【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません！

120 早くして？

「ちょ、待て！どういう……」

　俺は被せられていたヴェールを引っ張り上げる。良く見えないのはよろしくない！

「どうもこうも。早く誓いなさいよ」

　レーツィアに圧をかけられる。

「ディエス、早くしてくれないかしら？」

　ソレイユ様まで！？

「だ、大体ラムの正妃はソレイユ様でしょう！？」

「それはそれ、これはこれよ？」

　どういう事ッ！？

「ディエス様、指輪も用意してあります。私とクロードの小遣いで作って参りました」

「我々の時も用意してくださったでしょう？そのお返しです」

　そんなお返ししなくていいし、お返しなんて要らないよ！？

「まあ、諦めてくださいよ、ディエス様」

　アレッシュ様まで！？そして隣のラムまで

「嫌なのか？」

　孤立無援だった！

「だ、大体なんだよ、このドレス！真っ黒じゃねえか！」

「あら、だってもう「貴方色に染まってる」んだからそれでいいじゃない？」

　レーツィアが上手い事言ってきた……畜生！確かに黒はラムの髪の色だから違うとも言い切れない。

「白もいいけど、ディエスは黒が似合うわよ」

「う、うぐう……」

「逃げ場などないのですから、さっさと誓ってくださいね、ディエス様」

「そうですよ、我々だって絶対に逃がしてもらえなかったわけですし？」

　長年連れ添ったセイリオスとクロードは自分達にされたことをまるっと返してくるし！覚えてろお前らの子供の結婚式は俺が暴れてやるっ！

「うう……」

　一縷の望みをかけてニコラスを見るが、人の良さそうな顔でニコニコ笑っている。笑っているのに何か鉄壁のようなモノを感じて「ああ、これは駄目だ」と悟ってしまった。きっとこの顔で各国の要人も追いかえしているんだろう。

「ううーー！」

「ディエス、早くして？覚えて来た祝詞を忘れてしまうわ？」

　そ、そこまであの時の再現なのかーー！右を見ても左を見ても逃げ場はない。ついでに上を見上げたら天井板が少し開いていてリゼロとリゼロの所に再就職したメイドちゃん達が覗いていた。そんなとこにまでいるの！？

「ち、誓えばいいんだろ、誓えばーーーっ！」

「では、誓いの口づけを」

「ピギャーーーー！！」

　流石に勘弁してもらったが、ラムが残念そうな顔をしていたのは絶対忘れない！調子に乗り過ぎだ！！

「サムシングフォー、４個じゃ足りなかったから何か色々盛っておいたわ」

　後で届けるわね、とレーツィアが言っていたけれどサムシングフォーじゃなくてサムシングフォーティ何か４０個のモノになってそうだとか……一体誰がそんなに。

「会場に残っていたご婦人方がちょっと」

「ひいいいっ！もうやだーーー！」

　見られていたらしい！恥ずかしすぎるだろうっ！流石にそれ以上は引き留められず、結局泣きながら俺は家に逃げ帰った。