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13.記憶の欠片と僕の決意

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 お昼どきではあったけれど、客の回転が速いのか、それほど待たずに入店することができた。二名掛けのテーブルに向かい合って座り、ランチメニューを広げる。店一押しのメニューは、さっき梨花さんも言っていた海鮮丼だろう。いろんなネタが乗っていて、彩りも豊かだ。旬の魚も数種類乗せてくれるらしい。

「梨花さんは海鮮丼?」
「そのつもりだったんだけど……いくら食べたくなっちゃって迷い中。工藤君は決まった?」
「うん。海鮮丼にしようかな。ゆっくり悩んでいいよ」
「ごめんね。わたし、お店に来ると優柔不断になっちゃって。買い物はすぐ決められるんだけどなあ」

 ふたりで横から見ていたメニューを梨花さんのほうへ向けると、梨花さんは何度も写真を見比べながらうんうんと悩んでいた。

「今いくら食べたいならそっちにすれば? この店近いんだし、また来ればいいよ。もし、食べたい魚があるなら、僕のあげてもいいし」

 ゆっくり悩んでと言ったのに、つい口を出してしまって、しまったなと思う。ばっと顔を上げた梨花さんは、大きな目をさらに大きく見開いた。

「ほんと? いいの? じゃあそうする」

 梨花さんはいくらと鮭の親子丼を注文した。いくら丼の次にいくらの量が多いやつだ。よほど食べたかったのだろうと思うと、可愛らしくて少し笑えた。いつもしっかりしていて、お姉さんみたいに感じていたけれど、ちゃんと僕と同じ年頃の女の子なんだと思った。


「工藤君、今日この後まだ時間ある?」
「平気だよ。何も予定ないから」
「じゃあさ、映画見ていかない? 気になってたやつが今日から上映が始まるの。今日ならカップル割で安くなるらしいから」

 カップル割という言葉が気になりつつも、安くなるのであれば問題ないかと頷く。ちょうどそこに海鮮丼と親子丼が運ばれてきて、会話は中断された。きらきらと輝くいくらに、梨花さんも負けないくらい瞳を輝かせていた。取り皿をもらって、いくらと鮭を少し分けてもらう。僕のほうからも二切ずつ乗っていた鮪と鰤をよそって梨花さんに手渡した。

 食べながら梨花さんの大学の話を聞く。いわゆるサークルというものには所属していないらしい。新入生のときに受けた熱烈すぎる勧誘に引いてしまって、どこにも入りたくなくなってしまったそうだ。田辺さんのために、恋人がいるのか聞いてみようかと思ったけれど、こういう話はどう切り出していいのかわからず、聞くことができなかった。
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