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42 酒は呑んでも飲まれるな
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「だからぁ~~ちげーんだよ、やる気だよ、やる気ぃー!クソ上司は部下のやる気を奪うのぉ~~」
「そうだな」
価格は知らんが、かなり値がはるワインの瓶が10本以上転がっている。ほぼ飲んだのはディエスだ。
「ディエス」
椅子から転げ落ちかけているディエスに手を差し伸べれば「ん」と手を出すが完全に酔っ払って力が入らないようだ。
「俺はぁーディエスじゃあないぃ~和志だぁ~たかな、かずし!聞いてるぅ?ラムー!」
「カズシ、なのかディエス」
「そう!当たりぃー!あんのクソ部長!なぁにが「二つ案件入れといたから、やっとけ」だよ!入れる前から破綻して、新人全員逃げたじゃねーか!馬鹿やろー」
完全に酔っている、しかも面倒くさい方向に酔っ払っている。しかし、くにゃりと力なく寄りかかってくる様子はとても心地よい。
「お前はディエスではないのか?」
「ディエスだよぉ?でも中身は田中和志だ。最初から言ってるだろ、中身が変わったって!中身のディエスは別の世界に行ったんだってぇー」
「……本当、なのか?」
「嘘ついてどーすんだよ!でもディエスは死んじゃう訳に行かないから、日本で死んじゃった俺が代わりに入ってディエスとして生きるんだってぇ~!スローライフさせてくれるって言ったから良いよーって言ったのにぃ」
酔っ払いの戯言、今のディエスの話を一笑に付して良い物なのか?荒唐無稽ながら、内容は一貫している。
「そしたらさぁーなんか帝国なんて超都会に来ちゃった上に、側妃?俺、女じゃないのに、旦那が出来てんだよー何でだよー」
すろーらいふとは田舎暮らしの事らしいから、確かに帝国の中心にいるのはカズシの本意ではないのだろう。
「しかも、なんで毎晩野郎とエッチしてんだよー!俺、男よー?男と寝る系じゃなかったよー!」
カズシは私に抱きつきながらそんな不平不満を述べた。確かにカズシに不満があるのは理解出来る。
「そうか……私の事は嫌いか?」
しかし意外なセリフがカズシの口から漏れた。
「……そんなに、嫌いじゃない……」
「何故?」
お前を無理矢理都会に連れてきて側妃に据えた私だぞ?
「日中は、変な事言わない。理に適ってる、納得出来る。俺の話、ちゃんと聞いてくれる。ちょっとしつこいけど、まあ許せる」
「……そうか」
「……夜は、ちょっと困る……俺、そう言うんじゃなかったし」
「カズシは女性としか寝てないのか」
「……誰とも、した事ない……だって仕事忙しくて、誰かと付き合うとか、全然そんな暇無かった。でも日本で俺は男性より女性だって思ってて」
酔ったままの金色の目が、自信なさげに右へ左へと泳ぎ回る。そうか、お前はその辺りにわだかまりを持っていたか。
「良いではないか。国が違えば常識も違う。お前のいた国と帝国は同じではないのだから」
「で、でも……出る所に、入れるのは、やっぱりなんか違わねぇ……?」
「出る専用だと誰が決めた?神か?そんな事ないだろう?現に出来るのだ。できるように作られたんだから、何の問題もない」
パチパチと瞬いてこちらを見ている。
「……えっと、つまり?尻の穴はエロい事するのにも使えるように最初からなってた?俺が変な訳じゃない?」
「そうだな。古い帝国の歴史書にも何名も男の側妃はいる。間違いなくその頃からなんの問題もなく」
そっかーー。なんだか吹っ切れたような良い笑顔で笑った。
「そっか、俺、変じゃなかったかー!男なのに男に突っ込まれて挙句の果てになんか気持ちよくなって……最近じゃ割と癖になりかけてる気がしたけど、俺、変じゃなかったんだー」
「そうだな、普通の事だ」
「普通かー普通なら良いか!俺、ラムの顔好きだしな。お前、俺の好きな顔してる!髪が黒いとこも見慣れてる感じがして良い」
手を伸ばして私の髪を触ってくる。そうか、お前は私の顔が好きか。
「顔以外は嫌いなのか?」
「んー」
回らぬはずの頭を懸命に働かせているのか答えはすぐには出なかったが
「嫌い、な所はあんまりないかなぁ仕事も出来るし、話も聞いてくれるしー。まあ、夜も「普通」なんだろ……?」
「ああ、「普通」だぞ?」
「なら、まあ……嫌いじゃ、ない……割と好きだ」
「そうか、ならば重畳」
「そうだな」
価格は知らんが、かなり値がはるワインの瓶が10本以上転がっている。ほぼ飲んだのはディエスだ。
「ディエス」
椅子から転げ落ちかけているディエスに手を差し伸べれば「ん」と手を出すが完全に酔っ払って力が入らないようだ。
「俺はぁーディエスじゃあないぃ~和志だぁ~たかな、かずし!聞いてるぅ?ラムー!」
「カズシ、なのかディエス」
「そう!当たりぃー!あんのクソ部長!なぁにが「二つ案件入れといたから、やっとけ」だよ!入れる前から破綻して、新人全員逃げたじゃねーか!馬鹿やろー」
完全に酔っている、しかも面倒くさい方向に酔っ払っている。しかし、くにゃりと力なく寄りかかってくる様子はとても心地よい。
「お前はディエスではないのか?」
「ディエスだよぉ?でも中身は田中和志だ。最初から言ってるだろ、中身が変わったって!中身のディエスは別の世界に行ったんだってぇー」
「……本当、なのか?」
「嘘ついてどーすんだよ!でもディエスは死んじゃう訳に行かないから、日本で死んじゃった俺が代わりに入ってディエスとして生きるんだってぇ~!スローライフさせてくれるって言ったから良いよーって言ったのにぃ」
酔っ払いの戯言、今のディエスの話を一笑に付して良い物なのか?荒唐無稽ながら、内容は一貫している。
「そしたらさぁーなんか帝国なんて超都会に来ちゃった上に、側妃?俺、女じゃないのに、旦那が出来てんだよー何でだよー」
すろーらいふとは田舎暮らしの事らしいから、確かに帝国の中心にいるのはカズシの本意ではないのだろう。
「しかも、なんで毎晩野郎とエッチしてんだよー!俺、男よー?男と寝る系じゃなかったよー!」
カズシは私に抱きつきながらそんな不平不満を述べた。確かにカズシに不満があるのは理解出来る。
「そうか……私の事は嫌いか?」
しかし意外なセリフがカズシの口から漏れた。
「……そんなに、嫌いじゃない……」
「何故?」
お前を無理矢理都会に連れてきて側妃に据えた私だぞ?
「日中は、変な事言わない。理に適ってる、納得出来る。俺の話、ちゃんと聞いてくれる。ちょっとしつこいけど、まあ許せる」
「……そうか」
「……夜は、ちょっと困る……俺、そう言うんじゃなかったし」
「カズシは女性としか寝てないのか」
「……誰とも、した事ない……だって仕事忙しくて、誰かと付き合うとか、全然そんな暇無かった。でも日本で俺は男性より女性だって思ってて」
酔ったままの金色の目が、自信なさげに右へ左へと泳ぎ回る。そうか、お前はその辺りにわだかまりを持っていたか。
「良いではないか。国が違えば常識も違う。お前のいた国と帝国は同じではないのだから」
「で、でも……出る所に、入れるのは、やっぱりなんか違わねぇ……?」
「出る専用だと誰が決めた?神か?そんな事ないだろう?現に出来るのだ。できるように作られたんだから、何の問題もない」
パチパチと瞬いてこちらを見ている。
「……えっと、つまり?尻の穴はエロい事するのにも使えるように最初からなってた?俺が変な訳じゃない?」
「そうだな。古い帝国の歴史書にも何名も男の側妃はいる。間違いなくその頃からなんの問題もなく」
そっかーー。なんだか吹っ切れたような良い笑顔で笑った。
「そっか、俺、変じゃなかったかー!男なのに男に突っ込まれて挙句の果てになんか気持ちよくなって……最近じゃ割と癖になりかけてる気がしたけど、俺、変じゃなかったんだー」
「そうだな、普通の事だ」
「普通かー普通なら良いか!俺、ラムの顔好きだしな。お前、俺の好きな顔してる!髪が黒いとこも見慣れてる感じがして良い」
手を伸ばして私の髪を触ってくる。そうか、お前は私の顔が好きか。
「顔以外は嫌いなのか?」
「んー」
回らぬはずの頭を懸命に働かせているのか答えはすぐには出なかったが
「嫌い、な所はあんまりないかなぁ仕事も出来るし、話も聞いてくれるしー。まあ、夜も「普通」なんだろ……?」
「ああ、「普通」だぞ?」
「なら、まあ……嫌いじゃ、ない……割と好きだ」
「そうか、ならば重畳」
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