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119 は?!まだ敵地ですか?!

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「げ、限界……」

 かくん、と崩れ落ちる寸前でラムが抱き上げてくれたので、そのまま退場した。

「きゃーーーっ!」

 悲鳴にしてはやけに黄色っぽい声が上がったような気がしたがもうどうでもいい。その後の司会者の声や売り込みをかけるレーツィアの声を遠くで聞きながら控室へ戻ってきた。い、生き残ったぞ……。

 暫くぐったりしているとレーツィアがスキップで戻ってきたからきっとガッチリ行ったんだろうな。

「ありがと~!完璧だったわ。やっぱり似合うわねえ!さ、着替えて着替えて」

「もうドレスはごめんだよ……」

 よたよたと着替えの部屋に入って行く。中にはうちのメイド達がたくさん待ち構えていて、ちょっとびっくりした。

「お一人じゃ脱げませんでしょ?」

 そういやあそうだ。このドレス、背中が編み上げになっていて俺じゃどう頑張っても届かないんだよ。

「あーうん、頼む~」

 なあんて軽く言ったけれど、実はこの場にやっぱり俺の味方は一人もいなかったんだよ。

「や、やめろおおおっぐえっ!」

「やだっ!どうして男性なのにここまでコルセットが締め上げれるの??」

「サイズを聞いた時に「あり得ないわあ!」って思ったのに……ホントにこれでぴったりなのね?」

 た、たすけ……助けて……ぇええ!

「男性らしい体型のはずなのに、違うのよね……?」

「色の白さ?ああ~お肌とか艶々ねえ……凄いわ」

 俺はあれよあれよという間に悪趣味な着せ替え人形にされていた。誰だ!こんなドレスを作ったのはあああああっ!


「それはわたくしです。さあこちらへ」

 着替えの部屋から追い出されるとにこにこと笑顔のソレイユ様が立っていた。ソレイユ様も相変わらず美しい。俺より年上のはずなんだけど年齢を感じさせない透明感がある。レーツィアの化粧品の別ブランド「サンフラワー・ホワイト」のご愛用者らしいぞ。

「ソレイユ……様?」

 今日のソレイユ様は白い割とシンプルな服装をしている。そしておもむろに首から牧師のストールをかけた。え?

「汝、名をラムシェーブル。今隣に立つ、ディエスを生涯愛し裏切らぬことを誓いますか?」

「誓います」

 ちょ、ちょっと!?ソレイユ様何言ってるの!?そしてラムも何返事しちゃってんのさ!俺が怒涛のツッコミを入れる前にセイリオスとクロードがいてにやりと笑った。

「ふ、やっとあの時の復讐の舞台を整えましたよ」

「逃がしませんよ?ディエス様」

 な、なんだと!?敵、敵なのか!?ここには敵しかいないのか!?四面楚歌なのかあああああ!辺りを見ると敵ばかりだった。

「ふふ、綺麗よ?ディエス。その特注ウエディングドレス、良く似合ってるわ」

 したり顔のレーツィア。

「いつまで待ってもディエス様は一人になりませんからね、私も流石に諦めがつきましたよ」

 ふう、とため息交じりのアレッシュ様。

「黒もお似合いですよ、ご主人様」

 ニコニコと笑顔のニコラス。

 俺は真っ黒なウェディングドレスを着せられてラムの隣に立っていた。いやいやいやいや、まてまてまてまて。

「汝、名をディエス。ラムシェーブルを生涯愛し、裏切らぬことを誓いますか?」

 つらっと粛々と進めようとしないでください!ソレイユ様ッ!!

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