良かったんだよね、アンセル」

「そうだよね……。私が頼んだから早く実験しちゃったんだよねえ、ダルタン。私が早くユールに私の子供を産んで貰いたくて……」

「……アンセル何を言ってるんだい……」

 はあ、アンセルは別の国にいる婚約者と結婚するんだろうに。私じゃなくてその女性に跡継ぎを産んで貰いなさいよ。

 

 

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