魔力がなくなって冷遇された聖女は、助けた子供に連れられて

朝山みどり

文字の大きさ
5 / 19

05 神殿

しおりを挟む
レイモンドはカミーユが言ったように、一応おとなしく過ごしていたが、カミーユの状況を把握した。

そしてある日、神殿の執務室に忍び込んだ。そこで一通の書類を書いた。



カミーユが治療室にやって来た。最近は腰痛程度なら治すことができるようになって来ている。

そして、朝、書類を渡された。

「おはよう、カミーユこれが届いてる」

『あら、わたしに従者が付くみたい』と驚いたが誰にも言わなかった。



「カミーユ、あなたの治療はやさしいわ」と患者が言うと

「魔力が少ないから時間がかかって」

「ううん、魔力が温かいのよ。安心できるのよ」

そう言って最後の患者が帰って行くとカミーユはうきうきと家に戻った。


「ただいま、今日もいい匂い」

「お帰りなさい」とレイモンドが腰にしがみついて言った。


「食事の前に話したい事があるの」と改まっていうと、レイモンドはカミーユを見上げた。

「神殿から連絡があって、従者をつけていいんですって。年齢とか関係ないって。レイよかったら従者にならない?一緒に行けば心配ないし、お食事を作ってくれるのは嬉しいけどひとりでお留守番も心配だし」

「僕一緒にいられるのは嬉しいけど、従者とかできるかな?」

「大丈夫よ、近くで遊んでいればいいのよ」

「僕、やりたい。やります」

「うん、それにね、お給料が出るのよ。では食べましょ。おなかがすいたでしょ」


「明日からお留守番しなくていいなんてうれしいな」

「ごめんなさいね、一人残していて」

「僕、ちゃんとお留守番できるから、カミーユは心配しなくていいんだよ。僕が心配だったのカミーユがひとりで神殿に行くこと、心配してたのは僕なの」

少し口を尖らせて言い募るレイモンドをカミーユは優しく見て

「そうだね、レイが従者なら安心。明日から安心で、ずっと一緒だから楽しいね」

「そうだよ。カミーユ」とおおげさにレイが言うとカミーユは頭を撫でた。



翌日、受付で手紙を見せたカミーユとレイモンド。レイモンドだけ研修の為に奥に連れられて行った。

今日は平民の治療はお休みで、貴族のみが来る日だ。毎回、この日オリビアの意地悪は、冴え渡る。


「カミーユ様をお呼びして」とオリビアがわざとらしく「様」をつけてカミーユを呼ぶ。そして申し訳なさそうにこう言った。

「今日は少し埃っぽいですね。風が強いのかしら・・・・埃が舞って皆様に迷惑が掛かっては申し訳ないですわ、玄関で皆様の靴を綺麗にして差し上げて下さいな」

さすがに他の聖女と侍女が息を飲んだ気配がした。カミーユはすぐに

「かしこまりました」と返事をすると玄関に向かったが、

「ひどいわ、カミーユ様。冷たい言い方。そんな言い方だとわたくしが意地悪しているみたい。もしかして婚約破棄はわたくしのせいと思ってらっしゃる?」とオリビアが言うと

「まぁずうずうしい。婚約破棄は枯れた自分のせいでしょ。オリビア様を恨むなんて」とエメが大声で言うと


「オリビア様、そんなつもりはありませんわ。婚約を白紙にした事は気にしておりません。もっと早く白紙にするべきでした。わたくしはずっと婚約者をやめたい。そう思っておりました。

皆様を綺麗にするのはいいことですわ。オリビア様がおっしゃる前にわたくしが言わなければいけませんでしたわ。わたくしこそ気が利かなくて申し訳ありませんでした」

そう言って頭を下げるとカミーユは出て行った。

「カミーユ様はわたくしと仲良くして下さる気持ちはないようですわ。妬まれても仕方ないですものね」

「オリビア様、妬むなんてほんとにいやしいですわ、あんな性根の者を気にかけてお心を痛めることはありませんわ」とエメが言うと、他の聖女も侍女も口をそろえて同意した。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女の力に目覚めた私の、八年越しのただいま

藤 ゆみ子
恋愛
ある日、聖女の力に目覚めたローズは、勇者パーティーの一員として魔王討伐に行くことが決まる。 婚約者のエリオットからお守りにとペンダントを貰い、待っているからと言われるが、出発の前日に婚約を破棄するという書簡が届く。 エリオットへの想いに蓋をして魔王討伐へ行くが、ペンダントには秘密があった。

婚約破棄のお相手は

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。 幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...